94 無風の森に輝きの財宝竜
ちょっと短めです
フォレスディアの町へ帰った私達を『薔薇乙女』やカオスが迎えてくれた。
マヤさんとテリーヌさんには『ぷれいやー』のことを上手く隠し、羨望の泉での出来事を語った。とにかく殺人鬼が死んだことが分かり、危機が去ったと町の人々へ話せば町の緊張感がパッと消える。
ミレイユとモデンさんが仲直りしたから、『薔薇乙女』の面々はフォレスディアに留まる理由がなくなり、すぐにエルバニアへと帰還。ギルドに心配を掛け続けるのは良くないからとマヤさんは言っていたっけ。確かにその通りだ。受付嬢さんも心配していたから早く安心させてほしい。
私達『のんぷれいやー』も『薔薇乙女』の様子を見る用事は終わった。本来ならエルバニアへ帰るべきだけど、1つだけやるべきことがあったからまだ帰らない。
このフォレスディアを囲む森は風も吹かない静かな場所。財宝竜ガネシアの新しい住処として、ぴったりな環境なんじゃないかと思う。ゴールドスの時のように、モンスターがガネシアから逃げて町を襲ったらいけないから、なるべく町の傍に住んでもらおう。それで襲われなくなるかは分からないけど……だ、大丈夫だろうきっと。
私が黄金の小鐘を鳴らすと空から1体のドラゴンが降り立つ。
頭に王冠を乗せ、カラフルな宝石が大量に埋まっている翼と眩い黄金の体を持つドラゴン。
「急に呼び出してごめんねガネシア」
「構わん。で、何用か」
「あなたの新しい住処、ここならどうかなって」
「……無風の森か。静かなのは好ポイントだ。少し暗いのも以前の洞窟と似ているしな。しかし、近くに町があるとゴールドスのようにモンスターが襲うかもしれんな」
そうなんだよね。そこが唯一の不安要素なんだよ。
「なんとか、ならない?」
「モンスター共にはあの町が我の縄張りと思わせればいいだろう。町の傍に棲めば可能かもしれない。まあ、たまには人間の近くで生活してみるのも悪くない。汝等と関わってみてそう思った」
……そうか。あまり人間に良い感情を持っていなかったもんな。私達と関わったといっても短期間なうえ限られた時間、せいぜい合計2時間とかか。それでも人間へ良い感情を抱いてくれたなら嬉しい。
「汝等には迷惑を掛けたな。詫びの代わりにその黄金の小鐘はくれてやろう。鳴らせば我が汝等のもとへ駆けつける。使い所は考えることだ」
「ありがとう。いつかまた呼ぶと思うけど、その時はよろしく」
使い所は考えろって、遠回しにあんまり使いすぎるなって言われたのかな。
確かに頻繁に呼び出されたら忙しいもんね。自分の時間がなくなっちゃう。
会いたいからたまに使うつもりでいたけど、ただ会いたいってだけなら年に1度にしてあげよう。月に1度じゃ怒られそうだ。でもガネシアだって私達とお別れして寂しいはずなのにな。本当は週1で会いたいと思ってもいいくらいなのに。……さすがに自惚れすぎか。
「またね!」
「ああ、また」
こうしてガネシアから頼まれた住処探しは終わった。
次会えた時は翼に埋まっている宝石とか、あの黄金の肌とか触らせてもらおう。背中に乗せてとかも言ってみようかな。ガネシアならオッケーしてくれそうだし、よし次会った時に頼む。
エルバニアに帰る前に羨望の泉へ寄ってしばらく泉の効力を試してみた。
出て来るのは石ばかり。たまにそれ以外が出て来てもハイポーションやハイエーテルなど生命力魔法力の回復アイテムや、私には価値がよく分からない素材の数々。カオスやタキガワさんが言うには、錬金壺というもので材料となる素材を違うアイテムに作り変えるのだとか。稀に珍しい素材があったらしく2人はかなり喜んでいた。
私の狙いは短剣だったんだけど出なかったものはしょうがない。
タダで欲しかったな、残念。エルバニアに帰ったら武器屋へでも寄ろう。
そういえば……近々エルバニアで祭りが行われる時期だな。楽しみだ。
まずはこの作品が少し面白いと思った方々、ここまで読んでくれた方々にお礼を。
ここまで読んでくれてありがとうございます。もう少しだけ応援してください。
フォレスディアでミレイユの話が終わり、趣味100%で書いているこの物語もそろそろ終わりが見えてきました。次の章かその次の章、細かく分けるならさらにその次の章で終わりそうです。最近は毎週1話投稿してるし今年中に完結出来るかもしれません。ドラクエ10オフラインをやり始めて熱中してますけどたぶん大丈夫。
ではまた来週、最新話をお楽しみに。