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赤い月の下で  作者: 黒猫館長
第一章「白い一室での物語」
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第25話「仮面の意味」

 工藤から話を聞いた後、千明は旭の元を訪れていた。

『どうしました?ひどい顔ですよー?』

 いつものようににこにこと笑う旭、それがいつも以上にいけ好かなかった。

『もしかして、私のことでも聞いちゃいましたー?』

『…いつものボクっ娘口調はどうしたよ?』

『あ、あはは忘れてました。』

 ポリポリとわざとらしく頬を掻く。きっとネットで知った仕草だろう。

『聞いたよ。あんたが殺処分されるって。』

『そうですか、まあ仕方ないですよ。』

 話し方も何もかも昔に戻ったかのようだ。そして何もかも戻って俺は彼女のことも忘れてしまう、そんな気さえした。

『仕方ない?』

『はい。仕方ないんです。』

 全てを忘れ、何もかも中あったことになって、またのうのうと生きていく。

『…仕方ないわけ、ないだろう。』

 そんなの耐えられなかった。こぶしを握り締め、声を絞り出した。ほんとは怒鳴りつけてやりたい。思いっきりひっぱたいてやりたい。その思いをこぶしで握りつぶしながら俺は言った。

『ここにいるのは仕方ない、免疫がないから仕方がない、外に出られないのも、勝手な都合で殺されるのも、仕方ないなんて…そんなふざけたことがあるかよ。』

 なぜいつもお前は妥協して笑うのだ、全く笑えないんだよ、感情も何も殺して仕方ないと笑顔の仮面をつけている。だからお前の笑顔が大嫌いなんだ。

『なら何のためにお前は生きてるんだよ。何もなせず、ただ家畜みたいに飼われて監視されて、いらなくなったらごみみたいに殺されて、そんな生に何の価値があるんだ?俺は何のためにここに来たんだよ。あんたの死に際をめとるためにだなんてまっぴらごめんだ!』

 わかってる、彼女が悪いわけではないのだ。籠の中の鳥が、それも飛べもしない、外で生きられもしないような妖精が、何をすることもできないなんて当然だ。妥協して大丈夫だ仕方ないと受け入れてしまわなければ耐えられないことに決まっているだろう。いま彼女に当たり散らしている自分が心底いやになる。それでも俺は、白矢千明は許せなかった。

『俺は…あきらめないからな。』

 俺は負け犬のようにその場から立ち去った。あがくという逃げを選んだのだ。心のどこかでどうにもならないという思いを抱えながら、それでも何かしなければ耐えられなかった。


 誰もいなくなった一室で旭は言葉を漏らす。


『ごめん…そんな顔をさせたかったわけじゃないんだよ。…ごめん…ごめんなさい…。』


 響くことなく溶けた言葉は誰にも届かない。


薔薇の品種の名前って人命が結構多くてびっくりしました。←バラ園に言った感想。

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