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赤い月の下で  作者: 黒猫館長
第一章「白い一室での物語」
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第27話「諦めるのは簡単だ。でも…」

 考えろ考えろ!まだ終わっちゃいないはずだ。できることがもうない?ならもっと考えればいい。思考停止するくらいならその方がましだ。もう六に周りもしない疲れ切った頭は視界をぼやかしていきながら鈍く動き続ける。奴らが提示する問題は金だ。金を用意できればいいのだ。ネットから募るか?前に心臓病に治療に金が足りないからとキャンペーンを起こしていた夫婦がいた。だが咲をネットにさらしていいのか?そのあとのリスクが大きすぎる。ほかの方法は…どれも大衆に彼女の名前をさらすものしか考えつかない。それに本当に募金が集まるかもわからない。それでもやるべきか?人の命がかかっているのだ、だがもし咲がその方法で助かったとしても旭は…。最悪二人とも…。一人を確実に救うべきか?それともリスクをとってでも二人救える可能性に賭けるか?

「千明?」

 いつの間にか咲の病室まで来ていた。彼女を見て、声を聴いた瞬間、心の糸が切れた気がした。

「くそ…畜生…。」

 涙があふれてどうしようもなくなった。

「千明!?」

 危険を冒す度胸などなかった。あまりにも恐ろしい。もしここで二人を失う決断をしてしまったら、本当に失ってしまえば俺はきっと耐えられない。諦めるのは簡単だと誰もが言う。でも知っているだろう?あきらめないことはあまりにも難しい。一度の失敗さえ許されない世界だ。何度でもやり直せるというのなら、可能性を探れる。そうであればいくら傷づいても構わないというのに。

「くそ…クソっ…!」

 こんなにも泣いたのは三年ぶりくらいかもしれない。嗚咽を漏らして泣く姿はみっともないったらありゃしない。負け犬だ。白矢千明という男は負け犬だった。最低だ。あれだけ諦めないと大見え斬っておきながら、どうしようもないと思ったらすぐに匙を投げた。なんて矮小な男なのだろう、今だってほらこんな小さい子に泣きついている。


「落ち着いた?」

「ああ…悪かったな。」

 へたり込んで泣いていた自分に咲はずっとついていてくれた。重い病気で自分より苦しい立場だというのに、本当に情けない。

「何か、あった?」

「いや…ちょっとな。」

「私でいいなら、話聞く。」

「…大丈夫だよ。もう大丈夫だからさ、でもありがとな。」

 咲に話すようなことじゃない。もう終わったことなのだから。

「…。」

 そっと咲が頭を抱きしめてくる。女の子に抱きしめられるなんて初めてだ。相手は子供だというのに少しドキドキする。

「辛いなら、いつでもこうするから。」

「おいおい、そういうこと言われたら惚れそうになるだろう?」

 軽口をたたく。こんなにも簡単に心が安らぐなんてつくずくやすい男だ。…旭は、許してくれるだろうか。次あったら、全力で謝ろう。そして、彼女を最後まで看取ろう。そこまで自分は関わってきたのだから。




 俺は旭を諦めた。





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