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赤い月の下で  作者: 黒猫館長
第一章「白い一室での物語」
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第46話「喧嘩」

「昨日はボクが歌ったんだから今日は千明君の番だよー。」

「悪い。今日はちょっとパス。」

「ええーなんでさ?」

「ちょっと気分が乗らない。」

「フーンそっか。」

 ここ数週間は旭と交互に歌ったりしていたわけだが、どうも今日は歌えそうになかった。なぜか気分がよくないのだ。

「ねねねじゃあ今日は魔法少女ごっこしようよ。」

「なんじゃそら。」

「魔法少女っぽいセリフとかポーズとか決めるんだよ。」

「やらない。」

「えーやろうよー。ボクからやるからさ。」

 こいつは小学生低学年か?いや俺は確か幼稚園まではごっこ遊びとかしていた気がするけど、小学校の時にはもうやってなかったと思う。

「愛と正義の美少女戦士!月に代わってお仕置きよ!」

「また古いの持ってきたな。ていうかセー〇ームーンって魔法少女なのか?」

「似たようなものでしょ。どう?可愛かった?」

「はいはい可愛い可愛い。」

「わーいやったー!」

 今日の彼女はどうも不自然だ。まあ俺の言えたことではないだろうが、妙に明るくふるまおうとしているという感じだろうか。気分のせいもあってか少々気に入らない。

「次は千明君だよはいほらほら!」

「やらないっての。」

「やらない。」

「…チェっ付き合い悪いな。」

 ダメだ妙にむかむかする。

「あーあ、桑田先生だったらもっと付き合ってくれるのにな。」

 ああ、なんていうか学校とかにいた喧しい女どもや男どもを思い出してひどく不愉快だ。

「俺がそういう男だと知っていてなんで強要する?」

「え?」

「桑田先生なら付き合った。その通りだろう。なら桑田先生に頼めよ。別にできなくはないはずだ。むしろ俺よりもここにいるのだからいつでもできる。」

 彼ならきっといくらでもやってくれる。もしかしたら俺と違ってここから出してくれるかもしれないじゃないか。彼は大人でここに来たばかりで何のしがらみもないだろう。彼ほどの男が近くにいるのに、何故俺に言うんだ?俺がどんなやつか知っているだろう。付き合いの悪く無能で何もない愚図だ。

「俺は人形じゃないんだよ。お前の言う通りに動く召使でもない。俺よりいい代替品があるならそっちにすればいいんだよ。なんで俺なんだ。」

 俺は責任逃れでもしたいのだろうか?ああそうだよ。俺は自分勝手なんだ。俺はやりたくないことはやりたくない。俺がやろうとしないことを簡単にできるやつがいるのなら俺に押し付けるなよ。ああ最低だ。だけど俺は他人のための人形になれるほどやさしくもないしできた人間でもないんだ。

「俺より桑田先生がいいならそう言えばいい。俺はすぐにでも消えるし、きっと桑田先生はお前のためにいくらでも頑張ってくれるさ。俺なんかより何倍も善人だ。」

 旭は何も言わない。俺は何か言葉が欲しいのか?どうだろう、でも明確な意思表示があった方が楽だったなとは思う。「いてほしい」のか「ほかにいるからいらない」のか俺はどちらでもよかった。ほら言ったろう?俺は薄情者なんだ。必要としない奴を必要としない。そんなやつには心を揺らさないんだ。相手の意思表示一つでそれを決めてしまうのだから愛のあったもんじゃない。

「…今日は帰るよ。どうも今日はだめらしい。じゃあな。」

 俺はそのまま外へ出ていった。桑田先生は言った。明日どうなるかなんてわからないんだから今日を一生懸命生きるんだと、誰かのためになることを精一杯やるのだと。だがそれは強者の意見だ。俺はいつでも一生懸命は生きられないしいつも誰かのためになんて生きられない。本当にどうすればそんなに強くなれるのか、全く理解ができないのだ。


 一人残された白い一室で旭はぽつりとつぶやいた。

「ああまた間違えた。」

 誰もいない。ここには誰もいない。広い世界へののぞきあなはまたふさがれた。私は何が欲しかったんだろう?知らない広い世界への道?思い通りに動く人形?優しい両親?普通の人生?

「本当に最低ですね、私。」

 私が持っていたのは嫉妬だけだった。

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