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赤い月の下で  作者: 黒猫館長
第一章「白い一室での物語」
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第17話「退院」

投稿するとちょっと見てくれる人がいるけど新着小説ってどこで見れるのか知らないんですよねー。

「千明、携帯買ってもらえた。」

 心なしか自慢するように見してくるのはガラケー(ガラパゴス携帯)ではなくスマートフォンの最新機。こっちは親の方針でガラケーだというのに、べ、別にうらやましくないんだからねって言いたくなるくらいうらやましい。

「良かったな。じゃ、登録するか。」

 病院の外でなら使用していいよ言うことらしい。鶴田さん同伴の三人で庭にやってきた。

「それじゃ、こっちから電話するから出てくれ。」

「ん。」

 咲の電話番号を入力しかけてみる。♬♪(^^♪初期設定されている音楽が流れ、咲はスマホをとった。

「もしもし」

「もしもーし。」

 目の前だというのに電話をするというのも案外面白い。咲は無表情を気取ってはいるが、存外うれしそうだ。鶴田さんが登録ボタンを教え、俺の番号を登録した。

「今度はこっちからかける。」

「わかった。」

 今まで形態はなると面倒なのでサイレントモードにずっとしていたが、これからはやめないといけないな。久しぶりの着信音を聞きながらそう思った。


 退院の日、しばらくはまだ車いすの生活になりそうだが、一か月くらいすれば杖突で歩けそうらしい。病室の片づけを手伝ってくれる鶴田さんは最近いつもニヤついている。

「咲ちゃん寂しがってたねー。」

「週末又来ますよ。」

 咲とは週末には必ず来るということで合意した。母が送り迎えしてくれるということでありがたい。まあどちらにせよ通院するし、旭のこともあるのでちょうどいいのだけど。俺の返答を聞くと鶴田さんはにこにこと笑った。

「それにしてもびっくりだよ。二人がこんなに仲良くなるなんて。」

「…そうですね。」

 コミュ障の自分になつく子がいるなんて思いもしなかった。何もすることがなくて、話す相手がほとんどいなかったからだろうか。そうだとしてもあんな美少女になつかれてうれしくない男などそういないだろう。

「千明君。」

「はい?」

 鶴田さんは初めて真剣なまなざしとともに笑顔で言った。

「これからも、咲ちゃんと仲良くしてね。」


 家

 ここではさすがに車いすは使えない。移動は母に手伝ってもらいながら、二階の自室まで行くのはしんどいので一回の和室に居座ることになった。

「ふいー。」

 和室に敷かれた布団に座り込み一息ついた。やっぱり自宅は落ち着く。自分と同じインドア派ならばその安心感はよくわかるだろう。

「うぇーいうぇーい。」

 足のことを気にかけながらごろごろしていると、ピローンと携帯が鳴った。先からのメッセージらしい。

「あいつ、外でなきゃ使うなって言われてたのに。」

 今はもう夜。入院中の患者がこんな時間に外にいるわけがない。完全に約束を破っている。言いつけてやろうか…でもちょっとかわいそうな気もする。黙認しよ…。

 内容はというと、『週末、本持ってきて。』とのこと。

「俗物めっ!」

 貸すという名目で何冊か本を置いてきたというのにまだ足りないらしい。

『OK。分かった。』

 そう返信する。退院してしまえばなくなると思っていた時間がまだ続いている、そう思うと嬉しく感じる自分がいる。そしてもう一つ脳裏をかすめるのは、本の香りすら知らないであろう白髪の彼女のことだった。



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