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今、ここから。

作者: 青岩 縁

胸の奥にあるのは大きな恐怖。

その一歩外側には

ごまかせない不安。

なのに気がつけば

自分の顔には笑顔が浮かび、

恐れではない熱い何かに

胸の鼓動は高鳴っていた。


震えるような衝動が

背中に灼熱の日輪を描き、

抑えきれない予感が

両の足を地に繋ぐ鎖を

海の彼方へと弾き飛ばす。

頬をつたい落ちた、ひとつの雫。

五つの戒めに抗い掲げた、約束の拳。

砂浜に描いた宝島の地図と

他の誰も手にできない秘密の、

在り処を示すバツ印。


風が告げる、この日のために

お前は生きてきたのだろう?、と。

月が笑う、死神はいつも

お前の足元にいるぞ?、と。

でもそんなもの、もうこの耳には届かない。

胸の底の底から湧き上がる叫びが、

全てをかき消して突き抜けていったから。

この喉が張り裂けるほど、

青空に向けて声を放った。

雲を貫いてどこまでも、

どこまでも登っていくまっすぐな声を。


今、ここから、全てが始まるーーと。

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