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赤い月の下で  作者: 黒猫館長
第一章「白い一室での物語」
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第12話「生きるため」

「ポテト、ポテト♬」

 車いすとはいえ自由に移動できるということは素晴らしいことだ。こうして病院の売店でフライドポテトを買えるのだ。温かいし、ほくほくしているし、すぐに行けるし、うん、このまま病院に住んでもいいのではないかと思えてきた。

「あー、またおいしそうなもの買ってるね!」

 ルンルンしながら病室に戻ろうとすると、鶴田さんに出会った。

「はい。最近財布が手元に来たので自分で買いに来れるんですよ。」

「ああいいなー、おいしそうだなー。」

 なんか鶴田さんがよだれを垂らさんがばかりにこちらの手元を見てくる。

「一応言っときますけど、あげませんよ。」

「けちー。いいじゃないポテトくらい。お姉ちゃんにもお恵みをー。」

「乞食ですか!嫌ですよこれ四百円もするんですから。」

 すると鶴田さんは幼子のように頬を膨らませた後、「あっ!」っと何かをひらめいたらしくポンと手をたたいた。

「ねえ千明君、今日のお昼はみんなで食べよっか。」

「はあ。」


「「「いただきます!」」」

 病院食が並べられ、俺こと千明と、鶴田さん、そして咲の三人で昼食をとることになった。ちなみに咲はベットに座って俺の横で食べるようだ。変に意識してしまうのは俺が悪いのだろうか。

「いやー、三人で食べるなんて初めてだね。」

「ん。」

「そうですね。」

 今日の献立は中華スープらしきものと、生姜焼きとサラダとごはん。あと牛乳とプリンだ。

「ハム。」

「ハム。」

「ハムハム。」

「ハムハムハムハム。」

「…ねえ、せっかくだから何かしゃべろうよー。」

 普通にご飯を食べていると鶴田さんから苦情が来た。

「小学校のころからコミュ障と言われてきた僕に話題を振る能力なんてありませんよ。」

「別にしゃべらなくても問題ないし。」

 俺も咲もどちらかといえばボッチ組いや俺に至ってはぼっちのエリートなわけなので、食事中に話さなくても全然平気なのである。家では親と他愛ない話をしているが、そういう時はどうやって話題が上がるかはよくわからない。

「んー…あそうだ。知ってる?病院ではおじいさんとかにはお茶に凝固剤入れてゼリー状にして出すんだよ。気管に入らないように。」

「そうなんだ。」

「そういえばナースステーションに分量についての張り紙がありましたね。」

 人によってゼリーの緩さが違うらしい。でももし自分がそれを飲む?羽目になったとしたら、そのあと水が欲しくなることだろう。つまり意味なし。誤嚥性肺炎にならないためとか聞いたことあるけど、できれば飲み物は生涯飲み物のまま飲みたいものだ。

「そうそう。」

「…。」

「…。」

「…。」

「なんかしゃべろうよ!」

 なんかと言われても何も思いつかないのだからしようがあるまい。

「じゃあ知ってます?トマトは野菜じゃないんですよ。」

「知ってる。」

「そう、なんだ。」

「終わりです。」

「終わっちゃだめでしょそこで!」

「僕のできる精いっぱいはこれですから。」

「じゃあ咲ちゃん、PLEASE GIVE ME A SUBJECT!」

「サブジェクト?教科だっけ?」

「その意味もあるけど、この場合は話題の方だな。話題をくれって意味。ほかにも被験者って意味もある。」

「動詞で~を受けさせるとか形容詞で~しやすいとかいろいろ意味があるから大事だよん。」

「???」

「まああれだよ。英単語は大事ってこと。俺も今苦しんでる。」

「う、うん。分かった。」

「…。」

「…。」

「わかった。」

 俺が主菜を食べ終えプリンを食そうとしたとき鶴田さんはゆらりと立ち上がった。

「どうしました?」

「やっぱりあれだよね。若い私たちに知識の話をしても大して盛り上がらないのはしょうがない。」

 うん、今さらりと自分も若いって言ったね。いくつか知らないけど。

「やっぱりこういう時は恋愛の話に限る!」

「なんですか?独身こじらせてんですか?」

「ち、違わい!ほらじゃあ好きな異性のタイプは!?ハイ咲ちゃん!」

「え!?えーっと。冷静で頼りがいがある人…とか?」

 顔を真っ赤にしながら答える。可愛いな。最近心で思うだけなら何の抵抗もなくなってきた。

「じゃあ千明君は?」

「まともな人がいいです。」

「えーっと、咲ちゃんの頼りがいがあるってどんな感じなの?」

 無視しやがったな大人のくせに。そうだよまともじゃない人っていうのはあなたのことですよ!

「頭がいいとかじゃなくて…一緒にいると安心するとか包容力があるとか…。」

「なるほど乙女だね。でもそういう人なかなかいないよー?」

「それは知ってる。」

 知ってるのか。すみませんね。こちとら背が低いので包容力とか全くないんですよ。見た目弱そうだしね。でも一応喧嘩とか腕相撲とかで同年代に負けたことないんですよわたくしさまは!うん。すごく負け犬感がある。

「いいこと教えてあげよう咲ちゃん。理想の男がいないなら作ればいいのだよ。ある程度よさそうな男をキープして理想の男になるように少しずつ少しずつ調教していくの…」

「咲ー。馬鹿に構わなくていいぞー。」

「誰が馬鹿だー!」

「咲に変なこと教えないでくれます?もし咲が鶴田さんみたいになったらさすがに泣きますよ?」

「な、なにをー!…いーだ!そんなこと言うやつのポテトなんてもらってやる!」

「あっチョ!」

 鶴田さんは俺の机に置いてあったポテトをわしづかみにし、居ぬがごとく乱暴に食べてしまった。

「は、半分持っていきやがった。っているか食べるの早すぎなんですけど。」

「べー。」

 後でゆっくり味わおうと思ってたのに。残ったポテトを一つほおばる。うまい。

「…。」

「咲もほれ。」

「ん。」

 咲にポテトを一つ渡す。

「ん、おいしい。」

「そりゃよかった。」

「ジャー私ももう一つ。」

「鶴田さんはもう駄目です。」

「えーケチ!いいじゃん一最後の晩餐になるかなんてわからないんだし。」

 ちょっと何言ってるのかわからない。普通最後の晩餐だったらむしろ悔いがないように死守すると思うんだけど。

「何言ってるんですか、人は生きるために飯を食べるもんですよ。」

 そのあと先と二人でゆっくりポテトを楽しんだ。

「でも、やっぱりみんなで食べるご飯は美味しいね。」

「…そーですね。」

 この病院の病院食は美味しいことで評判だと父親が言っていた。実際美味しいのだが、やはり一人だと少々味気なく感じてしまう気がする。こうして誰かとともに食べることはやはり何か意味があることなのだろう。

「じゃあ、またみんなで食べる?」

 咲がそんなことを言うので、

「そうだな。また三人で食べるか。」

「はああ可愛い可愛いよおおおおおおおおおおおおお!!!」

「うわっ。」

「ぬ。」

 なんかよくわからないが鶴田さんが俺たちに抱き着いてきた。何がうれしいのだろうか?もしやこの人ボッチ?俺男なのでかわいいとか言われてもあんまりうれしくないんですけど。…などと思いながら迫りくる退院の日が少々、いや大分、長引けばいいなと思ってしまっていた。

いつ投稿するのがいいか見るために一基に出してますがそのうち収まる予定です。

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