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64 VSゴング 後編


 助かったー、危うく真っ二つになるところだった。

 そうならなくても転落死するところだった。

 一緒に死にかけたカオスも安堵して息を漏らす。

 同じ時、マグマのブレスが止まってゴングが自由になった。

 ブレスを吐き続けたマグドラゴンは疲弊している。


「〈クイックブレイド〉!」

「ブラド躱せ!」


 え、ゴングが一瞬で目の前に!?

 認識した時にはもうブラドが斬撃を避けていた。

 速すぎて私の目じゃ追えない。でも、回避で体勢を崩したのは分かる。


「〈ヘビーブレイド〉おおおお!」


 今度の斬撃は回避が間に合わずに喰らう。

 ブラドの脇腹が斬られて、強力な一撃に吹き飛ばされた。

 大きな傷口からは真紅の血液が多く流れ出す。

 傷を見たカオスは青筋を額に浮かべ、自前の蝙蝠っぽい羽で飛翔する。

 飛ぶ直前まで私はカオスに掴まっていたけど、咄嗟に手を離したから何とか無事でいられた。


 パートナーを傷つけられてカオスは怒っている。

 怒りで冷静な判断が出来ていないように思える。

 仕方ない、一先ずは二手に分かれて攻撃しよう。


「〈ゴッドハンド〉おおお!」

「〈鉄壁(てっぺき)〉!」


 黄金色の巨大な拳がゴングを真横から殴る。

 さっきみたいにゴングは吹き飛ばされ……ない。


 嘘、さっきと違ってあんまり効いてない。

 私の〈アナライズ〉で生命力を見る限り、ダメージ量はさっきの4割程度。

 たぶんあいつが発動したスキル〈鉄壁〉の効果だ。


「〈クイックブレイド〉!」

「ぐおっ!?」


 やっぱり今の斬撃スキルの動きは目で追えない。

 気が付けばカオスの背後に移動していて、カオスの脇腹を斬っていた。


 味を占めたのかゴングは連続で同じスキルを使う。

 マズい、このままじゃカオスが殺されちゃう。


「ブラドお願い、今だけ私の言うことを聞いて」


 スキルや魔法を連続で使うと発動が僅かに遅れる。

 今もそうだ。ゴングが連続で〈クイックブレイド〉を使用しているけど、再使用の瞬間だけ動きが止まる。さしずめ硬直時間ってところか。その止まった瞬間ならブラドのブラッドブレスを当てられる。


「今! ブレス!」


 ブラドが勢いよく口から赤黒い霧を吐き出す。

 剣を振り被ったゴングが「何!?」と驚き、赤黒い霧に呑まれた。


 霧の正体は血だ。ブラッドドラゴンは体内に血溜め袋があって、血が足りない時やブレスの時にそこから血を持って来る。

 血の霧なんて威力なさそうだけど十分な脅威だ。

 ブラッドドラゴンの血は他の生物には毒だから、霧を吸い込めば当然体に害がある。

 生物の内側から組織を破壊するしどんなに強い生物にもダメージを与える。


 ブレスを吐き終わったブラドが一直線にゴングへと向かう。

 ブラッドブレスへの驚きが消えない内に、ブラドが突進してゴングを突き飛ばす。

 攻撃直後、私がカオスの腕を掴み、力一杯引っ張ってブラドの背に座らせた。


「ダメだよ、怒り任せの攻撃じゃ」


「わ、悪かった。それよかあいつの生命力はどうだ?」


「待ってね。〈アナライズ〉」



 【名 前】 ゴング

 【レベル】 75

 【ジョブ】 グラディエーター

 【熟練度】 ☆☆☆☆☆☆


 【生命力】 1/695

 【魔法力】 58/368

 【攻撃力】 446

 【守備力】 432

 【聡明力】 221

 【抵抗力】 328

 【行動力】 419

 【ラック】 210


 【持ちドラ】なし



 よし、今までの戦いで生命力も魔法力も削れてる。

 ゴングが使うスキルは厄介だけど、残りの魔法力があの量なら使えて2回か3回。

 勝てる、あんなに追い詰められているなら確実に、私達は勝てる。


「生命力、残り1!」


「オーケー。グラディエーターが得られる特性〈不屈の闘志〉が発動したみたいだな。死ぬ攻撃を喰らっても生命力を1残す特性だ。生命力が1の状態じゃ発動しねえから安心しとけ」


 そんな特性があったなんて……知らなかった。

 ジョブの熟練度を上げればその都度特性を得られるのは知っていた。

 私も戦闘を重ねて熟練度を上げれば特性を得て、今よりも確実に強くなれる。


「バニア、お前にトドメを刺させるための策がある。成功するか分からねえし、失敗したら死ぬかもしれねえ。やるか?」


「決まってるでしょ。やるよ」


 死ぬのは当然怖い。

 だけど、ケリオスさんを痛めつけたゴングは、私の手で引導を渡したい。

 私から大切な人を奪った報いは必ず受けさせる。


「なら――」


 カオスが策とやらを話してくれた。

 通用するか分からないけどやらないよりずっと良い。


「よし、マグドラゴン! ブレス頼む!」


 マグマブレスがゴングと私達の間を通る。

 攻撃のためじゃない、隙を作る為だ。

 私が攻撃を当てるための隙を、ゴングの死角を作り出す。

 下から追いかけてくるあいつは、マグマブレスより上方にいる私達を1度見失う。


「バカが、そんなんで見失うのは一瞬だ! 舐めんじゃねえぞ!」


 すぐにマグマブレスは消えたからゴングはブラドを捉える。


「ブラドばっかりに注目してていいのか?」


「はあ? ……いや、まさか!?」


 気付いたみたいだねゴング。

 今ブラドの背に私は乗っていない。

 あのマグマブレスで視界から外れた一瞬、私だけがブラドから飛び降りていたんだ。

 そして今、私がいるのはお前の背中側だ。


「クイックブレ――」

「もう遅い」


 すれ違いざま、後ろから思いっきり短剣を突き刺す。

 肉体が頑丈すぎて先端部分しか刺さらなかったけど、生命力をたったの1削るだけなら十分。驚愕の表情で振り向いたゴングの目から光が失われる。


 やった、やったよ。私があいつにトドメを刺したんだ。

 ケリオスさんの仇の1人を私が討てたんだ。


 あれ、何だろう。

 ゴングの体から青白い球体が出て、私に向かって吸い込まれた。

 青白いオーラが私の体から噴き出る。

 これってモンスターを殺した時と同じ、経験値の獲得とレベルアップ?


 間違いない、体がすっごく軽くなっていく。

 初めて知ったけど知りたくなかったな。

 ……人間を殺しても、経験値を得られるなんて。


 うっ、頭が……頭が痛い。何かが入り込んで来る。

 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!

 世界が回って、歪んで、呼吸が……上手く、出来ない。

 どんどん、視界が、暗く、なって……。


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