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生真面目キンと能天気ハク

 アオとサクラが姿を見せない。

ヘラヘラしているハクに、イライラしてしまう

キンなのでした。


♯♯ 天竜中央放映局 ♯♯


「あ♪ アサギ王様♪」

アサギと同年代の男が駆けて来た。

「あっ! 王太子様!?」


「先程の放送について聞きたいのだ。

 輝竜の代表として二人にも来て貰った」


「先程……? あっ、天界ツアーの人界風ハロウィン祭ですねっ?

 日程決定ですか?♪」


「いや。そうではなく、その話は未だ内々で進めていただけの話なのだ。

 あのポスターと音声は何処から届いたのだ?」


「え? あのお声はアサギ様なのでは?

 何処からって……おい! 今朝の箱は!?」

スタッフ達が駆けて行く。


「届いたのは今朝なのだな?」


「はい。それで急遽、特番を差し込んだんです」


「箱には何が入っていたのだ?」


「ポスターと音声板3つ、あと手紙が入っていたと思います」

「箱! ありました!」


「キン、調べてくれるか?」「はい」


 キンは箱を受け取り、残存している気を探り始めた。

ハクは送り状を見ている。


「音声板と手紙は?」


「こちらです!」

箱を持って来たスタッフが少し震えながら、小型の千里眼と共に差し出した。


「アサギ様、手紙を見せてください」

ハクが覗き込んだ。

「やっぱり女性の字だな……送り状と同じだ」


「ハクが言うのなら間違いなさそうだな」


「信じて頂けるなんて嬉しいぜっ♪」


「ハク、王太子として適切な言葉を使うように」

キンが睨んでいる。

「ハクならば女性の文字を多く見ているであろう、というだけだ」


「そこだけなんですかぁ?」


「ひとつでも確かなものを持っているのは誇れる事だよ」

アサギが表情を緩め、そして再び引き締めた。

「私の字を真似ているようだな」


「はい。角ばらせていますが、それがムリしてるって言ってるみたいで、あっちこっちチョコッと丸みが見えるでしょ?」

ハクが言いながら指していく。


「どうしてわざわざ宅配にしたのだろう……?」


「城からですと、通常、使いの者が届ける筈。

 女性が届けても不自然ではない、という事ですよね?」


「そうなのだ」

「単純に顔を見られたくなかった、とか?」


「そのように単純なのはハクだけであろう」


「兄貴ぃ、なんか今日は、俺にイライラぶつけてねぇかぁ?」


「そのような――」

「内容を聞かないか?」

睨み合う兄弟の肩をポンポンッとして、アサギが千里眼に『1』と書かれた音声板を差し込んだ。


『アサギ=セム=シャルディドラグーナだ。

 この度、多数の投書に応え、王子達の音楽活動を天界でも行う事が決定した。

 同時に、人界に於けるハロウィン祭の反響も大きかった為、本年は特例として時期を遅らせての開催とする事も決定した。

 日程は追って連絡するが、当月中の同時開催を予定している。

 日数的な猶予が無い為、急ぎ周知の為の放映を願う。

 直接依頼すべき所、このような形にしか出来ず、誠に申し訳ないが、どうか宜しく頼む』


「2と3は放映用のもので、2が長く、3は要点のみの短いものです。

 先程流したのは2です」


「キン、ライブは可能か?」


「アオとサクラが……」


「そうだったな。

 しかし開催する他は無いだろう。

 1と手紙は預かってもよいか?」


「はい!」


「では、城に戻ろう」


「あのっ! 放映は続けても……?」尻すぼみ。


「キン?」


「あ、はい。

 この状況で覆すなど出来ませんので、ツアーは開催せねばなりません。

 続けてください」


「なぁ、兄貴、アカの所に行かねぇか?」


「どうしたのだ?」


「アサギ様モドキの声、気になるんだよ」


「ふむ。アサギ様、寄り道しても構いませんか?」


「構わないよ」

キンとハクを握手させ、それを両手で覆った。

「行こう」


「はい」曲空。




♯♯ 天竜王城 ♯♯


「ギン、やはり天界全ての国にポスターが届いていたよ。

 昨夜から今朝にかけて届いたらしい。

 問い合わせる度に、日程決定か、と聞かれてしまったよ」


「そうか。……アオは何をしているのだろうな」


「アオが来れない事も含めて、全てが繋がっている、と?

 ギンも勘が鋭いから、思い当たる事は全て話してくれよ?」


「城中を探って、怪しげな気を発している者を3人見つけたんだ。

 それに、この部屋だけでなく城のあちこちに妙な物が置かれてあった。

 虹紲執務室に有った物をミモザさんに見せたら壁耳の集音側だと言っていた。

 何処かで放音側から聞いているのだと」


「この部屋に有った物は?」


「虹紲執務室で、紙を捲って、書き込む音だけを流して貰っている。

 他の物は、そのままにしている」


「泳がすんだね?」


「そうだ。

 キチッと尻尾を掴まないとな」




♯♯ 赤虎工房 ♯♯


「アカ、これを解析できねぇか?」

『1』の音声板を手渡した。


 アカは無言で音声板を握り締めると、目を閉じた。




 アサギとキンは離れて話し始めた。


「それで、箱からは何か判ったのか?」


「女性が複数関わっており、確かに城から発送されております。

 それと、十九社長の気を微かに感じました。

 妖狐王国に届いたポスターからも感じたので、ポスターに関わっているのではないかと考えます」


「しかし、その社長は天界や魔界に発送など出来ないのでは?」


「その点が腑に落ちず、これ迄は黙っておったのです」


「アサギ王様! 兄貴!

 解析できたそうだっ!」



「アカ、どうだ?」


「かなり巧妙だが、複数の者の声を合わせて作っているのは明らかだ。

 アサギ様の御声が最も多く使われている。

 あとは――」

千里眼に小さな竜宝を取り付け、音声板を差し込んだ。


「おそらくは会議や儀式等の記録音声から、単音を取り出して集め、滑らかに繋がるように、余韻として声を重ねている」


 画面上の音の帯にアカが指を当て、帯から断片を切り離し、抜き出している


「しかも重ねている声は女性のものだ。

 それを、ゆっくりと再生している」

2本の指で帯をキュッと縮め、再生した。


女性の声が流れる。


「早口言葉みてぇだなっ♪」


「この声……」


「アサギ様、お心当たりがお有りですか?」


「名は知らぬが、私の執務室を掃除してくれる女中のものに似ているな」


「では、次は城ですね?」


「そうだな。ギンの執務室に戻ろう」


「アカ、ありがとなっ」


「そうだ。アカ、アオとサクラの様子は見えるのか?」


「いや。見えぬ所に居る。

 行って確かめる」


「行けるのか?」


「俺は行ける」曲空。



「私達は行けぬ、という事か……」


「兄貴? やっぱ今日は変だぞ?」


「キン、落ち込む必要など無いぞ。

 各々に得手不得手が有る。それだけだ。

 ハクは少しくらい落ち込んでもよさそうだがな」

アサギは笑って王太子達と肩を組んだ。

「城に連れて行ってくれるか?」




♯♯ 静寂の祠 ♯♯


「アカ兄だ~♪」


「どうしたんだい?」


「二人は、天界、魔界での輝竜の活動について、何処まで知っている?」


「大量の投書が届いたから、人界風ハロウィン祭でライブしようか、と昨夕、父上の執務室で話したけど?」

「魔竜王国の意見箱は壊れちゃったのぉ」


「ふむ」


「あとは珊瑚殿から妖狐王国でもライブできないか、とは聞かれたよ」


「そうか。

 先程、アサギ様とキン兄とハク兄が工房に来た。

 音声板の解析依頼だったのだが、その内容は、人界風ハロウィン祭と天界ツアー決定を周知させる為の放映を依頼するものだった」


「「えっ!?」」


「そこで神眼で調べると、天界、魔界の全ての国にライブ開催のポスターが届いており、三界ツアーをせざるを得ない状況になっていた」


「それって、けっこう長期の足止めだよねぇ」


「かなり頭が痛いね」


「二人は、ここで何をしている?」


「うん……きちんと話していなかったね。

 俺達の拾知が覚醒間近らしいんだ。

 それで今は拾知だけでなく、神眼も神耳も使えなくて、この祠で気を鎮めていないといけないんだよ」


「そうか。

 輝竜の事と重なったのは偶然なのだな?」


「そう思いたいね。

 きっとそうだと――いや。拾知が働いてしまいそうだから、考えないでおくよ」


「ふむ。だから昨夜も二人抜きだったのだな?」


「そぉなの~」

「かなり遠かったから大変だったよね?

 任せきりで、すまない」


「いや。かなり鍛えられた。

 得るものが多かったと感謝している」




♯♯ 天竜王城 ♯♯


「では、その3人の追跡に私も加えてください」

ギンから話を聞いたキンが身を乗り出した。


「そうか。では、清掃の女中を頼む」握手。

「彼女だ」「はい」神眼発動。


「父上、俺もいいか?」


「ハクも見えるのか?」


「双璧は何でもアリだっ♪」


「ならば、調理の女中を頼む」握手。

「見えるか?」「おう♪」兄貴を双璧♪


「ハク、クロの方は?」


「今日は休みにした。

 神様探しでヘロヘロなんだよ」


「では、フジも空いているのか?」


「洞窟で原稿書きするとか言ってたぞ」


「それも急ぎだったな」


「なぁ兄貴、話してくれねぇのか?」


「……アオの足元にも及ばない、そう痛感しただけだ」


「アオは伝説の神様らしいからなっ♪

 及ばなくてトーゼンなんだろうよ♪」


「ハクは……いや、慰めてくれたのは感謝する」


「言いかけて止めるなよぉ」


「今は真面目に追跡しろ」


「終わったら飲もうなっ♪」


「飲みたいだけなのだな?」


「そんなんじゃねぇからぁ」


「そうか……ありがとう」


「おう♪」




♯♯ ゴルチルの家 ♯♯


【父様と母様の部屋は、こちらでよろしいですか?

 内装はご希望に添いますよ】


【このままが良いわ♪】

【落ち着いた感じが好ましいね】


【ランメルは、この隣と、私の隣、どちらが良いかな?】


【どちらでもいいけど、兄様の隣にしようかな】


【ランメルは相変わらずルバイルと一緒が良いのね】うふふっ♪


【兄様は僕の目標ですから】にっこり。


【ユークレ!】


【あ、姉さん……無事だったんだね!♪】


【ユークレこそ!】抱きついた。

【あ……奥様って、メレーンだったの?

 どうしてユークレなんかと?】


【なんかとって、酷いなぁ】


【何処かの部屋で、落ち着いて話しませんか?】


【そうだよね。

 僕の部屋が見たいから、そこでどうかな?】


【ランメルの部屋に行きましょ♪】





 キン達が赤虎工房を訪れる少し前――


黒「なぁアカ――」


赤「何しに来た? 休んでおけ」


黒「アカもンなコト言うのか?

  フジから試作の昇華颯竜丸っての貰って

  やっと体力戻ったから修行しようとしたら、

  ハク兄に今日は休みだって言われたんだよ。

  しかも、あのハク兄が、忙しいから

  もう話しかけるな、なんて言うんだよ。

  だからアオに相談しようとしたら、

  話せねぇんだ。何か知らねぇか?」


赤「キン兄とハク兄は、王太子として

  王と共に行動している。

  アオとサクラは神界で修行中のようだ。

  どちらも詳しい事は知らぬ。

  クロの神眼は俺より遥かに強いのだ。

  己で確かめろ」


黒「う……確かにそうだよな。

  アオとサクラは心配いらねぇんだよな?」


赤「要らぬ」


黒「なぁアカ、なんでオレだけ寝込んじまった

  んだろうな?」


赤「供与は本来、天性が生み出した力を

  他者に与える力だ。

  しかしクロの供与は、押し出す力が、

  生み出す力を超えているのだ」


黒「……サッパ分かんねぇ」


赤「与える為に生み出す力が不足し、

  己の力までも供与しているのだ」


黒「どう鍛えたら足りるようになるんだ?」


赤「供与を持たぬ俺に聞くな」


黒「そうだったな。

  何でも知ってるって思っちまってた♪」


赤「アオとサクラの修行が終わったならば

  聞けばいい」


黒「そうだなっ♪ ありがとな、アカ♪」


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