04 能力向上
なんかよくわからない理由で強くなると決めてから、30日が過ぎた。
それまで何をやってたかって?そんなの、レミアの言うがままに戦っていたに決まっている。
レミアが回復特化の戦い方を教えてくれたといっても、そう簡単に習得できなかった。
まず魔法を使うのも初めてだったし、そう簡単に使いこなせるわけがないのだ。
しかし、魔法は使えずにいるが、この1か月である程度は戦えるようになった。
基本の戦い方は、人間のフォルムに竜の爪、通称”竜爪鋼刃を使い敵を断滅するというものだ。爪が竜のように鋭くなり、刀のような役目を果たすというもの。
当然俺にこのようなネーミングセンスはなく、名前を付けたのはレミアだ。
これは竜種特有の個人別能力、竜能支配に属する技のようで、他にも竜の鱗で身を守る鋼鉄鱗や、体全体を竜種の格好に戻す竜体などが使える。
しかし、竜種特有の能力だけでこの洞窟の中にいる無駄に強力な魔物を倒すことは困難だ。
レミアも、
「もっと能力を獲得しないとだめよ!武力だって全然上がってないんだから!」
と言っている。
そんな訳で、ただいまダークスネイクと戦闘中。
紫と黄色のボディでいかにも禍々しい見た目、そして何より、ヘビにしては大きな体。しかもその体からは考えられないほど素早いのだ。
剣はないので、竜爪鋼刃を駆使して攻撃をしようとする。
しかし、敵だって生きているのである。当然攻撃されそうになったら、相手だって素早い動きを駆使して攻撃してくる。
けれど、相手は巨大。いくら素早くても隠れることはできない。それに締め付けと噛みつくしかできないようだ。
つまり、その2つの攻撃に当たらなければ俺は余裕に倒すことができるということ。
少し焦っていたが、何とか余裕を取り戻し正面から対峙しあう。
ダークスネイクの締め付けを何とかかわし、竜爪鋼刃で敵の首を切ろうとした。
「これで終わりだ!」
確実に相手の首を爪が直撃。
切った。
俺はそう思い、勝利を確信していたーーー
が、しかし、
「ベルム!切れてない!逃げて!」
そう、鱗が固すぎて爪では切れなかったのだ。
自分の武器で最大の切れ味を誇る竜爪鋼刃(これしか武器がないんだけど)で切れない!?
一体どうすれば...、
するとその時、
ーーブワァァーー
ダークスネイクが、ポイズンブレスを放ってきた。
毒の息を吐き相手を毒状態にして殺す、何とも在り来たりだが恐ろしい能力だ。
そして、ポイズンブレスが俺のことを襲う。
周囲が毒の霧に囲まれ身動きが取れなくなると同時に、頭がくらくらしてきた。
自分の爪では攻撃ができない。この状況をどうやって切り抜ければいいんだ...?
「ベルム、自分の回復魔法で毒を無効にするのよ!竜種は魔法を無詠唱で発動できるし。」
突如、魔物から離れて俺に指揮を出していたレミアが言った。
「魔法で毒を無効にするって言ってもっ!どうすれば!」
「そんなの簡単よ!自分の細胞が治っていくのをイメージすればいいの!!」
自分の細胞が...治っていく様子?
そうか。イメージだ。
例えば、剣士になるのだってイメージは大切なこと。自分が将来どのような剣士になりたいのかを想像しなければ、剣の腕だって上がることはないのだ。
畜生、なんですぐにわからなかったんだ?もう少し早く気づいていれば、もっと簡単に強くなれたはずなのに。
「ていうか、レミアはそれをもっと早く言ってくれよ!」
レミアは何故か、大切なことを言うのが遅いのだ。
魔力感知を伝授させてもらったときもそうだ。
俺を馬鹿にして楽しみたいのだろうか。少しムカつく。
そして俺は、自分の細胞が治っていく様子を想像する。
すると突如、体に水が染み渡るような感覚に襲われた。
毒で腐り始めていた体が、元に戻り始めたのだ。
それもすさまじい勢いで。
どうやら、これが回復特化の竜の力らしい。回復するのと同時に体の魔素も減っていくが、魔素の回復量のほうが上回っている。つまり、ポイズンブレスは俺にいくら使い続けても、効果なしということだ。
何ともまぁチートがかった能力だ事。
すると、
何やら自分の中に言葉が響いた。
(おーい!つながった?聞こえるなら、思考通話で返事してー?)
それは、はっきりとしたレミアの声。
これは一体どういうことだ?
俺は戸惑いながらも、レミアに思考通話?とやらを実行する。
(聞こえる。けれどなぜおまえの声が聞こえるんだ?)
(ふっふっふ。それはだね、私があなたとの魂回路を築き上げたからなのだよ。
一度あなたの魂に入った時、私の魂のかけらを預けたことで、どんなに遠くにいても思考で通話ができるようになったのさ!)
なんか博士みたいに偉そうな解説をレミアがしている。
魂回路?よくわからないが、思考で話ができるようになったらしい。
レミアが俺に入っていた時とは違い、自分が相手に伝えたいこと以外は伝わらないようだし...。
これって、すごくいかせる使い道があるんじゃね!?
俺は早速今の状況をレミアに説明し、対処法を聞くことにした。ポイズンブレスの霧でレミアに俺の様子は見えないだろうしな。
当然、自分たちの場所がバレない様に思考通話で。
(毒は回復の魔法で何とか防げた。けれど、攻撃する手段がないっ!どうすればいいんだ。)
(魔法が使えたのね!だったら簡単よ。魔力感知で敵の場所を探りながら、私が前に言った細胞崩壊をお見舞いするのよ!ほら、細胞に回復魔法を一定量以上注ぎ込んで細胞を崩壊させる奴!)
なるほど!そうすれば良いのか!って、そう簡単にできるのか!?
でも確かに、細胞を破壊してしまえば固い固くないは関係なく砕ける。それが細胞のない鉄ならばともかく、相手は生き物。鱗にだって細胞はあるし、何とかなるだろう。
(やってやるよ!)
そう意気込み、魔力感知にて位置が分かったダークスネイクに向かい爪を向ける。
肝心なのはイメージだ。
細胞は回復するときに分裂する。その分裂を刺激して早くするのが回復魔法なのだ。それは、超回復に変わったところで同じはず。
ならば分裂に使う回復エネルギーを、細胞が耐えられない量にすればよいのだ。するとエネルギーが細胞から溢れ出し、細胞は一瞬にて消滅する。
そのことに意識を集中させ、爪に強大な回復魔法を注ぎ込む。
すると爪は緑に輝き、オーラを放ちだした。
ダークスネイクの攻撃をよけ、隙を詰めながらチャンスをうかがう。
「いまだ、超回復細胞崩壊!」
攻撃が鱗へ当たった途端、溶けるように消えていった。
そのまま肉体へと爪刃が当たり、魔物は首から真っ二つに分かれる。
それと同時に、敵の魔力が自分へと入って来た。どうやら、相手の魔素をもらうことができたようだ。
ダークスネイクはというと、首は岩の上に落ち、尾は少し暴れた後ぐったりと横になった。
倒したのだ。
俺は安心したからか、体が足から崩れ落ちる。
そのまま大の字に寝そべり、ホッと一息ついた。
まぁ岩だから、畳と違って固いんだけどね。
するといきなりレミアが、
「なぁに~?今の超必殺技みたいな技名。超回復細胞崩壊ってw」
と言った。
ん?超必殺技?
あぁぁぁぁっ、なんだよその名前ぇぇぇ。
しまった。なんか勢い良くてつい言っちゃったけど...
めっちゃ恥ずかしい!!
俺は顔と耳を赤く染め、その場にうずくまる。
でも超回復細胞崩壊って意外にかっこよくない?
なんか案外気に入ってしまったんだが。
「べっ別にいいだろ?案外かっこいいし...」
「......まぁ確かに、案外センスがある名前よね。いいんじゃない?」
あれ?なんか、認めてもらえた。知恵之主に認めてもらえたの、普通にうれしいんだけど。
まぁいいや。
すると、頭の中に違和感が生じる。
何だ?毒無効?
「なぁレミア、毒無効って、毒が聞かなくなる能力か?」
「そうよ。よくわかったわね。多分ポイズンブレスを浴び続けたから、耐性が付いたのよ。これであなたは、自分の回復スピードが追い付かない毒攻撃を受けても効果がないわ。」
自分の回復が追い付かない毒攻撃も俺には効果がない...って、結構強くない?
RPGとかではよくあったけど、この世界でも効果を無くす系の能力があるなんて。
ほかにも、電気とか炎とかの耐性が欲しいよな。
じゃ、ジャンジャン敵を殺してジャンジャン能力を獲得するぞ!!
...。「じゃ」、結構多いな。
そう意気込むと、レミア先生の鬼畜指導の下、訓練を再開したのである。
♦♦♦
自分の属性は回復特化魔法と援護に適したもの。しかしその魔法系統を覚えてからはほぼ無双状態だ。
ボクサーラビットの攻撃を食らい物理攻撃無効、
サンダーバードの電気を受け雷電無効、
エスパースケルトンの精神攻撃に耐え精神攻撃耐性をゲット。
さらには、ファイアゴーレムとアクアファントムを倒し手に入れた炎攻撃無効と水攻撃無効が、水炎無効へと統合進化。
その後、レミアから瞬時上速という、脳も体も全体的にスピードが上昇する能力を教わり、運動神経・脳内速度ともにほかの人の5倍以上へとなった。
そしてまた彷徨い続けること2か月、間にも植物操作という能力を覚え、遂に地上への門を見つけたのである。
「転生・能力向上 編」
は、終わりです。ある程度の能力を付けるだけだったので、
案外早く終わりましたね。次話からは、
「亜人国家の内乱 編」
です!!
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追記:なんか全く同じ内容が2度繰り返されていました。
普通にミスです。すいません。