37 レベル上げ
チーム『のんぷれいやー』結成から数日後。
私達は現在、草原にて銀色の小鳥を追い回していた。これは小鳥をいじめたいわけではなく、レベル上げに必要なことだからやっている。
タキガワさんとカオスの2人が珍しく同意見だったのがレベル上げについて。ゴマの強さを目の当たりにして強くなろうと思ったのは私だけじゃなかったらしい。
小鳥を倒して強くなるなんてそんなバカな……と、話を聞いたばかりの私は思っていた。けど昨日ようやくその銀色の小鳥、メタルバードを倒した際に疑惑は消し飛んだ。
2日もかけて1体倒した結果。
――私のレベルは一気に14に上がりました。
それはもう興奮した。信じられない程のレベルアップに震えて、両手を上げてジャンプするくらいに喜んだ。
私はメタルバードを知らなかったけど、ぷれいやーの間では常識だったらしい。ぷれいやー達はほとんどの人間がここでレベル上げをしていたとか。そりゃ強くなるわけだよね。受付嬢さんの話によると、レベルは平均数ヶ月に1上がるだけらしいもん。
過去に人間が到達した最高レベルは88。
順調にいけば私が1番になるのも夢じゃない。
あ、でもケリオスさんって確かレベル99だったような……。認知されていないってことだよね。知られていないだけでレベル99の人が他にもいるかもしれない。
「クリスタ右、右!」
私を乗せた持ちドラ、クリスタルドラゴンのクリスタが1体のメタルバードを追跡する。タキガワさんやカオス曰く大量の経験値が貰えるから倒すのはかなーり難しい。大変じゃないと経験は積めないもんね。
手のひらサイズの小鳥なのにクリスタより速い。タキガワさんの持ちドラ、クイックドラゴンのクィルでも追いつけずに離されていく。
倒すにしろダメージを与えるにしろ接近しないと話にならないのにさ。……クリスタのブレスで倒してもらっても私のレベルは上がらないし、地道にやるしかない。
「カオス、バニアちゃんの方へ追い込むわよ!」
「分かってるっての!」
タキガワさんとカオスが珍しく、本当に珍しく連携してメタルバードの進行方向を制限した。魔法やドラゴンのブレスで私の方へ誘導してくれている。
どんなに速くても移動方向を予測出来れば攻撃を当てられる。メタルバードを倒そうと躍起になって2日経つけど、これしか倒す方法を見つけられていない。こんなの私1人じゃ到底倒せないよ。
ありがとう2人共。
「今よバニアちゃん!」
「殺せえ! 殺せえ!」
よし、メタルバードがこっちに来た。
若干目を大きく開いているし驚いているのかな。まあ驚くよね、移動方向へ先回りした私が待ち受けているんだからさ。……あとカオスの口の悪さにもびっくりしていると思う。殺せ殺せって物語の悪役みたいだよ。
ここからはタイミングが命。
ほんの少しでもタイミングがずれたら攻撃は当たらない。当然警戒はされるから同じ状況になるとは限らない。あの個体を倒すチャンスは1度きりなんだ。
「クリスタ、あの子の動きに合わせてね。私が短剣で斬ってみせるから」
クリスタが「クルルゥ」と鳴いて従ってくれる。
一撃でも当てられれば倒せるのは既に実証済み。私の一撃で倒せるか倒せないかが決まる。これで倒せないなら次のチャンスは数時間後、もしくは数日後。手伝ってくれている2人のためにも必ず討伐してみせる。
私の言葉通りクリスタは、軌道を変えるメタルバードに移動を合わせた。
あんなに素早いんだから急な方向転換は出来ないでしょ。スピードで劣っていても、真正面から来るなら進行方向に移動するくらい出来るよ。
さあ来い経験値――じゃなかったメタルバード。
まだ。まだ、まだ、まだ……今!
私の短剣がメタルバードに迫っていく。
狙いを定めて思いっきり振った短剣が――直撃。
メタルバードは草上に落ちて、青白い球体が私の方へ飛んで来た。経験値だ。それが体に吸い込まれると、レベルアップの証として青白いオーラが体から噴き出る。
「やったあ倒したあ! これで大量の経験値ゲット!」
ふっふっふーん。最初に倒した時はレベルが11上がったんだし、もう今ので25になったのかなあ。さっそく確認確認。
うっきうきの気分で「ステータス」と唱えてみる。
【名 前】 バニア
【レベル】 14→20
【ジョブ】 ライダー・ガーディアン
【熟練度】 ☆
【生命力】 107→167
【魔法力】 46→62
【攻撃力】 62→78
【守備力】 73→111
【聡明力】 47→73
【抵抗力】 60→92
【行動力】 74→138
【ラック】 10→16
あれ、思ったより上がんなかったな。
まあいいや。だってここへ来るまではレベル3だった私がたった数日でレベル20なんだもん。嬉しく思うことがあっても残念に思う必要なんてない。レベルがどんどん上がりにくくなるのは当たり前だし。
私、もうメタルバードの虜になっちゃったのかもしれない。
大量の経験値を生む存在が人間を狂わせていくんだね。




