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70 チーム活動で気を付けること


 雲を裂き、空を進む。

 青白い体のドラゴン、持ちドラのクリスタに乗って飛ぶのは本当に楽しい。背中に生えている水晶に捕まらなきゃ私は落ちるけど恐怖なんて微塵もない。スリルだなんてことも考えない。

 私はただ、ドラゴンの乗って飛ぶのが好きなだけなんだ。


 仕事のためにスイリュウを目指し、チーム『のんぷれいやー』3人で持ちドラに乗って飛んでいる。たまにタキガワさんが地図を見ながら方向を指示して、私達はそれに従う。


「バニア! スイリュウが見えてきたぞ!」

「本当だ!」


 嬉しそうなカオスが指差す先に見えるのは、山のような形状の町。

 エルバニアともザンカコウとも全然違う造りだ。

 まず目が惹かれるのは町の中心地から伸びる柱、そしてその上にある巨大な皿のような物。今は空に居るから分かるけど、水色の巨大な皿には多くの水が溜まっている。柱はあちこちから水路が伸びている。つまりこれって、貯水している真上の皿から柱に水が流れ、そこからさらに水路を伝い、町全体に水を運んでいるわけか。


 入口となる門の手前で降りてみんなで歩く。

 観光地としても有名な町だから出入りする人が多い。


「……ここが、スイリュウ」


「ここで美女達の水着姿が見られるのかあ」


「プール施設でね。……あれ、でも町の人は水着だ」


 町を歩く人は男女関係なく水着を着ている。観光者だろう人は多くが普通の服装だけど、中には水着姿の人もいるや。なんでプールでも海でもない場所で水着を着ているんだろう。


「そっか、バニアちゃんは初めてだもんね。スイリュウの人達はいつ濡れてもいいように、濡れても構わない服や水着を着ているんだよ」


「濡れてもいいようにって、普通に生活してて濡れることあるの?」


「雨が多い地域なのもあるけど、ミストシャワーが町に多く設置されているの。町の真上に受け皿があるでしょ。あれが満タンに近くなると、自動でミストシャワーの装置が動くらしいよ」


 ミストシャワー……あれか、歩道の脇にシャワーヘッドが設置されている。

 町の上にある受け皿が満タンになったら、あそこからミストが吹き上がるわけか。

 しっかしタキガワさんスイリュウに詳しいな。


「なあタキガワ、あの水路は何の為にあるんだ?」


「プール施設や各家の水道に水を運ぶ為らしいわ。この町は水力発電だし、電力も得られてダブルハッピーってわけ」


 カオスの質問にもタキガワさんは易々と答える。

 説明を聞いた感じ、水を最大限有効活用している町ってところか。


「何でそこまで詳しいんだよ。現地人かお前は」


「ゲームのプレイ中にNPCから話聞いただけだっての。知らないってことはアンタ、RPGで村人から話聞かずにさっさと先進むタイプでしょ」


 ……話に入り辛い。この2人、ぷれいやー同士だからか、ミレイユみたいによく分からない言葉を使うんだよね。

 このままじゃダメダメ。

 チームリーダーとして、会話に入り辛くても2人を導かないと。

 一先ず仕事だよ仕事。


「とりあえず、宿の部屋を取ってから仕事しようか」


「えええ、オレプール行きてえよお。泳いでからじゃなきゃやる気出ねえよお」


「一仕事終わった後で遊んだ方が楽しいじゃん」


 まあこれに関しては性格で差が出ると思う。

 面倒なことを先にやるか後回しにするか。

 食事は好物から食べるか取っておくかみたいなものだね。

 私は仕事が面倒だと思ったことはないけど、プールの方が楽しそうだから仕事を先に済ませたい。つまり私はお楽しみを取っておくタイプってわけだ。


「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だあああ! プール行くうううう!」


 ……えぇ、泣き出しちゃったよ。

 子供かな。いや体型は子供だけども……はっ、それは私にもダメージが来る。

 うむむ、確かに子供体型だけど私は精神がもう大人だもんね。


「こらカオス我儘言うな。バニアちゃんの意見に反対する権利はアンタにない」


 権利はあっていいよ。奴隷じゃないんだから。


「タキガワ耳貸せ」


 涙が止まった。嘘泣きじゃん。


「はあ? 何だってのよ」

「いいから耳近付けろ」


 面倒そうに屈むタキガワさんの耳にカオスが口を近付ける。


「プールに行けばバニアの水着が見られる。バニアのあーんな姿やこーんな姿を見られる。水掛け合ったり泳いだりして至福の時間を過ごせる。お前も仕事やる気マックスになるだろ」


 おーい、聞こえてますよー。

 小声で話してはいるけど耳を澄ませば聞こえるからね。


「なりまふ」


 噛んだ。可愛い。


「ごめんバニアちゃん、やっぱり仕事より先にプール行こっか。面倒なことは後回しにしようよ」


 悪魔の囁きかな?

 さっきまでは反対していなかったのに。

 そんなに私の水着姿が見たいのか。

 はぁ、タキガワさんは私のことになると弱いからなあ。

 カオスもタキガワさんの扱い方を理解したんだな。

 でも2人が仕事前にプール行きたいって言うなら。


「……まあ、2人が行きたいなら行こうか」


 こう言うしかないじゃん。

 チームリーダーの先輩として『薔薇乙女』のマヤさんや他のリーダーに、チーム活動の注意点を聞いたことがある。初めてリーダーになるから不安だったんだよね……今もだけど。


 チーム活動で気を付けなきゃいけないのは意見の食い違い。

 メンバー同士で違う意見が出ると心に不満が溜まる。そして次第に感情の制御が出来なくなり喧嘩が多くなる。ストレスに耐えきれなくなったり、喧嘩したりがチームの解散に繋がる。……って他のリーダーの人は言っていた。


 先輩からのアドバイスは正しいと思う。

 実際、私が折れたからメンバーは「よっしゃー」と喜んでいる。

 メンバー同士が喧嘩なんてしないようにリーダーの私が気を付けないとね。

 私は喧嘩のないストレスフリーなチーム活動を心掛けたい。


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