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107 因縁と再会


 お城は半壊しちゃったけど……って、いったい誰だお城を壊したのは。

 半壊とか絶対に事故じゃないでしょ。お城を攻撃した犯人が絶対どこかに居る。


「えー、エルバニアに住む皆さん聞こえますか? 私はゴマという者です」


 ゴマ!? どこから声が!


「みんなあそこを見て!」


 タキガワさんが指す方向に目を向けると、大勢のドラゴンとドラゴニュートの集団が空を飛んでいるのが見えた。エルバニア城下町の入口上だ。

 遠いから小さくて見えづらいけどあの集団の中にゴマも居るのか。

 普通は遠すぎて声なんて届かない。声を大きくする道具でも使っているのかな。


「私はリュウグウの新たな王。しかし、私はこの世界をも手中に収めようと思います。その最初の段階として、世界最大の国エルバニアを侵略させてもらいます。逃げたければ逃げなさい。私は人類を殺したいわけではありませんからね」


 な、何が人類を殺したいわけじゃないだ。

 ケリオスさんを殺したくせに。他にも沢山殺したくせに。

 世界征服なんてさせないぞ。あいつの思い通りになんかさせない。

 あいつの方から来てくれたんだ、今日私が倒して野望を止めてやる。


「では、攻撃開始」


 ゴマの指示で大勢のドラゴンとドラゴニュートが散らばって攻撃し出した。

 ブレスの大放出。建物が、道が、町が破壊されていく。

 人間もドラゴンも巻き添えを食らって吹き飛ぶのが見える。


「許さない。タキガワさん、カオス、行こう! あいつらを止めないと!」


「当然ね」


「あいつら全部オレが片付けてやるぜ」


 おっと、行く前にあの人と話しておかないと。


「アメジストさん」


 アメジストさんに駆け寄って伝えたいことを伝える。


「私とクリスタ……あ、クリスタルドラゴンだからクリスタなんですけど。私とクリスタは出会って1年も経っていないけど仲良しだよ。タキガワさんとクィルも、カオスとブラドも、人間とドラゴンだけど大親友だよ。それだけどうしても言いたかったの。またね」


 確かに愚かと言われるような人間も居ると思う。

 でもドラゴニュートだけが特別じゃないっていうのは、今回ゴマに思い知らされたはずだ。


 種族が違っても人の心は変わらない。

 ヒューマンも、エルフも、獣人も、ケンタウロスも、翼人も、他の色々な種族もドラゴンと仲良く出来る人は居る。寧ろ、悪人よりも善人の方が多い。


 アメジストさんが辛い思いをしたのは分かっている。

 でもね、自分の想像だけで決めつけちゃうのは良くないんだよ。

 アメジストさんにも分かるはずだ。優しい人はこの世界に多く居るんだって。


「行こう2人共、町を守りに。……ゴマを倒しに」


 クリスタの背に乗って、仲間と一緒に飛び立つ。

 空を進んでいるとすぐに敵のドラゴニュートとドラゴンが向かって来る。

 あなた達が何を思ってゴマに協力しているのかは分からない。

 もしかしたら何か事情があるのかもしれない。

 本当は戦いたくないけれど、今は迷ってる暇ないんだ。

 向かって来るんなら戦闘不能になってもらうよ。


 敵とすれ違った際に拳を叩き込み、気絶させて地面に落とす。

 タキガワさんは長剣で叩き、カオスはスキル〈ゴッドハンド〉で攻撃して上手く相手を気絶させている。今の瞬間で2人のドラゴニュートと1体のドラゴンを無力化出来た。


 やれる、無力化は容易い。数は多いけど私達の方が強い。


「ごめんバニアちゃん一旦離れる!」

「え?」


 タキガワさんどこへ行くの……ってそういう訳か。

 赤ちゃんを抱いた女性がドラゴニュートに襲われるのを見て助けに行ったんだ。誰かが助けに行かないと戦えない人が殺されちゃう。見捨てられないよね。あの女性と赤ちゃんはタキガワさんに任せて大丈夫だろう。


「悪い、オレも離れる!」


 カオスが向かう先には追い詰められたミレイユとバンライ。

 持ちドラのウィンドドラゴンと協力して戦っていたみたいだけど、敵側のドラゴンの方が強いし数も多い。一気に5体のドラゴンを相手にしたらさすがのミレイユ達でも厳しいか。でも大丈夫、ミレイユ達はカオスが助けてくれる。私は先へ行こう。


 空を飛びながら私とクリスタで多くの敵を無力化して地に落とす。

 順調に敵の数を減らせている……なのに、悲鳴があちこちから聞こえる。

 兵士団やギルドの人達が必死に戦っているけど対処しきれていない。


「ゴマだ、ゴマさえ倒せばみんな止まってくれるはず」


「――ほう、私を捜していたのですか」


「ゴマ!」


 横から黒いローブを着た男が黒い翼で飛んで来ていた。

 忘れもしない憎い青い顔。不敵な笑みを浮かべたムカつく顔。

 この男を目にすると私とクリスタの顔が強張るのが分かる。


「わざわざお前の方から来てくれるなんてね。捜す手間が省けたよ」


「ほっほっほ。私もこれから忙しくなるのでね。先にあなたの相手をしようと来てあげたのですよ。あなたはゴングとジミーを倒した。厄介な成長を遂げましたね。思えばあの時、ケリオスを灰にした時、あなたを殺さなかったのは私のミスでした。しかし今日であなたも終わりです。天国でケリオスに会わせてあげましょう」


 芝居がかった動きだ。言葉に感情が篭っていない。

 前に言っていた『ろーるぷれい』ってやつのせいか。

 こいつはずっと、何かを演じている。嘘吐きだ。


 きっとケリオスさんを殺したのも、私を見逃したのも、ゴングとジミーが死ぬのも全て計画通りなんだろうね。ミスだなんて微塵も思っていないのが言葉から伝わるんだよ。お前の下手糞な演技からね。


「「〈アナライズ〉」」


 【名 前】 ゴマ

 【レベル】 133

 【ジョブ】 アルティメットメイジ

 【熟練度】 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 【生命力】 1380/1380

 【魔法力】 1700/1700

 【攻撃力】 1212

 【守備力】 1280

 【聡明力】 1863

 【抵抗力】 1560

 【行動力】 1200

 【ラック】 1286


 【持ちドラ】 なし


 分かってはいた。やっぱり強い、自信満々なのも頷ける。

 だけど私だって負けちゃいない。もう無力な私は居ない。


 【名 前】 バニア

 【レベル】 59

 【ジョブ】 ライダー・ガーディアン

 【熟練度】 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 【生命力】 1120/560

 【魔法力】 460/230

 【攻撃力】 558

 【守備力】 1010

 【聡明力】 440

 【抵抗力】 968

 【行動力】 1076

 【ラック】 130


 【持ちドラ】 クリスタ(クリスタルドラゴン)


「ほう。この短期間で熟練度マックスまで上げるとは素晴らしい。熟練度マックスで得られるライダーの特性〈共闘倍化〉により、戦闘時はステータスが2倍。ケリオスにも匹敵するステータスですね」


 その通り、私のステータスは戦闘時、味方のドラゴンの数だけ2倍になる。

 ……とはいえ、〈共闘倍化〉が発動した状態でもゴマには敵わないか。でもこれで終わりじゃない。能力値アップのスキルを使えば対等に戦えるようになるはず。


「〈スピードアップ〉、〈オールガードアップ〉、〈オールレジストアップ〉、〈気分上々〉」


「ふっふっふっふ。バニア、無知なあなたに教えてあげましょう。ライダーの特性でステータスが倍になっている時、バフのスキルを使っても効果がないのですよ。唯一〈ウルトラアップ〉というスキルだけは特性効果を無視出来ますが、あなたは使えないでしょう。私は使えますよ。〈ウルトラアップ〉!」



 【名 前】 ゴマ

 【レベル】 133

 【ジョブ】 アルティメットメイジ

 【熟練度】 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 【生命力】 1380/1380

 【魔法力】 1700/1700

 【攻撃力】 2424

 【守備力】 2560

 【聡明力】 3726

 【抵抗力】 3120

 【行動力】 2400

 【ラック】 1286


 【持ちドラ】 なし


 攻撃力、守備力、聡明力、抵抗力、行動力が2倍。

 これが〈ウルトラアップ〉。凄いスキルだけど……私はまだ強くなれる。


「出し惜しみはしない。来て、ガネシア」


 紐に付けて首から提げていた黄金の小鐘を手に持って鳴らす。

 強く小鐘を鳴らしてすぐ、眩い黄金の体を持つドラゴンが私のもとへ飛んで来る。


「お願いガネシア。あいつを倒すために力を貸して」


「強そうな相手だ。まあ、汝の頼みなら断らん。共に戦おう」



 【名 前】 バニア

 【レベル】 59

 【ジョブ】 ライダー・ガーディアン

 【熟練度】 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 【生命力】 2240/560

 【魔法力】 920/230

 【攻撃力】 1116

 【守備力】 2020

 【聡明力】 880

 【抵抗力】 1936 

 【行動力】 2152

 【ラック】 260


 【持ちドラ】 クリスタ(クリスタルドラゴン)

 【仮契約】  財宝竜ガネシア



 ガネシアが協力してくれるから〈共闘倍化〉によりステータスはさらに2倍。

 これが今の私のフルパワー。ここまで強くなったんだ、絶対に負けられない。



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