78 カジノは恐ろしい場所でした
ウォータードラゴンのミズハを買い取るため、私達チーム『のんぷれいやー』は黄金都市ゴールドスにやって来た。
金。金。町のどこを見ても金金金。
民家は金色を基本の色として造られている。露店で売られている食べ物には金箔がかけられている。1番凄いのは町の奥に建つ金ピカの城。あの城に関しては全て金色で眩しい。
うーん、金色の城も家も綺麗だけど、住みたいかと聞かれたら嫌かな。落ち着かなそう。金色は眩しいし、やっぱり家の色は白か茶色が落ち着くな。
「懐かしいなあゴールドス。カジノ好きだからよく来てたんだぜ」
「これから行くんだよね。カジノってどんな場所なの?」
「夢の時間を買える最高の場所さ」
「人間を破滅させる悪夢みたいな場所よ」
カオスとタキガワさんで意見と表情が180度違う。
2人の言葉を合わせると、楽しいけど人間を破滅させていく場所ってところかな。ダメじゃん。一気に行きたくなくなっちゃった。そんな危ない場所が好きなんてカオスも変わってるな。
「おいおいタキガワよお、なんにも分かっちゃいねーぜお前は。カジノってのはコイン交換で貰える景品がレア物ばっかなんだぜ。それにカジノはな、スロット、ポーカー、ルーレット、レース、何をやっても勝つ時最高の気分よお」
「現実舐めるな。どうせ破産するのがオチ。私の友達はギャンブルで金も男も家も失ったんだから。アンタも油断してるとそうなるよ」
「舐めんなよオレの豪運。スロットで7が2回連続で揃ったこともあんだぜ」
ふむ、どれだけ凄いのか全然分からない。
ていうか怖すぎるよカジノ。家も失うとか。
「頼もしいわねー。じゃ、アンタの豪運とやらを見せてもらおっかなー」
おっ、あれがカジノか。CASINOって文字が建物に付いてる。
なんか煌びやかっていうか眩しい建物だな。CASINOの文字は小さな電球で作られているみたいで、毎秒どこかの電球が光っている。金色じゃないけど違った眩しさがある。
「へっ、任せときな。2000000ゴラドなんざすぐに稼いでやるぜ!」
カオスはぺったんこな胸を叩いて得意気に笑う。
――それから数時間後、私はカジノの恐ろしさを理解した。
最初は調子が良かったんだよ。
スロットとルーレットで大量のコインを獲得していた。
あれはきっと、換金したら500000ゴラド以上はいったと思う。
タキガワさんも褒めていたし、私も浮かれていた。
調子に乗った私達は3手に分かれてギャンブルして……負けたから今はコイン0枚。
大金となるはずのコインはあっという間に消えちゃった。
最大の原因はドラゴンレースをやったことだと思う。
7体のドラゴンがレース場を飛び、1着を競い合うのがドラゴンレース。ゴールに1着で付いたドラゴンを当てられれば、倍率にもよるけど賭けた金額の数倍が返ってくる。……はずだったけど1度も当たらず惨敗。カオスとタキガワさんも同じく惨敗。そのせいでコイン0枚になったんだよね。
私達はカジノを出た。もう入れない、お金ないし。
全てのゴラドをコインと交換したから所持金まで0円だし。こうなると分かっていれば私はギャンブルなんてやらなかった。カジノだって、来ることはなかったんだ。
「……どうするわけ? 2000000稼ぐどころか無一文になったけど」
タキガワさんに睨まれたカオスは「うっ」と縮こまる。
何も言えないよそりゃ。自信満々に稼ぐって言ったのに全財産失っちゃったんだから。調子に乗った私とタキガワさんも悪いんだけどさ。
「宿に泊まるお金すらなくなっちゃったわけだけど」
「……ご、ごめん」
目を逸らしたカオスは謝った。
うんうん、謝っただけでも偉いって。
「とりあえず宿代くらいは稼がないとね。ゴールドス周辺にも討伐対象のモンスターはいるはずだし、町にあるギルド支部で依頼を受けようよ」
仕事は何かしらあるはずだ。エルバニアのギルド本部で依頼を見たことあるし、ゴールドス周辺のモンスター討伐依頼があるのは間違いない。
お金がなくなっちゃったのは仕方ない、過ぎたことだ。
今は落ち込むより、今日必要になるお金を稼がないと。ケリオスさんならきっとこう言う。
「バニアちゃんの言う通りね。仕事してお金稼がないと」
「楽して2000000稼ごうとしたのが間違いだったぜ。やっぱり堅実に仕事で稼ぐのが人生の正解ってわけだな」
「何年掛かるやら」
えっと、Cランクの依頼の平均報酬額が2500ゴラドだから……2000000を2500で……頭痛くなってきた。とにかく時間が掛かるのは分かる。それが分かってるからカジノに賭けたわけだしね。
「ま、討伐ならオレに任せな。損させた分は体で返すぜ」
「それ働いて返すって意味よね?」
「それ以外に何があんだよ。ほら行こうぜ」
カオスが走り出したから私達は跡を追う。
ゴールドスの町は慣れているんだっけ。
ギルド支部の場所もバッチリ分かるんだろう。




