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26 おじさんみたいな女の子


 クリスタの背に乗って、やって来ましたイエ村。

 エルバニアから45分でとうちゃーく! 予想してた通り時間はあんまり掛からなかったな。こんなに早く着いたのもクリスタのおかげだね。


 今回の依頼はロックドラゴンの鱗1枚の採取。

 若い女性限定なんて意味の分からない条件があったけど、報酬はなんと10000ゴラド! ゴブリン討伐は山分けしたのもあって900ゴラドだったから、達成すればしばらくはお金に困らない。依頼主だっていうイエ村の村長には感謝しないと。


 山の麓にあるイエ村は長閑な風景……なんだけど、何だか元気のない人が多い。女の人も少ない気がする。うーん、エルバニアみたいに活気ある場所じゃないのは分かる。でも何か、漠然としか分からないけど何か変だなあ。


 とりあえずまずは村長に会わないと。

 近くを歩いていた人に訊いて分かったけど、最奥にある民家が村長宅らしい。訪ねてみたら獣人のお爺さんが出て来て中に招かれた。

 因みにクリスタは家の外で待たせている。


 初めから笑顔の村長は犬耳が生えていて、目が隠れるほど前髪が伸びている。頭頂部が禿げているのはちょっと気になるけど。お茶を用意してくれている間にチラチラと見ちゃった。バレてないかな? バレてたとしても怒ってないかな? うーん、こういう人ってやっぱり毛のない頭を気にしているのかなあ。


「お茶です」

「ありがとうございます」


 茶色のお茶を口に含むと苦味が広がる。

 うげえっ、せっかく出してもらったんだし飲みきらないわけにはいかない。に、苦いけど修行だと思おう。


「今回は依頼を受けてくれてありがとうございます。条件の問題なのか、報酬額を上げても中々受けてくれる方がおらず、もう諦めようかと思っていました。貴方様は正に救世主でございます」


「お、大袈裟ですよ救世主なんて。……そんなに困っていたんですか? えっと、ロックドラゴンの鱗でしたよね。何に使うのかお聞きしてもいいですか?」


「申し訳ない。ギルドメンバーの方とはいえ、目的を教えることは出来ませぬ。詮索は止めていただきたい」


 お、怒られちゃった……。

 でも気になるんだよなあ、渡すのは鱗1枚だけでいいってことはそれだけで足りるってことだもん。

 ドラゴンの鱗の使い道っていえば武具や防具、装飾品、家具の飾りとか補強素材。鱗1枚程度じゃ精々何かの飾りくらいにしか使えないはず。……村長の焦り具合から飾りに必要とは思えないけど。


「ところで、出発はいつになされますか? もし休まれるなら宿が空いておりますが」


「今から行ってきます。早く欲しいみたいですし」


「急かすようで申し訳ありませぬ。くれぐれも、お体に傷など付けないようにお気をつけくださいませ」


 我慢して苦いお茶を飲みきってから村長宅を出る。

 あのお茶苦すぎるよ、舌がヒリヒリしてるし。村長も飲めば分かってくれないかなこの苦さ。……いや、作ってる張本人だから無理かもしれない。


 家の外で待ってもらっていたクリスタに「お待たせ」と言い、頭を撫でる。彼女は嬉しそうに「クルル」と鳴き声を上げた。


 さて、鱗を貰うためロックドラゴンに会わないと。

 住処にしてる山っていうのは1番傍にある山だよね。受付嬢さんの話だと大人しめな個体が多いらしいし、喧嘩にはならない……はず。喧嘩しちゃったら鱗を貰えないから依頼は未達成。うぐっ、それだけは嫌だ。


 ……改めて村を見渡す。やっぱり女の人が少ない。

 どうしてだろう、家の中で家事でもしてるのかな。それともみんな別の町村へ移り住んだとかかな。


 考えながら村を見ていると、1軒の建物の前に赤くて目立つドラゴンが座っているのを見つけた。あれ、どこかで見たことあるような……。


「チッ、ツイてねえ。まさか満室とは」


 赤いドラゴンが傍に居る建物から女の子が出て来た。

 左右で目の色が赤と青に分かれている。腰まで伸びた銀髪はよく手入れされていて輝きを放っている。綺麗な見た目と乱暴な言葉遣いであの子の記憶が蘇る。


「ああ! ギルド前にいた子!」


 ギルドの入口で男の人と口論していた子だ。

 カッコいいドラゴンに乗っているのを見たからよく覚えている。同年代っぽいし友達になりたいって思っていたんだよね。


「あ? 誰だ……へぇ?」


 口角を上げた女の子が近付いて来た。


「君可愛いねえ。あんまり女性がいないからつまんない場所だと思っていたんだ。今時間ある? 暇ならオレと一緒に遊ぼうぜ。俺と一緒にいれば夢のような時間を与えてあげるよ」


 何だろう、やっぱり残念な感じが漂う。

 おじさんみたいな言動だよねこの子。


 ギルド前でチーム加入を断ってたのって、まさか女好きだから? 男とつるむ気はない的なこと言ってたし。普段なら可愛いって言われると嬉しいんだけど、この子に言われてもあんまり嬉しくない。

 友達になりたいって思ってたけど悩んじゃうなあ。


「ごめんね、暇じゃないの。これから依頼で山の頂上に行かないといけないから」


「依頼……つうとギルドの奴か! じゃあオレも付いて行ってやるよ。宿が満室だから部屋で寝れねえし暇だからさ」


 宿が満室? あれ、村長は宿が空いているって言ってた気が……聞き間違いかな。まあ気にしなくてもいいか、ロックドラゴンの鱗を入手して渡したら帰るんだし。


「……あーはい、一緒に行こっか」


「何だよノリ悪いな。緊張してんのか?」


 う、肩組んできた。

 ちょっと初対面とは思えない馴れ馴れしさだ、良い香りはするのは嬉しいんだけども。女の子同士だからって言っても限度があるでしょ。ミレイユもバンライさんもこんな接し方じゃなかったよ。

 とりあえず一緒に行くことになったんだし仲良くしよう。


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