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プレイヤー邂逅から始めるドラゴンライダー  作者: 彼方
プロローグ プレイヤーとの邂逅
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ケリオス視点 ゴマという男


 ここまでの敵意をはっきり感じ取れることは滅多にない。いや、経験ないからこれが初めてか。まるで刃物を持った殺人鬼が目の前にいるような……死神に鎌をあてがわれているかのような……。


「……ふむ、レベル99のライダーですか」


 風に乗ってそんな呟きが聞こえた。

 俺のレベルとジョブを的確に言い当てている。


 方法はおそらくスキル〈アナライズ〉だろう。使用した対象の情報を盗み見る、聞こえは悪いが優秀なスキル。知らない何かの情報を調べるのは基礎中の基礎だ、何の世界だろうとそれは変わらない。


 ただその〈アナライズ〉は基礎と言えてしまうくらいにメジャーなスキル。基本職でもレベルが5になれば覚えられる。

 つまり俺も〈アナライズ〉が使える。


「スキル〈アナライズ〉」


 黒い翼が生えているドラゴニュートの男の情報を悟られないように調べた。

 このスキルで出るのは純粋な強さだけだがさてどんなもんか。



 【名 前】 ゴマ

 【レベル】 125

 【ジョブ】 アルティメットメイジ

 【熟練度】 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 【生命力】 1280/1280

 【魔法力】 1595/1595

 【攻撃力】 1132

 【守備力】 1200

 【聡明力】 1743

 【抵抗力】 1460

 【行動力】 1140

 【ラック】 1272


 【持ちドラ】 デスタ(デストロイドラゴン)




 は……? 何の冗談だ?

 絶句して言葉が出ない。頭の中が困惑でいっぱいで思考が纏まらない。いやだってありえないだろ。冗談だと思いたいだろ。

 レベル125だぞ。ドラゴロアにレベル100以上は存在していなかったはずなのに、ステータスも軒並み異常だし、意味分かんないよこんなの。


 渇いた笑いが出る。生命力以外のステータスはおよそ俺の3倍だし、いくら基本職と超級職だからって差が酷すぎるって。

 ジョブのアルティメットメイジは超級職。名前の通り魔法戦闘を得意とするメイジ系統。俺のライダーは基本職であり、その上の上級職のさらに上だ。


 魔法の威力に関係する聡明力が1743もあるのは異常すぎるが、レベルを見れば納得だ。まあそのレベルが納得出来ないんだけど。


 装備品も特別な効果はなさそうだし、ほぼ素のステータスであれか……。トップクラスに強い自負はあったんだけどな……。

 この世界はドラゴロアであってもゲームじゃない。完全にシステムに支配されているわけじゃない。レベルの上限もおそらく……ない。


「おやおや、そちらも〈アナライズ〉を使用したようですね」


「さあ、どうだかな」


「隠しても無駄ですよ。あなたは今、私のステータスを見たこれまでの弱者達と同じ顔をしているのですから」


 お見通しか……。そして言葉の端から端まで溢れている自信、俺と同じく最強であると信じている奴ってわけか。


「くふふ、誇ってもいいのですよ? それ程の力を持つ者はそういません。しかしこのステータス……あなた……もしやプレイヤーではありませんか?」


 胸が鷲掴みにでもされたかのような恐怖が襲ってきた。いや、今はそれどころじゃない。このゴマとかいうドラゴニュートはプレイヤーという言葉を知っていた。この世界の住人が知っているとは考えづらいし、おそらくはこの男も……。


「まさか……お前もか」


「ええそうですとも。私の名はゴマ、とあるキャラクターのロールプレイをしている者です。今ではドラゴニュートとドラゴンで構成された組織、解放軍にて力を振るっています」


「解放軍、ね」


 この男は俺の知らないことを色々知っていそうだ。バニアは常識程度のことしか知識を持っていなかったし、この男と話すことで新たな情報を多く入手できそうだな。


「ゴマだったか? 日本に帰る方法を知っていたりしないか? 何か手がかりがあるなら何でもいい、教えてくれないか」


 普段なら敬語を使うところだけど、どうにもこの男に対して使う気になれない。それがなぜかは自分でも分からないが。


 ゴマは「日本に帰る……?」と不思議そうな顔で呟いた。目前にいるバニアは振り返って瞳を潤ませている。ああ、少ししか共に過ごしていないのに、悲しんでくれるなんて本当に良い子なんだな。


「おやおや、どうやら知らないようですねえ。日本に帰る方法など存在しませんよ」


「存在……しない……?」


 何を言っているんだこいつは。

 日本に帰れないなんて、そんなことあっちゃいけないだろう。だいたい何で断言出来るんだ。まだ見つかってないだけかもしれないだろう。


 淡くてもいい。たとえ欠片程度だったとしても希望は捨てたくない。

 諦めたくない。また家族や友達に会える可能性を信じていたい。


「当たり前でしょう。あなた、死んだ記憶がないのですか? よくある転生のような話ですよ。別人でも自分が作った体との繋がりは大きく、魂がそちらへ移る。ほっほっほ、日本に帰ってもあなたの葬式が開かれているでしょうねえ」


 死んだ……のだろうか。

 そんな実感はない。いや、そもそも俺はゲームをしているだけだったんだ。死んでいるなんてありえない……ありえない、が……もし死んでいたとしたら日本に帰って何の意味がある?


 完全に別人の体。友達や家族に会ったとしても理解してもらえないだろう。ゲームの世界に転移していたから戻ってきたなんて、そんなアホらしい言葉を信じてくれるとは思えない。

 ――でも、それでも。


「意味なんてないかもしれないけど、帰りたい。……この世界も捨てがたいけど、やっぱり故郷の空気も吸いたいもんだよ。帰る方法を知らないならいいさ。俺がこれから探し出してみせるから」


 ドラゴロアは仮想世界。

 みんな、現実とは違う何かを求めてダイブする。それは分かりやすいスリルだったり、魔法やドラゴンなどのファンタジーだったり、自分にはない強さだったりだ。俺もそういったものを求めてプレイしていた。


 しかしどちらかを選べと言われたらどうだろうか。

 これから生きていくとして、どっちの世界で生きていたいだろうか。俺は現実世界を選びたい。


 仮想世界も魅力的だし、そちらがいいと言う人間も多いと思う。だけど現実だって悪いもんじゃない。大切な人達がいるあの場所に帰りたいと思うのは当たり前。


「ない、と言ったはずですがねえ。そもそも、これから死ぬ人間が行く場所は1つでしょう」


「死なないさ。敵だっていうんなら打ち倒すまでだ」


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