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63 VSゴング 前編


 攻撃を止めてくれるとカオスも理解している。

 もしカオスが私を庇ってくれなかったら私は死んでいた。


「攻撃なら止めてんじゃねえよ。従いたくねえなら従ってんじゃねえよ。ブラド! そんな奴、振り落としちまえ!」


 少しカオスを見つめたブラドは目付きが鋭くなり暴れ出す。

 急に暴れたからゴングは落ちそうになるけど中々落ちない。

 必死にバランスを取ったり、体にしがみついて乗り続けている。


「おいブラッドドラゴンふざけんな! 暴れんなよ落ちちまうだろうが!」


「――落ちろよテメエは」


 いつの間にかカオスがゴングの真横に移動していた。

 これまで吸血鬼っぽいことをしなかったが、黒い蝙蝠のような羽を広げて空を飛び、高速で接近したんだ。

 怒りに染まった顔の彼女は右拳を後ろに引く。


「〈ゴッドハンド〉おおおおおお!」


 彼女の横に黄金色の巨大な腕が現れる。

 巨人の腕のように大きいそれは、彼女が拳を振るうと同時にとんでもない速度で前進。直撃したゴングはとんでもない速度で吹き飛び地面を転がった。


 着地後、彼女はもう1回〈ゴッドハンド〉を使用。

 今度は倒れているゴングの真上に黄金色の腕が現れ、真下を殴る彼女の動作で黄金色の腕も落ちる。ゴングは「畜生が」と言って立とうとしたが巨大な腕の下敷きになった。


 凄まじい衝撃で地面に大きな亀裂が入る。

 気のせいか、彼女の攻撃でこの火山すら揺れた気がした。


「ブラド、テメエはブラドだ。そうだろ」

「ブルルルル!」


 カオスとブラドの体が白い光に包まれ、光が混じり合う。

 あれはもしかして契約?

 そういえば、私とクリスタが契約した時もあんな感じだった。

 温かな白光に包まれて魂同士で繋がった気がする。


「あ、今なら……〈アナライズ〉」



 【名 前】 ゴング

 【レベル】 75

 【ジョブ】 グラディエーター

 【熟練度】 ☆☆☆☆☆☆


 【生命力】 328/695

 【魔法力】 368/368

 【攻撃力】 446

 【守備力】 432

 【聡明力】 221

 【抵抗力】 328

 【行動力】 419

 【ラック】 210


 【持ちドラ】なし




 【名 前】 カオス

 【レベル】 72

 【ジョブ】 ゴッドハンド

 【熟練度】 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 【生命力】 695/695

 【魔法力】 193/233

 【攻撃力】 508

 【守備力】 486

 【聡明力】 85

 【抵抗力】 206

 【行動力】 341

 【ラック】 100


 【持ちドラ】ブラド(ブラッドドラゴン)



 やっぱりだ、ブラドの契約相手がカオスに戻っている。

 やっと戻って来たね私達の友達。


 これで形勢逆転かな。

 ゴングには持ちドラがいなくなったし、大技を2回も喰らって生命力は半分以下。

 安心は出来ないけど勝率は大きく上がった。


「……く、そがああああ……俺の持ちドラを奪ったなあ?」


「テメエのじゃねえよ豚っ鼻。バニア、乗れ!」


「うん!」


 カオスと一緒に私もブラドの背へと乗る。

 初めて乗らせてもらった。乗り心地は良いな、違和感がない。

 さあ反撃だ。私達の力を見せてやろう。


「調子にのんじゃねえ! 俺に勝てると思ってんのか!?」


 挑発的な笑みを浮かべてカオスが「余裕」と答える。

 さすがに調子に乗りすぎだと思うけど……まあいいや。


 ブラドが飛翔して高速で動き回る。

 何度もゴングとぶつかり合い、弾かれるように離れる。

 私はといえば振り落とされないようカオスに抱きついている。


 現状の力量差はあまりない。

 速度はブラドが少し上回っているけど、力はゴングの方が上だ。

 両者に加わるダメージはおそらく同程度。

 このままいけばゴングを倒せるはず。


「小娘、後ろに隠れているだけか! 臆病で弱者なんて可哀想な奴だぜ!」


 ゴングの罵倒が胸に刺さる。

 自分が足手纏いになることなんてとっくに分かっていた。

 援護したくても敵の動きが速すぎて短剣で狙えない。弓は下手だから矢を放っても当たらないだろうし、剣はリーチが足りなくて届かない。


 たぶんカオスは私の弱さを理解している。

 それでも『乗れ』と言ってくれたんだ。

 逃げろとは言わず、一緒に戦うためにブラドへと乗らせてくれた。

 気持ちに応えるために私だって本当は何かしたい。


「ふざけたこと抜かすな豚! 確かにバニアはテメエの攻撃2発も喰らえば死ぬ。それでも戦いを避けず、命賭けてオレの後ろに居るんだ! 死を覚悟して戦場に居られる奴が弱いわけねえだろ!」


 ……ありがとう。褒めてくれてとても嬉しい。

 カオスの前に回している腕に自然と力が入った。口元も少し緩む。

 もう大丈夫だ、焦りもない。

 嫌いな敵の言うことなんて気にしなくていいんだ。


「バニア、ちょくちょく〈アナライズ〉を使って、あいつの生命力を確認してくれ。トドメはバニアに刺させてやるよ」


「へえーそりゃ楽しみ」


 私にも出来ることがある。カオスが示してくれる。

 勝つためなら私はなんだってやってやろう。

 現在のゴングの生命力は285。

 既にマックスの半分以上削れている。


「ブレス!」


 カオスが指示を出す……けど何も起きない。

 ブラドはゴングから距離を取って飛行している。

 唐突すぎて伝わってないんじゃないのかな。


「おいブレスだよ! ブラドしっかりしろ!」


 え、俺ですかみたいな反応したな今。

 持ちドラに戻っても以心伝心にはならないみたいだ。


「チャーンス! 喰らえ〈ギガンティックブレイド〉!」


 マズい、私達が何もしないからゴングが大技を繰り出す。

 高威力な技は強ければ強い程に隙が生まれる。

 今までは高威力な技を使わせないように絶えず攻撃していたけど、それが途切れちゃった。いくらカオスとブラドが強くても喰らえば大ダメージは免れない。


 ゴングの右手に持つ鉈みたいな剣が巨大化した。

 ひええ、あんなので斬られたら真っ二つになるじゃん。

 ゴングは巨大な剣をブラドの進行方向へと振り下ろす。

 このままの速度で飛んでいたら斬撃に飛び込んじゃう!


「止まれ!」


 カオスの指示でブラドが急停止する。

 急停止の衝撃で私達の体が投げ出された。

 こ、これは、最善手と思いきや悪手だったのか。


「あ、やっべ」

「……死んだ」


 死を覚悟した時、マグマが直線状に伸びてゴングに向かう。

 もしかしてマグドラゴン?

 そうだ、やっぱりマグドラゴンのブレスだ。

 無警戒な方向からの攻撃にゴングは驚き、動きが止まる。

 避けることも考えられなかったのか、攻撃を中断した直後ブレスをもろに浴びた。


「ぐおおおおおっ! くそっ、あつっ、鬱陶しい!」


 空中で身動き出来ない私達をブラドが背で受け止める。

 助かったー、危うく真っ二つになるところだった。

 そうならなくても転落死するところだった。

 一緒に死にかけたカオスも安堵して息を漏らす。


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