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たっぷり疲れて清々しい夜明け

 アオ・ルリ・サクラが普段やっている事を、

大勢がかりで必死なのに、なかなか届かない

――のではなく、あまりの遠さにアオ達でも

手が出せなかったのを、初めてなのに

挑戦しているんです。


♯♯ 魔神界 ♯♯


(何か見えたっ!)


【よしっ! 流石クロだっ!

 示してくれ! 真っ直ぐ向かうぞ!】


「「「「「はい!♪」」」」」


(およ?)


(姫、どーした?)


(複数……見えぬか?)


(あ……見えた! 1人じゃねぇぞ!♪)


【勿論、全て回収だ! 行けっ!!】


「「「「「はい!!」」」」」




♯♯ 白百合神殿 ♯♯


【あら、お父様、どうなさったの?】


【ん?】


【穏やかな気なんて……幼い頃に見たきりよ?】


【やめた】


【はい?】


【アオに無理強いするのは、やめたのだ】


【そう】にっこり解除。


【アオは私なんぞが強いずとも、いずれ最高神と成る。そういう奴だ。

 今は嫌だと言うのなら見守るのみだ】


【そうね。

 アオは、私達の大切な娘達を預けられる唯一の子孫ですもの】


【そうだったな。

 アオは孫娘達を幸せにすると約束してくれたのだったな】


【あの子達、もうアオが好きになっているのよ】


【話せるのか?】


【伝わってくるの。

 私達の娘に戻る前に、アオとルリの娘になりたいそうよ】


【しかし卵に戻るには千年は――無理を承知で時短しようが、術を用いようが、少なくとも数百年必要ではないか】


【アオとルリなら解決するでしょうよ。

 娘達も強いわ。

 自力で卵に戻るのかも知れないわね】ふふっ♪


【まさか……】


【それよりも、絆神しなくていいの?】


【行ったらプラチナの雷を浴びそうだ】


【今のお父様の気を見れば、そんな事なんて出来ないわよ。

 一緒に行きましょ】手を取り移動。



――魔神界。


 現れたゴルチルとセレンテを見たプラチナが微笑んだ。

【あなた♪ セレンテ♪

 もうすぐ叔父(ユークレ)様に掌握()が届くわ♪

 早くなさってね♪】


父娘、大急ぎでキンに重なり、掌握を伸ばした。


(スッゲー!♪

 掌握がムチャクチャ速くなったぞ!♪)


(クロ、喜んでばかりはいられねぇぞ。

 まだ遠いのにキツいんだからな。

 アカ、届くのか!?)


(ハク兄は?)


(俺は双璧だからな。

 アカがダメなら俺もダメだっ)


(姫、供与もっとだ!)(あいなっ!)


【キンも供与に】(はい。ゴルチル様)


【コバルト、闇障をもっと上げろ!

 引き寄せるのだ!】


【ムチャ言うなよ、オッサン。

 イッパイイッパイなんだよっ!】




♯♯ 静寂の祠 ♯♯


(ドルマイ様、カルサイ様は?)


【この眠りを破ってしまうなんて、流石アオね。

 カルサイもコバルト達の方に行ったわ】


(そうですか。

 ルリが……来ていたのですね)


【私は会っていないけれど、気配が残っているわね。

 心配して来たのでしょうね】


きゅる。


(あ、キュルリも来ていたの?)


【とぉさま~♪ かぁさまは?】


(うん、見つけたよ。

 魔神界で笛を吹いているよ)


【かぁさまに おやすみなさいしたの~♪

 とぉさまに おはよござぃますなの~♪】


(そうだね。おはよう、キュルリ)


【とぉさま♪ ふえ♪】


(サクラが起きてからね。待っていてね)


【サクラ~♪ おはよなの~♪】ゆさゆさ。


(まだ夜明け前だからね。

 キュルリも一緒に寝ようね)


【いっしょ~♪】アオとサクラの間に潜った。




♯♯ 魔神界 ♯♯


【あと少しなのにっ!】


【だから闇障で引き寄せろ!】ぐぬぬ――。


【オッサンがっ、やれよなっ!】くっ――。


【そうだわ、あなた!

 アオとサクラは念網を投げていたわ!】


【フローラ、ありがとなっ!

 投網だ! アカ!】


 アカが気を振り絞り、咆哮を上げる。


 神眼の限界で留まり、気を送るだけとなっている者達にとっては、遥か彼方で念網が金紅に煌めき、大きく広がった。


手を握るように、漂っていた全てを包み込む。


【【アカ! よくやった!】】


 極限に達しているアカを金虎が支え、念網を手繰り寄せる。

【此を引き出す迄、気を保て! 赤虎!】


(はい! 大師匠様!)


【ここからは私も引きますね】

真っ先に合流できたルバイルが念網と掌握を包む。


【俺も掴んだからなっ!】

闇障が出口へと引き寄せる。


皆の気が次々と重なり、引く力が増していく。


【一気に引けっ!!】


【「はい!!」】一斉!


浄化薬を散布し、先導するフジが、

(具現環殿、皆様の内に颯竜丸をお願い致します!)

淡藤に輝く気を昇竜の如く立ち昇らせて、直接届けと颯竜波を放った。


(よっしゃあ!! 供与、上げるぞっ!!)

(いざ参らん!! クロと共にじゃっ!!)

クロと姫の供与が念網を後押しした。

それと同時に、皆の全ての力を押し上げた。



♯♯♯



【出口だっ!♪】


 巨大な念網がスポンッ――と現れ、皆がバタバタと倒れ込んだ。


ルリが空かさず回復の光で包み、重ねていく。


その光の大球の中で、フジが颯竜霧を放った。


ルリが再び回復を奏で始めると、音が重なった。


振り返るとアオとサクラが微笑み、奏でていた。


【かぁさま~♪ おはよなの~♪】ぴとっ♪


ルリがキュルリを掌握で撫で、アオと微笑み合う。


並んで回復の光を放ちつつ、笛の音を響かせる。


魔神界の地平線から神が作った陽が顔を出した。



 朝陽に照らされる疲れきった顔達の清々しさを見てドルマイが微笑み、回復の大球に手を添えて優しい光を放った。

【念網を解かないといけないわね】


(俺達、ソレしていいの?)


【拾知を閉じるように意識していてね。

 何を見ても探ろうとしないこと。

 いいわね?】


(((はい!)))


【演奏は匠神を呼んだわ。

 念網を出してくださるかしら?】


奏者の匠神達が現れ、回復の曲を引き継いだ。


アオ達は大球から念網を引き出すと、それを解いた。


(神様いっぱ~い♪)

(石も水晶も沢山だね)

(これは……竜卵か?)


【探らないの!】


(あっ……)(は~い)(すみません)


アオ達は光球で寝台を作り、神を横たえていった。


ルバイルが喜びを煌めかせて飛んで来た。

【父様! 母様!】

アオが横たえたばかりの男神と、ルリが運んでいる女神を二人ごと包み、抱きしめた。

【ご無事で……良かった……】



【こんなお父様、初めてだわ……いつもは感情を見せないから……】


(ドルマイ様、この水晶、ルバイル様に似てるの。

 でも……今は渡せないでしょ?)

サクラがルバイルを見て、瞳を潤ませている。


【確かに……似ているし、渡せないわね】


(探れないから、お願いします)


【そうね。確かめるわ】


(この卵も……ちょっと似てる?)


【神竜の卵……未熟卵ね。

 お父様より、この水晶に似ているわね】


(うん。親子かも~。

 それとね集縮の小壺♪

 プラチナ様っぽいかなぁ?)


【そうとしか思えないわね。

 サクラ、探らなくても分かるの?】


(一生懸命、閉じてるのぉ)


【サクラ、もう離れなさい。

 拾知が閉じきれていないわ。

 アオとルリも。

 ここは私に任せて、気を落ち着けてなさい】


【今、覚醒が起こったら俺達の苦労が水の泡だろ。行くぞ!】

コバルトに掴まれた。



――静寂の祠。


【ここで気を鎮めていろ】


「始祖様は?」「だいじょぶなの?」


【見張ってなくても、お前らなら理解できてるだろうし、言われた事くらい守れるだろ?】


「「はい」」


【俺はユークレ様を回復させる。

 それが最優先だからな。

 水晶と卵の中も確かめてやる。

 だからここで大人しくしていろ】


「撮影は?」「行ってもいいのぉ?」


【あああっ! くそっ!

 それが有ったよなぁ。ったく!

 って事は、兄弟皆かぁ……仕方ないな。

 大至急、子孫共を回復させる!

 現場で集合だっ!】消えた。



「神眼も神耳もダメ?」「だろうね」


「なかなかに厄介だな」「「だね」ぇ」


【とぉさま♪ かぁさま♪ サクラ♪】


「キュルリ、どしたの?」


【あっちの おうちで あそぼ~♪】


「そうだね。行こう」「遊ぼ~ねっ♪」


【うんっ♪】


「あ……」「どうした?」「精霊王様に鏡――」


「それならば昨夜、私が受け取り、アンズに託している。

 今頃、ミモザと共に掛けているだろう」


「やっぱりルリには敵わないよ」


「私はアオの一部だからな。

 言っておくが――」

キュルリを抱いたまま固まったサクラに視線を向けた。


そして額を突っつく。

「育ての母の実力は、嫌と言う程に知っているだろう?

 私ひとりだけで、アオの内は満員御礼だ。

 だからサクラの入る余地など皆無だ。

 サクラはサクラだ。アオではない。

 私が夫として愛せるのはアオだけだからな」


「ルリ姉……」


「仮に、サクラを分けた事でアオの力が半減したとしても、私が入ったのだから、既に補って余り有る状態だ。

 妙な考えを起こすな。

 勝手に不安がるな。

 育ての親をナメるなよ?」


 視線で射貫いた後、フッと笑ってサクラを抱きしめ、頭を撫でた。


「優しく育ってくれたのは嬉しいが、サクラを愛してくれた虹藍様が悲しむような事なんぞ、二度と考えるな。

 サクラはアオではない。

 ひとりの男なのだからな」


「……うん」




【とぉさま、サクラ ないてるよ?】

ルリとサクラに挟まれていたキュルリが、アオの胸に飛んで来た。


「サクラも俺とルリの息子だからね」なでなで。


【おとーとでしょ?】


「そうだけどね、俺達が育てたんだ。

 だからキュルリの兄なんだよ」


【サクラ……おにぃちゃま♪】


「そうだよ」


【でも、ないてるよ? かぁさまも……】


「うん。ちょっとね、悩んでいたんだ」


【ふぅん……?】


「やっぱり俺は、ルリには敵わないよ」


【かぁさま、つよい? イチバン?】


「最強だね」


【かぁさま、つよい♪ イッチバ~ン♪】

きゃっ♪ きゃっ♪ きゅるる~♪ 


「アオ! 何を教え込んでいるのだっ!」


【かぁさま♪ イチバンつよいの~♪】


「アオ!!」


「待って! 誤解だからっ!」


【とぉさまも がんばって~♪】


「自分で最強証明するつもりなのかっ!?」


「誤解と言うなら反撃せよ!」


「無理だからっ!」


サクラとキュルリの笑い声が祠に響いた。





杏「お姉様、いらっしゃらないわね?」


ミ「そうね。休むと仰っていたのに……」


杏「天性を使ってはいけない、って

  何かの修行なのかしらね?」


ミ「分からないけど、私達一緒に、って事は、

  修行には違いないわよね」


杏「でも……ジルコンが使いたがるの」


ミ「ジルコンもなのね?

  ヒヤシンも使おうとしているのよ」


杏「双子って、連動するのね♪」


ミ「そうみたいね。

  最近、片言が聞こえるのよ。

  アンズも聞こえない?」


杏「可愛い声が聞こえるわよ♪

  お兄様を『おとちゃま』って呼ぶの♪」


ミ「私達も、お姉様も『おかちゃま』でしょ?」


杏「うん♪ そうなの♪ 可愛いの~♪」


ミ「可愛くて仕方ないくらいよね♪

  あ……鏡は、これで全部ね」


杏「あとは、この地図の場所に繋ぐのね?」


ミ「お姉様から説明を受けたのは

  アンズでしょ?」


杏「そうだけどぉ」


ミ「ジルコンとヒヤシンが聞いているわ。

  しっかりしなきゃダメでしょ?」


杏「そうね。私も『母』なんだから

  頑張らなきゃいけないわね!」


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