騒がしい女神様?
やっと見つけた、って誰を?
【ああ、来れた来れた♪ やっと来れたよぉ。
ああっ! 居た居た♪ やっぱり居た♪】
音色が止まり、皆の注目を集めているにも拘わらず、黄金光を纏う神竜の魂らしき女性は、全く意にも留めず、真っ直ぐ飛んだ。
なんか……ルリに似ているような……
あっ! あの御方は――
【急に消えるなんて酷いじゃないかぁ、ゴルチル様ぁ】
【何故ここに来れた!?
いや、それより、修行の身でありながら出て来るなど以ての外だ!
今直ぐ戻れ!!
さもないと追放だ!!】
【そんな、酷いじゃないかよっ!
理由も言わず突然消えちまったら、追って当然だろ!?
アタシだって必死で来たんだ!
そんな言い方は無いだろっ!?】
語気を荒らげるゴルチルと女神モドキを神達は騒めきながら、精霊達は怯えながら見詰めていた。
アオはルリを探したが見当たらず――
(あれ? 戻っていたんだ)
(今は会いたくはない。
そもそも何故――)【ルリ、どうします?】
(お父さんまでも?)【隠れさせてください】
(あ、ヒスイも?)【うん。苦手なんだ】
(会ったのかい?)【神界でね】
【大神の行動に、とやかく言うなっ!!】
【指導の途中で消えるんじゃないよ!!】
【ゴルチル様、とにかく外に――】
カルサイが止めに入る。が――
【ああっ!♪ アオバさんじゃないかっ!♪
無事だったんだねぇ、良かったねぇ】
今度はアオバに飛んで寄って、手を取り、涙(――は、流れてはいないが)に咽ぶ。
「ヒマワリさんも、、神様なのか?」
驚きと戸惑いで複雑な苦笑を浮かべならがも、動けないのでアオバは返事をした。
【まだなんだけどねぇ、ルリを護る為に、アタシも神に成ると決めたんだよぉ】
「ハルヒさんは? 無事なのか?」
【ハルヒはアタシの、ここに居るよ】
胸元をポンポンと叩く。
【アタシを神にするのに力になってくれたんだよぉ】
「そうか……ハルヒさんらしいよな」
【そうだろ? いい旦那なんだよぉ】
「そうだな――」【あっ! スミレちゃん♪】
【えっ!? あっ! いえっ!】大慌てだ。
【スミレちゃ~ん♪】抱きしめっ♡
(なんで逃げなかったんだろう?)
【好奇心か、ボーッとしていただけだよ】
【音楽で気持ち良くなって寝ていたのでは?】
【そうかもですね】
(スミレもヒマワリ様を知っているの?)
【うん。
『ベニ姉~♪』って抱き付かれたんだって。
僕は『アオイさん♪』って抱き付かれたよ】
【うっ……すみません、ヒスイ様】
【なんだか、すみません。
相変わらずな母で】
(お父さんもお母さんも謝らなくてもいいのよ)
(とにかく連れ出すよ。
このままになんて、しておけないからね。
気付かれないようにしてくださいね)
アオはヒマワリの傍に曲空した。
騒めきが大きくなる。
「ヒマワリ様、お目にかかれまして光栄至極に御座います。
シロの孫、第三王子のアオと申します。
外でお話し致したく、参りました」
【アンタがルリの旦那だねっ♪
そうかいそうかい、アタシも話したかったんだよぉ。
喜んで付いて行くよ♪】
大喜びだが、スミレは放さない。
「ゴルチル様も、いいですね?
皆様、お騒がせ致しまして申し訳ございません。
兄弟が曲を続けますので、お楽しみください」
アオはヒマワリを連れて曲空した。
ゴルチルが、その気を追う。
カルサイとコバルトも追った。
――少し離れた、木々に囲まれた場所に出た。
「ゴルチル様、ご説明頂けますか?」
【ふむ……アオはヒマワリを知っていたのか?】
「つい最近、王族復籍の手続きをしましたので、肖像画は見ましたよ」
【復籍だって!? アタシゃ嫌だよぉ】
「ルリを王族として登録する為です」
【それなら仕方ないねぇ。
それでルリは?】
「元気です。アオイ様もユリ様もお元気ですよ。
ですが、ヒマワリ様が神と成られる迄は、皆様、お会い出来ないのです。
そうでしたよね? ゴルチル様」
【その通りだ】アオ、よくぞ言ってくれた!
【そうかい……だったら頑張るしかないねぇ】
「ヒマワリ様が神と成られる迄は、俺が命を懸けてルリを護ります。
どうかそれで御了承頂けませんか?」
【そうかい……早く神に成らなきゃあ先には進めないんだねぇ。
ルリの事、頼んだよ!】バシッ!
(ゴルチル様!
『手加減』も教えてくださいねっ!)
「お任せください」乱暴な掌握だよなぁ。
【ゴルチル様、ちゃ~んと責任とって神にしておくれよねぇ、いいかい?】
(どうしてヒマワリ様の方が、上からなんですか?)
【それはだな……後だ】アオにだけ。
【ゴルチル様? 聞いてるのかぃ?】
【当然だ。神界に戻るぞ】
【ちゃんと約束しておくれよぉ。
ルリの家族をみ~んな死なせたんだからねっ!
ルリも、護りにすら行けずに死なせたんだからねっ!】
(アメシス様、今は――)
思わず声を上げようとしたアメシスをアオが引き留めた。
「事情は、よく解りました。
ですが、ルリは生きています。
死なせない為に、お早く神にお成りください」
【そうだねぇ。アンタ、王子にしとくには勿体無い、いい男だねぇ。
ルリ、聞いてるんだろ?
アタシが神に成るまで、旦那に任せるからねっ!
死ぬんじゃないよっ!
アオイさんもユリも聞いてるんだろ?
ルリを護っておくれよ!
スミレちゃんも、頼んだよ】ぽんぽん。
ヒマワリの腕の中でグッタリなスミレが顔を上げた。
【はい……】
【ところで、ベニ姉は?】
【神に成ったならば教えてやる。
いい加減、戻るぞ】
痺れを切らしたゴルチルがヒマワリを掴んで消えた。スミレも一緒に。
「始祖様、何かご存知なんですか?」
【いや……まぁ、子孫だからな】
「カルサイ様も?」
【護れなかったのは、皆、同じですので】
「それで、天竜を神にしようと?」
【……そういう事です】
【あの怒涛の口に押しきられたんだよっ!】
「どうしてハルヒさんでなく、ヒマワリ様なんですか?
ハルヒさんなら四半神竜なんですよね?」
【ハルヒは……ヒマワリの力と成ったのです。
自ら永久共心をして……】
「そんな……どうしてそこまで……」
アオの心の中では、ルリとユリが抱き合って泣いていた。
アメシスが二人を包むように抱いた。
【ですが、ハルヒは消えてはおりません。
ルリも、共心しても話せるようになったのではありませんか?
ハルヒも、どうやらそうらしいのです。
ヒマワリと話しているようなのです】
「それでも!
永久共心なんて、四半神竜に出来る術技ではありませんよね?
大神様が外からなさったんですよね?」
【私がしたのだ。
カルサイとコバルトを責めるな】
ゴルチルが戻っていた。
「やはりゴルチル様でしたか」
【そんな目で睨むな。
ハルヒが望んだのだ。
嫌がるヒマワリを説得し、私の所に連れて来たのだ。
カルサイに断られたと言ってな】
水晶を差し出した。
【ハルヒの言葉だ】
水晶から柔らかな緋光が、ふわりと立ち昇り、男性の姿になった。
(おじいちゃん……)
『ルリ、早くに死んでしまって、護れなくなってしまって、すまないね。
でも、これからも護れる道を見つけたんだよ。
四半神竜として生まれた事を隠して生きていたけれど、今やっと、それを喜べる時が来たんだ。
だから私は、その道を迷わずに進むよ。
これからも護るからね。
ユリ、アオイ君。
私がヒマワリと共に戻るまで、どうかルリを護っておくれ。
ヒマワリを受け入れてやっておくれ。
ああ見えて可愛い所もあるんだよ。
今、私には一片の後悔も無いんだ。
とても晴れやかな気持ちなんだよ。
誰にも無理強いなんてされていないんだ。
道も私が見つけたんだよ。
ヒマワリが来てしまったら実行しようと決めていたんだ。
だから悲しまないでおくれ。
消えて無くなりはしないのだからね
また会えるからね……』
言葉が終わり、微笑むハルヒが揺らめき、薄れて消えた。
(私なんかを護る為に……)
【それは則ち、三界を護る事だ。
だから死ぬな。
原神に成る事を拒むな。
二人共、原神に成っておけ】
「どさくさに紛れて、押し付けないでください」
【気付いたか。しかし私は諦めぬぞ】
「俺も受けませんからね」
睨み合うゴルチルとアオを、コバルトとカルサイが引き離した。
【そろそろ戻りませんか?
精霊王様がご心配なさりますよ?】
【オッサンも、いい加減にしろよな。
アオには成らない理由が有るんだよ】
【判ったのか?】
【判るかよっ】
【見つけろ】
【爺様やアオを超える拾知の神を連れて来やがれっ!】
【ふむ……精霊王達ならば何か知っておるのやも知れぬな】
「どういう事ですか?」
【彼奴等は億年単位で王座に就くそうだ。
子供の如き成りだが、竜の神より遥かに長く生きておるのだ。
ま、すんなりとは話さぬであろう。
このまま交流を深めてくれ】
「と、仰られて従うのは不本意ですので、好きにさせて頂きます」
アオが洞窟に戻ると――
(アオ兄♪ おっかえり~♪)
兄弟が輝竜していた。
(サクラ、こんなに複製を出して大丈夫かい?)
(ぜ~んぜん へ~き♪)
サクラの複製達が演奏していて、兄弟が『お祭り騒ごう!』を歌い踊っている。
もちろんアオ役もサクラの複製で、音響も照明もサクラの複製達だ。
(場が凍っちゃったから、試しに輝竜してみたの~♪)
匠神達も、精霊達も、思い思いに踊っている。
踊っていない者達も皆、笑顔で身体を揺らし、手拍子している。
(アオ兄も早く~♪)(うん。そうだね)
装美の壺を使って衣装を纏い、間奏で飛び込み、サクラの複製とハイタッチ。
(サクラ、ありがと)(うんっ♪)
笑顔で踊り始めた。
♯♯ 真神界 白百合神殿 ♯♯
神殿の入口で、まだスミレはヒマワリに掴まれていた。
【スミレちゃんも神様なんだろ?
指導しておくれよぉ】
【まだ成ったばかりで、指導なんてまだまだ無理なんです!
気を高め、研ぎ澄ませるのは、ひとりでするしかないんです!
早く神に成りたければ真剣に修行してください!】
セレンテに仕えている女神達が何事かと飛んで来た。
【この方をお願いします!】
女神達が止まり、引き攣った表情を見せた後、散り散りに逃げてしまった。
【ええっ!? 逃げないでよぉ】
【あら、スミレ様】
【あ♪ ロズオラ様♪
この方のご指導をお願い致します!】
【私なんて、成ったばかりですよ?】
【でも、大神様ですのでっ!】
【では、一緒に修行しましょう】
【ありがとうございます!♪
ヒマワリ様、大神様のご指導を受けてくださいねっ!】
【大神様?】
【凄い神様ですよ!】やっと振り解けた。
【では、ロズオラ様、宜しくお願い致します!
ヒマワリ様、頑張ってくださいねっ!】
スミレは後退って距離を取り、消えた。
【でも、各々が集中するだけですけどね】
【お手本が見えるのが大事なんだよ♪
早く神に成りたいから頼むよっ♪】
凜「それで、シノビマンの撮影の方は?」
白「あれからは順調だ」
藤「もうすぐ終わりますよね♪」
黒「終わったら修行に集中だっ!」
藤「クロ兄様は結納なのでは?」
黒「あ……そうだった」
藤「忘れていたのですか?」
黒「修行に集中してたからなっ♪」
藤「祝言までに、どう公表するのかを
考えなければならないのでは?」
黒「ぉうっ……」
白「クロにはムリっぽいよなっ♪」
黒「ならハク兄! アイデアくれよっ!」
白「いやぁ……ムリだ♪」
凜「アオが何やら考えてたわよ♪」
黒「ホントかっ!?♪」
凜「クロの為ってより、みんなの為にね♪
でも、それもクロが仕上がってからとか
言ってたわよ♪」
黒「そっか! オレは修行に集中するっ!
ハク兄、フジ、頼むっ!」
白「風穴に戻ろうぜ♪」
藤「参りましょう」手繋ぎ曲空。
凜「次は、どっち行こうかな~♪」