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42 ブラッドドラゴンの故郷はどこか


「それは置いといて相談に乗ってよ2人共」


 私はミレイユ達にカオスのことを話す。

 2人には関係ないのに真剣な表情で聞いてくれた。ただ聞いているだけじゃなくて、色々考えてくれているのが表情から分かる。


「――なるほど事情は分かりました。持ちドラとちょっとした喧嘩をしただけならすぐ仲直り出来ますが、今回はちょっとした喧嘩とは思えませんわね。珍しいケースと言えるでしょう」


 ミレイユは当事者のカオスを見て再び口を開く。

 彼女曰く、よっぽど相性が悪いか契約者側に非があるからしい。

 今まで付き合えていたわけだし相性が悪いわけじゃなさそうだ。


「カオス、でしたわね。日頃から交友を深めたりなどは?」


「……してねえ」


「今までパートナーでいてくれたことが奇跡なのか、ドラゴンも触れ合いを望んでいなかったのか。あなたの持ちドラが何を思っていたのかは分かりません。しかし、交友を深めることは大事ですわ」


「……かもな」


 ドラゴンとの意思疎通は難しい。ブラドが何を思ってカオスの持ちドラをやっていたのか、私にも分からない。当然クリスタやクィルの気持ちも正確には分からない。でも持ちドラになってくれたってことは私達を認めてくれたはず。ブラドだってカオスのどこかを気に入って一緒にいたはずなんだよ。そこからさらに仲良くなれたら素敵だよね。


「分かっているならいいのです。さて、仲直りしようにも再会しなければ何も始まりませんわね。どこか心当たりはないのですか?」


「ねーなー」


「となれば、故郷に帰った可能性が高いですわね」


 なるほどなるほど、実家に帰らせていただきますってやつか。


「ブラッドドラゴンの故郷……どこだ?」


「アンタが分かってなきゃダメでしょうが」


 止めてタキガワさん、その言葉は私にも刺さる。

 クリスタルドラゴンがどこに住んでいるのか分からない。


「ブラッドドラゴンは火山地帯、もしくは吸血鬼の国周辺に生息しています。あなたは吸血鬼でしたし吸血鬼の国の方が行きやすいのではないかしら」


「ヴァンノールか、あそこ薄暗くて苦手なんだよあ」


 吸血鬼の国……本で読んだことがあるかも。

 ヴァンノール。吸血鬼が生活しやすいよう徹底した国。

 吸血鬼は日光に弱いから洞窟の中に作られているらしい。カオスもたまに熱中症みたいな状態になるし、日光というか暑さに弱いんだろうな。


「ならば火山地帯てすわね」


「……暑いのも苦手なんだよなあ」


「文句言わない! アンタの問題でしょうが!」


「あ、あの、ザンカコウなんてどうかな? 良い場所だよ?」


 バンライが言うザンカコウ……確か、火山付近に作られた国だね。

 実際に行ったことはないけど本で見たことがある。

 熱に強いドラゴンが多く生息しているらしいし、エルバニアじゃあんまり見ないドラゴンがいるかもしれない。そういえばザンカコウは温泉が有名なんだっけ。ドラゴンと一緒に入れる混浴温泉もあるって本に書いてあったな。


「仕方ねえ。暑いのは嫌いだしヴァンノールに行くか」


「……そっかー、じゃあザンカコウの混浴温泉は今度だね」


「仕方ねえ。暑いのは好きだしザンカコウに行くか」


「アンタさっきと言っていること真逆じゃない!?」


 カオス、暑いの苦手だよね?

 温泉に入りたくなったのかな。混浴温泉いいよね、ドラゴンと一緒に入れるの最高だし。今いる銭湯でも小型なら入れるけどクリスタは中型だから入れない。小型中型大型関係なく一緒に入れる混浴温泉は大人気で、雑誌にも旅行でオススメって紹介されていた。私も是非行きたい。


「ザンカコウなら私達も行く予定だよバニアちゃん」


「ホント!?」


「ギルドの依頼で行くのです。Bランクの討伐依頼ですわ」


「よーしそんじゃあみんなで温泉入るぞお!」


 楽しみだなあ温泉。テンションの高さはカオスに負けるけど。

 純粋に旅行で楽しむのもいいけど仕事をしてもいいかもね。討伐依頼は『のんぷれいやー』と『薔薇乙女』合同で受けられるわけだし、行くついでに依頼を受けていこうかな。


「カオス、お風呂出たら話あるから付き合いなさい」


 少し怖い目をしたタキガワさんがカオスに告げる。


「は? ンだよ、ここで話せばいいだろ」


「ここで話して困るのはアンタの方じゃない?」


 そう言うと彼女がカオスに何か耳打ちする。

 何だろう、聞いた瞬間にカオスが目を見開いた。

 少し空気が悪い。気になるなー、チームの一員として2人の仲が悪くなるのは嫌だ。気になるから後で盗み聞きしてみよう。


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