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79 モンスターの大群


 あ、ギルドの看板みっけ。

 高っ! てっぺんが見えないくらい高い! 他の建物と同じで金色だから眩しいし、高いし、もっとコンパクトにした方がいいと思うんだけどな。


 中は……あれ、普通だ。どこも金色じゃない。

 外と中が違いすぎて別の建物かと思った。

 内装は置いといて、支部といってもギルドだから賑わっているな。エルバニアにある本部に勝るとも劣らない。パッと見た感じ本部と同じく色々な種族の人が訪れている。


「ねえ、ちょっと様子おかしくない?」


 言われてみれば確かに、賑わっているんだけどみんな忙しそう。本部と比べて人の慌ただしさはここの方が数段上。何かあったと考えるのが普通だよね。何があったのか訊いてみよう。


「あの、すみません」


 入口近くに居る青い肌の男性に声を掛けてみた。

 血色が悪そうな肌。尖った耳。背中に生えた黒い翼。ズボンから出ている細い尻尾。この人、種族は悪魔か。珍しいな。


 ドラゴロアの人型生命体、通称『人間』は6割がヒューマンと獣人だと言われている。エルフとドラゴニュートを合わせれば9割。つまり悪魔とか他の種族の数はかなり少ない。


「何かあったんですか?」


「ああ、最近モンスターが町の傍までよく来るんだが、今日はついに大群が接近してくるらしい。さっき偵察依頼を受けた奴が帰ってきてそう言っていた」


 モンスターの大群がゴールドスに? 大群ってどれくらいの数なんだろう。まあ町の傍までモンスターの大群が来たら住民は怖がるし、町の中まで入って来るモンスターもいるかもしれない。一大事ってやつだ。みんな慌ただしくもなるか。


「とりあえず、みんなで迎え撃って討伐しようって話になったんだ。命の危険があるから討伐隊に参加するかは自由。参加すれば報酬が貰えるらしい。30000ゴラドだったかな」


「「「30000ゴラド!?」」」


 予想外の大金に私達の驚いた声が揃う。

 1人30000ゴラド貰えるなら3人で90000ゴラド。カジノで失った分を取り戻せるどころか約3倍にまで増える。危ないのは分かるけどやった方がいい。


「ああ、1つのパーティーにな」


 なんだ、ちょっとがっかり。

 まあ30000でもカジノに行く前の所持金に近い額だ。

 どっちにしろ討伐隊に参加しない理由がない。


「参加するにはどうすればいいんですか?」


「受付で名前を書くだけだ。参加するのか?」


「はい」


 金欠だから。いや、町を守るためでもあるから。

 何においても人命優先です、はい。

 受付に行って討伐隊参加表に名前を書いておいた。

 数分経ったら受付が終了したので、参加者全員で町の外の荒野へ向かう。


 町の外に出た時にはモンスターの大群がもう見えるくらいに近付いていた。

 ……嘘でしょ、正直舐めてた。大群って本当に言葉通りじゃん。


 視界に入るといってもまだ遠いからモンスターは小さく見えるけど、そう見えるからこそ恐ろしい。1体1体の隙間が殆どない。荒野を飲み込もうとする文字通りの大群が接近してくる。あんなのがそのまま町に入ったらモンスターで埋まっちゃうよ。


 少し怖くなった。私だけじゃない、多くの人に怯えが見える。動揺している。


「狼狽えるな!」


 大きな声が荒野に響き渡る。

 集団の前に男の人が1人出て来た。

 白い軍帽とコートを身に着けている彼の言葉で集団は静かになる。鋭い目で睨まれたからってのもあるかもしれない。あの眼力は怖い。


「私はAランクのフルゼット。町の危機と聞き、この討伐隊に参加した」


 Aランクなんだ。そんな人が居るなら心強いな。


「オレあいつカジノで見かけたぞ。スロットで負けて『クソおおッ!』って叫んでた」

「え、ほんと? 私はルーレットで勝って雄叫び上げるの見たけど」


 ……カジノに行っていようと心強いものは心強い。

 カッコいいイメージが崩れたけど強さは変わらないし。


「想像以上のモンスターの数だが気圧されるな。私達の数は100人以上。持ちドラを合わせれば戦力は倍。どう戦うか考えれば殲滅出来る。モンスター共がもっと近付いてから持ちドラのブレスを一斉に放て。あれだけ密集したモンスターの大群だ、最初は攻撃を躱せない」


 確かに、隙間が殆どない程に密集しているから攻撃を躱せないはずだ。一斉に放たれたブレスをまともに喰らうなら、モンスターの数は一気に減るはず。

 良い作戦だ。討伐隊のみんなも納得した様子を見せている。


「タイミングは私が指示する。ブレスで半分以上は倒せるはずだ」


「そ、その後はどうすれば」


「いつも通りにモンスターと戦えばいい。他の者をカバーしながらな」


 そうだよね、いつも通りにやれば倒せる。私達のチームだって、他のチームだって、今まで多くのモンスターを討伐してきたんだもん。敵の数が多くても何とかなるって。


 みんなの表情から怯えが消えた。やる気が漲っている。

 フルゼットさんを信じたみんなが持ちドラにブレスの準備をさせている。


「――今! 放て!」


 よし来た! お願いクリスタ! クリスタルブレス!

 クリスタの口から大きな水晶がいくつも飛び出す。クリスタだけじゃない。ブラドも、クィルも、他のみんなの持ちドラも一斉にブレスを放つ。


 ブレスはドラゴンの種類によって威力も範囲も属性も全く違う。

 炎や毒霧など実体がないもの。

 酸や水など液体のもの。

 水晶や氷など固体のもの。

 ここに集まった100体以上のドラゴンの全てのブレスがモンスターに向かう様は、ごちゃごちゃして散らかっているけど私にとって絶景だ。


「限界まで吐き続けろ! 少しでも多く敵を倒せ!」


 ブレスは継続して吐くなら精々1分が限度。

 20秒あたりから限界で使えなくなるドラゴンが出てくる。次々とブレスが途切れていって、最後にクリスタが限界を迎えてむせたことで攻撃が全て止んだ。


 肝心のモンスターの大群は……倒れたのが6割ってところかな。

 あんまり状況を分析する時間はない。ブレス総攻撃で大半を倒したのはいいけど、その攻撃の間もモンスターの進撃は止まっていなかった。今はもう私達と100メートルくらいの距離まで接近している。


「さあ次は私達人間の出番だ! 死力を尽くして戦え! 町に1体もモンスターを入れるな! カジノ……町を守れえええ!」


「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


 フルゼットさんの言葉で討伐隊が前に動く。


「……あの人カジノって言ったよね」

「「言った」」


 おっと出遅れた。私達も戦いに参加しないと。

 持ちドラと一緒に前進して私達はそれぞれの武器を構える。

 今回は短剣と魔法メインで戦おう。軽弓はまだ練習が必要だし。


 ……モンスターが来た。あれはえっと、確かゴルゴルマン。

 全身が金メッキのマネキンのような見た目だ。人形でも俊敏な動きをするって本には書いてあったけど、今の私にとってはその俊敏な動きとやらでも遅い。掴み攻撃を躱して懐に入り、短剣で胸を突き刺して撃破出来た。人形みたいなモンスターはコアっていう心臓部分があるから、そこを破壊すれば簡単に倒せる。


 さてお次は、灼熱スネイク。高温の炎を吐く蛇だ。

 8体が束になって襲ってきたけどその方向からなら……。


「クリスタお願い!」

「クルルルウ!」


 吐かれた高温の炎ごと灼熱スネイクをクリスタが前足で潰してくれた。

 おっと休む暇もなく次はモンスターが地面から飛び出して来た。

 キリサキモグラ。サングラスを掛けている爪が長いモグラ。


 鋭い爪攻撃を躱しつつキリサキモグラを蹴っ飛ばすと、さらにクリスタが尻尾で叩き落とす。キリサキモグラのサングラスは割れて、ぐるぐると回したつぶらな目が見えた。ちょっと可愛い。


「この調子でいこう!」


 カオスもタキガワさんも、他のみんなも持ちドラと一緒に戦っている。

 押し寄せるモンスター達と討伐隊のみんなは戦い続け、その激闘は1時間にも及んだ。


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