102 たった一人でのモンスター討伐
ここが『継承の迷宮』。入ると不思議な気持ちになるな。
壁も床もほんのり青くて光を発している。この光、心が安らぐ。
さて、大量発生したモンスターはどこだ。入口には居なかったな。
私は迷宮内のモンスターを討伐しきらなきゃいけない。
気合いは十分。いつでも出て来い。
あ、階段発見。迷宮って言うくらいだし1階だけじゃなかったか。
階段を下りると……居た。
わらわらうじゃうじゃ、モンスターの大群。
「何、この数」
大量発生って聞いていたから多いのは分かっていたし覚悟していた。
でも私は甘く考えていた。きっと疲れるだろうなと、その程度の認識だった。
モンスターの数が10や20じゃない。このフロアだけでも多種多様なモンスターが多すぎて数え切れない。私が進めるスペースなんて殆どないくらい、モンスターで埋め尽くされている。
……敵が多くてもやるしかない。
大丈夫。私なら出来る。危なくても、大怪我する前に迷宮を出ればいい。別に今日中にモンスターを全滅させろとは言われてないんだから。
さあ行くよ、モンスター達。
天空竜の短剣を手に持って私は駆け出す。
モンスターを斬ったら次のモンスターへ駆けるのを繰り返す。
ワイドウルフ。ゴブリン。オーガ。フォレスライム。バクダンイシ。ボルケーノパンサー。タツマキング。デスキャンサー。ヘルホース。ゴーストソードマン。バッドメイジ。デスバード。マジックバード。ゴブリンメイジ。
休む暇なんて殆どない連戦。
どれだけモンスターを斬っただろう。
気付けば1つの部屋に居たモンスターを倒し終わっていた。それに気付くのが遅れるくらい疲れたんだな。たった1部屋でこの様か。
私が息を切らしていると、多くの死体から青白い球体が飛び出して私の中へと入って来る。青白いオーラが噴き出たからか、私はレベルアップしたのを感じる。
【名 前】 バニア
【レベル】 49
【ジョブ】 ライダー・ガーディアン
【熟練度】 ☆☆☆☆☆
【生命力】 346/431
【魔法力】 148/188
【攻撃力】 228
【守備力】 343
【聡明力】 189
【抵抗力】 324
【行動力】 334
【ラック】 55
【持ちドラ】 クリスタ(クリスタルドラゴン)
モンスターと戦って勝利することでジョブの熟練度が上がっていく。
数え切れないモンスターと戦ったおかげでもう5段階目だ。
熟練度の最大は8段階だから半分超えたな。
「次だ。まだ戦える」
他の部屋に行ってまた多くのモンスターと戦う。
「次」
【名 前】 バニア
【レベル】 50
【ジョブ】 ライダー・ガーディアン
【熟練度】 ☆☆☆☆☆☆
【生命力】 306/439
【魔法力】 128/194
【攻撃力】 232
【守備力】 353
【聡明力】 193
【抵抗力】 334
【行動力】 344
【ラック】 56
【持ちドラ】 クリスタ(クリスタルドラゴン)
次へ次へと他の部屋に溢れかえるモンスター達を討伐していく。
ノーダメージとはいかない。攻撃を受けて生命力は減るし、スキルを使って魔法力も減る。部屋の移動前に休憩を挟んで体力を回復させても全快せず、次の戦いが終わったら前以上に疲れが酷くなる。
「はぁ、はぁ、初日だし今日は帰ろうかな」
迷宮の入口で待っていたチームの仲間、持ちドラ達と共に宿屋へ帰り、翌日また挑戦。
2日目も初日と変わらない。モンスターと戦っては休み、また戦う。
がむしゃらに短剣を振るったり魔法を放ったりしてモンスターを倒す。
【名 前】 バニア
【レベル】 53
【ジョブ】 ライダー・ガーディアン
【熟練度】 ☆☆☆☆☆☆☆
【生命力】 296/469
【魔法力】 123/206
【攻撃力】 252
【守備力】 433
【聡明力】 202
【抵抗力】 414
【行動力】 416
【ラック】 59
【持ちドラ】 クリスタ(クリスタルドラゴン)
迷宮内での孤独なモンスター討伐は3日目、4日目と続く。
迷宮最下層へ辿り着けたのは6日目のことだ。
その日は最終部屋を残して帰り、宿屋で十分な休息をとった。
7日目、おそらくモンスター討伐の最終日となるだろう日。
万全な体調の私は仲間達に見送られて迷宮最奥の部屋に向かう。
「〈ステータス〉」
【名 前】 バニア
【レベル】 59
【ジョブ】 ライダー・ガーディアン
【熟練度】 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆
【生命力】 560/560
【魔法力】 230/230
【攻撃力】 279
【守備力】 505
【聡明力】 220
【抵抗力】 484
【行動力】 538
【ラック】 65
【持ちドラ】 クリスタ(クリスタルドラゴン)
今回の仕事で私は今までよりもさらに強くなれた。苦戦も少なくなった。
レベルが上がったおかげで新しいスキルも得られたし、熟練度が上がったおかげでステータスの数値が特別に加算された。今の私ならタキガワさんやカオスにも負けない。迷宮最奥の部屋にどんな強大なモンスターが居たとしても討伐してみせる。私なら出来る。
あまり緊張せず最奥の部屋の扉を開けた私は目を見開く。
おそらく王族に向けた初代国王からのメッセージが刻まれた石碑がある。ただ、そんなことどうでもよくなるくらい衝撃的な光景が目に飛び込んだ。最奥の部屋に居たのはモンスターなんかじゃない。見たことある灰色肌のドラゴニュートが待ち構えていた。
紫髪のモヒカン。筋肉が発達した肉体。毛皮の腰巻きをした灰色肌のドラゴニュート。あのゴマに従い、あのゴングと共にケリオスさんを痛めつけた憎いドラゴニュート。
「辿り着けたか、バニア」
「なんでこんな所に居るのさ、ジミー」
私が倒そうと思っている敵の1人であるジミーとこんな所で会うなんてね。