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サクラの本心

 アオは、また悩んでいるようです。


♯♯ 静寂の祠 ♯♯


【で、どうしたんだ?】


「前々から気になっていたんですけど――」


「あれれ? アオ兄だ~♪ 始祖様も♪」


【「サクラ……」】


「アオ兄どぉしたのぉ?」


「サクラこそだよ。

 何方かと約束しているの?」


「してないよ~。

 でも、ここ来たらご先祖様いるかな~って♪」


【サクラも悩みか?】


「うん……ちょっとね~」


「なら、サクラが先に相談したらいいよ。

 俺は他にもしないといけない事が有るから帰るね」


「でも……やっぱりアオ兄も……聞いてほしいの~」


「そう? 無理していない?」


「たぶんアオ兄も おんなじじゃないかなぁ?

 そんな感じなの……」


「うん。そうかもね。

 サクラ、いいから話してみて」


「ん……とね、俺の寝言と、拾知が……なんだか変なのぉ」


「同じだね。

 拾知に関しては天界では調べようもありません。

 ですので教えて頂きたいのが、ひとつなんです。

 それに絡んで、サクラの寝言と、結界で気になる事が有るんです」


「アオ兄、ちゃんと言葉にできるんだ~♪

 俺、なんか変で、もやもやだったのぉ」


【アオ、もう少し具体的に話してくれ】


「拾知は、これまで勝手に入ってきていたんですよ。

 自分の推測と判別できないくらいに。

 それが上手くいかなくなった、と言うか、掴み辛くなっていて、何か行動を起こすとか、きっかけが必要になってしまったんですよ。

 アオバさんの事も、そんな感じだったんです」


「そぉなのぉ。

 なんか、よいしょって越えないと拾えないのぉ。

 でね、その変な感じのが始まってから、寝言と寝曲空がヒドくなっちゃったのぉ」


「アンズも同じなんです。

 まるで連動しているみたいで。

 今は結界から出られませんが、いずれ出てしまいそうな勢いなんですよ。

 ルリとも毎日その話ばかりなんですけど、手掛かりも何も拾えないんです」


【そうか……ふむ。

 拾知は器の大きさだけでない限界が有るんだ。

 その限界は己の能力を高めれば押し上げられるんだよ。

 つまり、他人をどんどん超えていけば拾える力が強まるんだ】


「うにゃ?

 修行で自分と闘うんじゃなくて、他人を超えるの?」


【そうだ。

 拾知は己より能力が高い者が封じた事は拾えないんだよ。

 お前ら、最近そういうのばかり挑んでるんだろ?

 で、悩んでるから寝言が増えたんじゃないのか?

 アンズは半分繋がってるんだから連動だろ。

 ともかくだ。ここからは爺様の出番だな。

 俺なんかじゃ何も助けてやれん。

 呼んでやるから待ってろ】

コバルトは二人の頭をぽふぽふとして祠の外に出て行った。



「まだまだ伸びるってコト?」


「そうみたいだね。

 俺達は、やっぱりまだまだなんだよ」


「でも、目標できたねっ♪

 また新しい修行できるねっ♪」


「そうだね。

 クロ用の供与杖が出来る迄に伸ばそう」


「うんっ♪ いっしょにねっ♪」


「もちろんだよ」




♯♯ アオの屋敷 ♯♯


(お姉様、ずっとお兄様を目で追ってるわ♪)

(とても可愛い表情よね♪)

(アカ様なお姉様、格好いいわね~♪)

(それを見て赤くなってるお姉様も可愛いわ)

(お兄様にも見せてあげた~い♪)

(そうね。きっと大喜びよ♪)


 ミモザとアンズはシノビマンを見ながら、ずっと話していた。




♯♯ 静寂の祠 ♯♯


 コバルトが外で待っていると、ルバイルが現れ、微笑んだ。


【爺様、アオとサクラが拾知を覚醒させそうなんだよ。

 既にカナリ揺らいでるらしいんだ。

 あの二人の拾知を導けるのなんて、爺様にしか出来ないから助けて欲しいんだ】


【もう、そんなに高めたのですね。

 きちんと開いて1年も経っていないのに、流石、青身神達ですね】


【それ言うと、またアオがヒネクレるから、禁句だからなっ】


【解っておりますよ】ふふふ♪


【笛コンにも模範演奏なら出るって言わせたんだから、拗らせないでくれよ】


【はい。やはりコバルトが言うのが一番だったでしょう?

 父で、兄で、絆神。

 コバルトに対するアオの信頼は大きいですね】


【騙したなんてバレたらソッコー木っ端微塵だよ】


【それは予定変更、それで徹しますよ】

楽し気に笑いながらルバイルは祠に向かった。



♯♯♯



「あ♪ ルバイル様~♪」

「お呼び立てしてしまい、すみません」


【いえいえ、お気になさらず。

 少し伺ってもよろしいですか?】


「「はい! 何でも!」」


【何を探ろうとした時に、し辛いのですか?

 特に、これ、という何かが有りますか?】


「んとねぇ……結界? 境界?

 近寄ると何か拾いそぉになるの。

 でも拾えないのぉ」


「今日も、あの見えない境界に近付いたとたんに拾知が調子悪くて、軽い目眩のような感じだったんです」


「うん。ふわふわしてた~」


「意識して拾知を閉じると収まりましたけど」


「おんなじ~」


【あの境界は、超越者の結界なのです。

 コバルトなら、よく知っていますよね?】


【まぁな。磔にされたからな】


「磔って……」「なにしたのぉ?」


【千年くらい、そのままでしたか?】


【たぶん、そんなもんだったな】「ほえ~」


【あの呪の鎖のせいだよ。

 身体を切り離したら、爆睡護竜が着れなくなったからな。

 鎖がお祭り騒ぎだったんだ。

 それなりに力が有ったから悪戯なんてもんじゃない。

 子孫を殺し兼ねないって、オッサンに無理矢理な】


【大神ですのでね。大変だったのです】


【でも、お陰で楽になれたんだ。

 だから自分の力も、どうにか封じられたんだ。

 あの境界には物凄く強い浄化が、たぶんオマケなんだろうが、込められているんだ】


「オマケ?」


【境界を作った超越者とやらが、強い浄化の力を持っていて、意図せず入り込んでしまった、と感じたんだよ。

 だから本気で浄化を込めてくれてりゃあ、あの鎖なんか、すっかり消えたんだろうな】


【おそらく、そういう目的で成した結界ではないのですよ】


【ああ、おそらくな。

 あれは地上界が灼熱だった太古に成したんだよ。熱を封じる為にな。

 しかも超越者は二人なんだ。

 熱を遮断した者と、その後、域境界として強化した者だ。

 浄化は前者の力だと――待てよ。

 あの気……あの感じ……アオの中に封じられた時と似ている……いや、同じとしか思えない!】


「始祖様、地上界が灼熱だった頃って、億年単位で昔ですよね?

 三界には生命が誕生していない大昔ですよね?

 流石にそれは、俺である筈がありませんよ」


「アオ兄が青身神様だった頃なんじゃないの?」


「サクラまで……」


「だってそぉでしょ?

 拾知は自分のコト拾うの苦手でしょ?

 アオ兄と俺は、互いのコトも拾いにくいでしょ?

 俺ね、ずっと思ってたんだ。

 境界ぜ~んぶアオ兄の匂いするの」


「サクラ、いくら何でも――」


【いや。サクラの言う通りだろうよ。

 それで全てが納得できる。

 今のアオじゃないが、大神を超える存在な青身神(アオ)が、三界の境界を全て成したんだよ。

 そこに結界を重ねた歴史は有る。

 しかし全て、元が有ったからこそ出来んだ】


【今のアオを超えるアオが成した結界ですから、今のアオとサクラでは拾えない。

 コバルト、そういう事なのですね?】


【その通りだ!

 だから爺様、頼む!】


【そうですね。

 揺らぎの時を短くし、覚醒への道を示します】


「えっ? 覚醒ですか?」「またぁ?」


【そうです。

 今は二人の拾知が大きな力の影響を受けて、覚醒しようと道を求め、揺らいでいるのです。

 ですので使い難いのです。

 頻繁に境界を越えているので、影響を受け続け、積み重なった結果なのでしょう。

 このままでも、いずれは自然と覚醒するのでしょうが、不自由な状態は嫌でしょう?


 拾知は道を見つければ、自ずと覚醒へと向かいます。

 ですので、近道を示すのです。

 それだけですので、ひとりずつ魔法円に入ってくださいね】




♯♯ アオの屋敷 ♯♯


 シノビマンを見終え、また話に戻っていた。


「アオバ叔父様が奪われた荷物の中身って、何でしたの?」


「ルリちゃんが初めて焼いてくれた菓子だよ。

 俺にとっちゃあ宝物だったんだがなぁ。

 魔物も食いたかったのかなぁ」


「宝物だなんて大袈裟な……いつでも焼きますよ」


「そうか。本当に生きてて良かったよなぁ」


「明日の朝には普通に食事できますから、焼いておきますね」


「お姉様、私にも教えてください」

「私にも♪」

ルリと微笑み合いながら娘達は部屋を出た。


【生きていてくださって、本当に良かったです】




♯♯ 静寂の祠 ♯♯


「ルバイル様、覚醒って、いつ起こるの?」


【二人の状態ですと、2日から5日の間といったところでしょうか。

 明日の夜、もう一度、確かめますね】


「周りのヒト、ビックリしちゃう?」


【前兆は感じられると思いますよ。

 ですので、こちらに隠れてくださいね】


「は~い♪」


【おい、アオ。黙り込んだが、どうした?】

「アオ兄だいじょぶ?」

【もう覚醒ですか?】


「あ……いえ、考えていただけですよ」


【何を? 気になる事は全部言っておけよ】


「はい。ありがとうございます。

 何か……やっぱり拾えそうで拾えないんです。

 精霊王様方は俺の竜体を見て納得していたんですよ。

 でも話せない、と。

 アカは竜宝の(コランダ)村で、鏡に込められた青身神様のお姿を見て、俺そっくりだけど俺より歳上だと言ったんです」


【だから再誕なんだろ?】


「再誕って、成人した時に記憶が戻るんですよね?

 神竜様の場合、何か特別な事をするんですか?」


【お前ら王族の宣詞と全く同じだ。

 神竜の力を解放するんだからな】


「その宣詞で前生の記憶も解放されるんですよね?」


【そうだな。

 しかしそれは神竜の場合だ。

 前にも言ったと思うが、青身神は神竜ではないんだ。

 他域(よそ)の奴なんだよ。きっとな。

 だから違うんだろうよ】


【アオ、覚醒すれば拾えるのかもしれませんから、あまり無理をしてはなりませんよ。

 今は、その事からは離れて、覚醒を待っては如何でしょう?】


【大きく開くには無理は禁物。

 だったよな? 爺様】


【そうなのです。

 ですので、ゆったりと過ごしてくださいね】


「はい。ありがとうございました」


【サクラは、こちらで休んでください。

 状態を見ますので】


「寝言……聞いちゃうのぉ?」


【既に毎日聞こえておりますよ。

 私も絆神ですので】


「やぁん」もじっ。


【意味が有る筈ですので、恥ずかしがらなくていいのですよ。

 アンズにはセレンテを付けます。

 アオは休んでくださいね】


「はい。失礼致します」曲空。



【コバルト、付いてあげてください】


【そうだな。サクラを頼む】消えた。



「ルバイル様、ずっと見てるのぉ?」


【はい。気にしないでくださいね】


「俺、寝られるかなぁ」

掛布を出して、すっぽり くるまった。





【サクラ? 静かですが考え事ですか?】


「ルバイル様、俺……違うと思うんだ」


【何が、ですか?】


「……俺は青身神じゃない」


【どうして?

 今はサクラの方が大きな力を持っておりますよ?】


「でも、俺は違うんだ。

 アオ兄とルリ姉は青身神なんだよ。

 俺だけ……違うんだ」


【それが大きな不安になっているのですね?】


「たぶんね。

 ……俺はアオ兄と離れたくないから。

 俺はアオ兄の『おこぼれ』だから」


【ガーネは、ひとつの魂を分けたのですよ?

 ですからアオとサクラは等しいのですよ】


「でもね、アオ兄が本体なの。

 だから俺は弟神様じゃないの。

 兄神様の一部なの。


 闇護竜とも話したんだ。

 そしたら、弟神様よりも兄神様だって、闇護竜も言ったんだよ」


【いずれにせよ、今はサクラなのです。

 サクラはサクラなのですよ。

 そちらの方向に悩んではなりません。

 アオが悲しみますよ?】


「俺ね……小さい頃、外に出る為にアンズになったんだ。

 すっごく嫌だったけど、乗り越えたんだよ。

 それね……『サクラ』を捨ててもいいって思えたからなんだ。

『アンズ』として生きて、アオ兄の妃になれば離れなくていいって思ったからなんだ。


 もっと言っちゃうとね、俺、アオ兄に還りたいんだ。

 共心してるルリ姉、羨ましくて仕方ないの。

 出来ればもっとアオ兄の中に入り込みたいんだ」


【サクラ、それ以上は駄目ですよ!】


「俺の分……アオ兄が弱くなってると思うから。

 俺が還れば、アオ兄は兄神様に戻れるんだ。

 ちゃんと青身神様に戻れるんだ……」


【サクラ!? おやめなさい!】


「や~ん」


【え?】


「まだ食べるのぉ」


【まさか……寝言だったのですか?】


「苺いろいろねっ♪ いっぱいねっ♪」


 寝言……しかし、あれが本心なのですね。





凜「アカ~♪」


赤「来るな」フンッ。


凜「何作ってるの?」


赤「供与杖」ボソッ。


凜「ベリー♪」


 アカはチラリと睨んで曲空した。



凜「あ♪ 幽月さ~ん♪」


幽「おや、こんばんは」


凜「コランダ村に行った後、匠神殿にも

  行ってたんですか?」


幽「ええ。あちらこちらと見学してね。

  赤虎は何処でも歓迎されていたのだよ」


凜「その話、詳しくお願いします♪」


幽「匠神殿では、最高匠神様にお会いして

  匠の丘をご案内頂いたのさ」


凜「匠の丘?」


幽「修行中の匠神様や神竜達が大勢

  暮らしている所なのだよ」


凜「長老の山みたいですね♪」


幽「だから案内されたのだよ。

  私は細工の匠村、アカは鍛冶の匠村にね」


凜「そこからは別行動なんですね?」


幽「そうなのだよ」くすくす♪


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