表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/123

44 クールドリンク


「わっはっは、みんな暑くても問題なさそうだね。ミレイユなんかさっきまで暑さでダウンしていたのに」


 え、意外。マヤさんがそんな嘘吐くわけないし、事実なのを証明したも同然にミレイユが慌て出す。


「ちょっとマヤさん! 言わなくてもよいことを!」


「ごめんごめん。弱い部分を見せたくないんだよねー」


 暑さなんてへっちゃらだと思わせたかったのか。

 変なところで見栄を張るなあミレイユは。

 暑ければ誰だって熱中症になるんだし、虚勢を張る必要ないのに。


 ……あれ、おかしいな。

 さっきまで暑さでダウンしていたらしいのに、どうして今普通に話せているんだろう。カオスみたいに実は余裕があったのかな。


 心頭滅却すれば火もまた涼し、なんて言葉がある。

 心を強く保てばどうにかなる場面は多い。


「どうしてミレイユは今平気なの?」


「クールドリンクのおかげですわ。バッテバテからピンピンになりましたの。ね、マヤさん」


「うん。まあ暑さに耐えられるのが理想だけど、無理せず道具に頼るのも大事だよ。冒険の心得その3! 自分の限界を見極めるべし!」


 へえ、クールドリンク……って何だっけ。

 聞いたことは……ないね。あるかと思ったけどなかったや。ドリンクって言うくらいだし飲み物か。


「あ、その顔さてはクールドリンクを知らないね?」


 私達3人が頷くとマヤさんが説明してくれた。

 クールドリンクとは数年前に発売された飲料。

 含まれている成分が体に浸透すると体内が冷える。

 エアコンを飲料にしたような画期的な道具らしい。

 ザンカコウのように気温が高い場所で売れている大人気商品だとか。


 説明してくれたマヤさんは「ダメだよー予習しとかないと」と、やれやれといった様子で告げる。


「凄い道具があるんだなあ。2人は知らなかったの?」


 元ぷれいやーのチームメイトに聞くと首を横に振られる。


「知らねえよ。知っていたら使うし」


「私もそんなモンハンみたいなアイテム知らない」


 もんはんって何さ……まあとにかく2人共知らなかったわけだ。

 これもげえむとの相違点ってやつか。

 便利な道具が作られたなら良いことだけどね。


「よければお1つ飲んでみる? お試しってことで」


 マヤさんの提案に私達はガッツポーズする。

 クールドリンクが入った瓶を彼女が鞄から取り出し、私達に1本ずつ渡してくれた。まさか3本もくれるとは思わなかったから驚いた。

 よっ、マヤさん太っ腹! 優しい獣人!


 受け取ったからには飲まないとね。

 ドリンクの色は空色。飲んでみると爽やかな風味で美味しい。


 うおっ、飲んで数秒でスースーしてきた。

 体の内側から〈フリーズ〉で冷やされているみたいだ。

 タキガワさんに〈フリーズ〉を使ってもらうより、さらに涼しい。


「すっごい涼しくなりますね!」


「うわ、本当に凄いわねこれ。全く暑さ感じないわ」


「うっひょーこれがクールドリンクの力! 直射日光が気持ちいいぜ! これならいける、モンスター如きこのオレが片付けてやるぜえ!」


 興奮したカオスが闘志を燃やして走り出した。

 あーあ、もう背中見えなくなっちゃったや。

 いつもより難しい依頼なのに、1人で行くのは調子乗りすぎでしょ。

 今は持ちドラも傍にいないのに……。


 あれ? そもそもカオスはどこに向かったんだろう。

 私達はまだ『薔薇乙女』が受けた依頼の詳細を知らない。

 Bランクの討伐依頼だってことは聞いているけど、本当にそれ以外何も知らない。討伐対象すら分からない状態じゃ目的地なんてあるわけない……はず。


「ねえバニアちゃん、君達さ、私達が受けた依頼について知っていたっけ? カオスちゃん、どこに走っていったの?」


「……さ、さあ」


 待ったけどカオスが戻って来ることはなかった。

 本当にどこへ行っちゃったのさー。実は既に暑さで頭がおかしくなっちゃってるんじゃないの。……いや、わりと普段通りか。



 *



 ザンカコウ付近の荒野に私達は来ていた。

 先走ったカオスもちゃんと一緒だ。依頼の内容を確認してからザンカコウを出て、疲れて立ち止まっていた彼女を回収した。今はクリスタの背中、つまり私の後ろに乗っている。


 落ちると危ないからカオスは私に抱きついている。ちょっと強く抱きつきすぎだと思うけど、もしかしたら落ちるのが怖いのかもしれない。……別にいい、別にいいんだけどもタキガワさんの目が怖い。


 それにしても、クリスタに2人乗りしていると、ケリオスさんと初めて持ちドラに乗ったことを思い出す。懐かしいなあ。今の私はあの時の彼と同じように、クリスタと心を通わせて一緒に飛行している。

 ……またケリオスさんと一緒に乗りたかったなあ。


 あーダメダメ、暗いこと考えちゃダメだ。

 今考えるべきは仕事仕事。依頼だ依頼。


 私達『のんぷれいやー』と『薔薇乙女』で取り組む依頼。

 討伐対象はボルケーノパンサー25体。

 さすがにBランクの仕事だけあって、報酬は5000ゴラドと高い。人数が多いし均等に分けたらおよそ700ゴラド。Dランクの依頼と比べて多く貰えるのは嬉しい。


「さあ、頑張るぞお!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ