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105 親子


 私バニア、今年で13歳。私は初めて王城へ呼ばれた。

 ……少し状況を整理しよう。私は、王城へ、呼ばれた。


「そこの女3人止まれ。この先は王城だ。許可が無ければ通れんぞ」


 門番の兵士に従って私、カオス、タキガワさん、持ちドラ達は足を止める。

 本当ならもう宿屋へ帰りたいけどそういうわけにはいかないんだよなあ。


「おいおい、偉そうだなモブ兵士Aの分際でよお。ここに居るのが誰か分かっていないようだな。バニアとその仲間、チーム〈のんぷれいやー〉が来たと王様に伝えてきな」


「止めなさい恥ずかしい。すみません兵士さん」


 お城に招待されたからって分かりやすく調子に乗ってるなカオス。

 招待されたのは私であって、カオスとタキガワさんは付き添いだよ?


「あなた方がギルドのチーム〈のんぷれいやー〉でしたか。申し訳ありません。容姿は伝えられていませんでしたので、先程の御無礼をお許しください。どうかお通りください。ギルザード王とローゼウル王子がお待ちです」


「許す」

「アンタが許すな」


 緊張しながらお城の門を通って中へと入る。

 私は今、お城を歩いているんだなあ。すっごく緊張する。

 飾ってある壺とか絵画とか、いったいいくらする物なんだろう。

 お城にあるくらいだから絶対高価な物だろうな。触らないようにしよう。


 階段を上がったらすぐ目の前にあるのが玉座の間。

 扉を開けて中へ入ると既に必要な人間は揃っていた。

 玉座には現国王ギルザード様が座り、隣に王子のローゼウル様。

 王族に護衛なしなんてありえないし兵士も居る。

 玉座から少し離れた場所に精鋭だろう兵士が10人。

 強そうな兵士だ。粗相のないよう気を付けないと冗談抜きに首が飛びそう。


「よくぞ来てくれたバニアよ。ローゼウルから聞いていたが目にするのは初めてだ。本当に白髪……顔立ちは母に似て可愛らしいな。妻が生きていたら言えないことだが、会えたことを嬉しく思う」


 私も見るのは初めてだ。病気のせいかギルザード様は痩せている。

 この人が……私のパパ。今でも信じられないし、自分が王族ってのも実感が湧かない。


「こちらこそ会えて光栄ですギルザード様」


「そう畏まらなくてもいい。お前は余の娘、余をお父様と呼んでも構わんぞ」


「……いえ、私にとってギルザード様はエルバニアの王様ですから」


「そうか。うむ、仕方がないな」


 目の前の玉座に座る人がパパだとは分かっている。

 だけど、ギルザード様は私にとって昔から王様として知っている人。

 今更パパと分かっても、すぐに親子として接するのは難しい。

 別に不満はない。慣れないだけだ。王様がパパなんて全然慣れない。


 いや、それは違うか。王様だからじゃないな。

 例えどんな立場の人間だろうと私はすぐ親子として接せない。

 私が生まれて13年、私にとって親はママだけだったんだもん。

 時間が経ちすぎたんだ。もっと昔に判明していたら良かったのに。


「父上、話を進めましょう」


「……そうだな。まず、バニアとその仲間には謝罪を。今回の事件、メテオラという使用人の計画に気付けなかった余と息子の責任。今後このようなことが起こらないよう注意するつもりだ」


「メテオラさんはどうなったんですか?」


「奴は犯罪者として地下牢に入れてある。王族を殺そうとしたのだ、本来なら即刻死刑なのだがお前の要望があるからな」


 王子様とは何回か話し合い、私はメテオラさんの死刑に反対し続けた。

 結果的に私は無事だったんだし殺すことないもんね。もちろん相手が無事なら何をしてもいいってわけじゃないけど、死刑を受けるのは可哀想だと思ってしまったんだ。死刑を防げたんなら反対した甲斐があったな、良かったや。


「バニアよ、お前には王族の血が流れている。今回の一件のように命を狙われることもあるだろう。お前さえ良ければ城に住まないか? 信頼の置ける兵士を護衛に付けるし、ローゼウルもお前の味方になってくれる。ギルドで働く必要もないぞ」


「……ありがたいご提案ですがお断りさせてもらいます」


「なぜだ。悪い話ではないだろうに」


「私は、今の生活がとても気に入っているんです。命を狙われて危険なのは承知しています。ギルザード様のお気持ちは嬉しいです。だけど、申し訳ないんですけど、私はただのバニアとして暮らしたいんです」


 王族としてお城暮らしなんてそりゃ夢みたいな話だ。

 子供の頃は憧れたもんね。ただし憧れたのは昔の話。


 私は今、仲間や友達と一緒に楽しく日々を過ごしている。ギルドで働くのだって辛いと思ったことはない。私は今の生活が大好きなんだ。ママはもう居ないし、初恋の人も死んでしまったけれど、友達と笑い合える今が大大大大好きなんだ。


 それに私にはやるべきことがある。ゴマを倒すという目的がある。

 お城暮らしなんてしていたら目的が果たせないかもしれない。


「残念だな。王族として暮らせば次期国王になれたかもしれんというのに。しかしバニア、お前が余の娘であることは変わらん。お前には自由に王城へ入れる権利を与えよう。いつでも余やローゼウルに会いに来るといい」


「はい。ありがとうございます」


「――失礼します! ギルザード様に至急お知らせしたいことが!」


 何だ? あれは門番をしていた兵士さんか。

 顔色が悪い。大量の汗を流しているし異常事態が起きたっぽいな。

 私には力があるし、モンスターや悪人が現れたなら私が戦わないと。


「何用だ騒々しい」


「と、突然の話なのですが、とある者達がギルザード様への謁見を求めています。天空都市フワリアの長老会一員であるピース様と……リュウグウの女王、アメジスト様が城の前に現れました」


 ピースさんと……アメジスト!? リュウグウの女王!?


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