鬼仕事
鬼は焦っていた。なぜなら、節分なのに出番がない。最近では鬼を怖がる者がいないのだ。
「へぇ、よく出来ているコスチュームですね。俺もやってみたいなあ」
そんな風に言われ慣れたけど
「いや、コスチュームだけど、普通」
ちょっと前なら鬼は、恐ろしい怪物で恐れない人間など居なかった。その存在で震え上がり人々は恐れを成したものだ。
「それなのに現代社会と来たら、俺を見ても偽物の鬼だと思いやがる」
ぼそっと呟き歩き出した。歓楽街を歩いていると、まるで当たり前かのように街に溶け込んでしまう。困ったものだ。
それで鬼は看板を出すことにした。看板にはこう書いた。
『怖い鬼です。お仕事お待ちしております。用心棒、怪物退治、豆まきなど、お声がけください』
こんな事をするのは鬼の首を取ったようで恥ずかしいが、生きていくためには仕事をしないとならない。そのままの姿でハローワークに行ったら、ふざけていると思われるのでここは自分で仕事を探すべきだ、そう思って看板を立てた。
待てど暮らせど誰も来ず鬼も諦めかけた夕方、ひとりの子供が声をかけてきた。
「僕のいえ、今日豆まきなんだ。鬼役頼める?」
リアルな鬼だと子供は気がついていないようだ。
「チッ」っと言いかけそして同時に「御用命ありがとうございます」と返事をした。
自分で見つけた初仕事。人間に雇われるなんて千年生きてきて初めてだ。だけど、こうやって生きてくのも悪くないな。絵本ではいつも、悪い役ばかりだけど、偽物風の本物として看板出して鬼をやるのも悪くない。
実は豆まきもイワシも効き目がないことは黙っておこう。鬼は子供の家に着くと張り切って倒され役をやったのだった。




