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アオバさんを探そう

 本筋の方は、数日経過しました。


 シノビマンの撮影と、地下魔界の結界と、禍石の分別をひたすら続ける日々が過ぎていた。


 久し振りの休日の朝、屋敷で過ごしていたアオが、植えたばかりの2本の苗木が育っていくのを見ていると妻達が横に並んだ。


「あの物語の真似か?」


「最後のシーンで窓から見えていたからね。

 瑠璃杏と普通のミモザだよ。

 だから春に揃って咲くよ」


「お兄様♪ 今日はのんびりなさるの?」


「いや。行きたい所があるんだよ」


「休め」「やっぱりね~」「一緒に♪」


「ルリも協力してよ。というか、ルリが協力してくれないと無理なんだ」


「「私達は?」」


「うん。お願いね」にっこり。


「また何か探すのか? 異空間か?」


「たぶん天界。なんだけど、とても探し難い場所だと思うんだ」


【アオ、アメシス兄様をお連れしたわ♪】


「ヒスイも来てくれたんだ。お願いね。

 ありがとう、スミレ。もういいよ」


【私も行くのっ!】「邪魔はしないでね」

【どうしてそうなのよっ!】「当然だろ」


兄様(アオ)、それで、何をするの?】


「うん。アオバさんを探そうと思うんだ」


【「えっ!?」】

「アオバさんって、あの?」

「アメシスお父様を保護してくださった?」


「そう。

 最初にミモザ物語を読んだ時に、何か引っ掛かって、ずっと気になっていたんだけど、どうにも分からなくて何度も読み返していたんだ。

 さっきも読み返していて、何か沿った行動をすれば判りそうな気がして木を植えたんだ。

 そうしたら、やっと判ったんだよ。

 しかも早く探さないといけないみたいなんだ」


【アオ様、では伯父は本当に生きている、と?】


「はい。そう感じるんです。

 でも……とても弱くて、消えてしまいそうなんですよ。

 ですので、全力で探って、ヒントでも何でも掴んだら曲空したいんです」


【急ぎ、お願い致します!】


「はい。アメシス様、ヒスイ、俺の中に。

 ルリも戻って。

 ミモザ、アンズ、手を」


【私は!?】「入りたければどうぞ、伯母上」

【その呼び方はやめて!】「置いて行くよ?」

【もうっ! イジワルなんだからぁ】「何?」

【何でもないわよっ!】「なら、早くしてよ」


(ルリ、共心お願い)(ふむ。いつでもだ)


アオの心の中、アメシスの目の前で、アオはルリを取り込んだ。


【それが……共心……】


(はい)(お父さん、私は大丈夫よ)


【とてもとても強い信頼……なのですね】


((はい))


【……そうですか】ふふっ♪


(アメシス様、アオバさんを思い浮かべて頂けますか?)


【はい】目を閉じ、紫光を纏った。


アオはアメシスの記憶に集中し、気を高めた。


ミモザとアンズがアオの手に気を込める。

ヒスイが内から支えるように気を合わせ、スミレも同様に気を高めていった。


アオと共に在るルリの気とアメシスの気が共鳴するように脈動し始める。


アオは神眼と掌握を極大発動し、アオバの気を探した。


その間にも、皆の気が高まっていく。


輝きの塊となったアオが、その全てを翼に集め、大きく広げると、

(行きます!)

微かな命の灯に向かって曲空した。



――暗く、湿り気のある場所に出た。


 神眼で確かめると、広い場所だが、岩に囲まれており、全てが水を纏い、天井からは絶えず滴り落ちている。


数歩先には、平たい岩に雲草を敷き詰めたベッドに男が横たわっているのが見えた。


【あ……あなた方は?】


その、岩のベッドの向こうで、仄かに光る精霊が身を屈めて震えていた。


「突然すみません。

 俺達はアオバさんを探して参りました。

 俺は天竜のアオ。

 この二人は妻のミモザとアンズです」


【この人……アオバ?】

精霊が発している光を強めた。

洞窟の内部が肉眼でも見えるようになり、横たわる男の姿も明瞭になった。


(アメシス様、お確かめ頂けますか?)


【はい】アオから出た。


「アオバさんの甥のアオイさんです。

 如何ですか?」


アメシスは男の顔を覆う髪と髭を整え、全身を浄化した。

【アオバ伯父さん……良かった……】


【神様……? アオバ、人なのに?】


【卵だった私を保護してくださった大恩人なのです。

 お助けくださり、ありがとうございます】


【私……交替しただけ……拾ったの、ルクス。

 ルクス、呼ぶ】

精霊が光を洞窟の奥に放った。

【少し待ってて。ルクス、すぐ来る。

 アオバ、死にそう。神様、助けて】


アメシスと精霊が話している間に、アオ達は全力で治癒を当てていた。


(アメシス様、フジを!)【はい!】


アメシスが消え、精霊が驚いた一瞬後に、フジを伴って戻った。


(フジ、薬をお願い。

 アメシス様の恩人なんだ)(はい!)


ヒスイがサクラを連れて来た。

サクラは何も聞かずに加わった。


(アオ兄、笛も吹く?)(そうだね)

各々、複製に笛を吹かせ、反響しないよう、光の牆壁で囲んだ。


牆壁の光が洞窟内を照らす。


精霊が3人、急いで飛んで来た。

【もしや……青身神様……?】


精霊達は顔を見合せ、頷くと、ひとりが踵を返した。


【ルクス、この人、アオバ。

 神様、助けに来た。もう大丈夫】


【良かった……】


【とても美しい音色ね……】


【ライト、暢気。でも、音達も呼ぶ?】


【喜びそうね。呼ぶわ♪】飛んで行った。


――が、

【あっ! リヒト王様、こちらです】

奥から戻って来て、身を低くした。


そして精霊達に囲まれたリヒト王が現れた。

ルクス達も身を低くする。


【やはりアオ様とサクラ様でしたか】


【ご存知なのですか?】


【何度もお救いくださっているのです。

 ルクス、咎めたりなど致しません。

 説明してくださいますか?】


【はい。

 私は、三界域が危険と知りつつも、どうしても見てみたくて、245年前、音達に頼み、連れて来て頂いたのです。

 そして、黒き者達に追われ、音達とは逸れてしまいました。

 逃げているうちに出会った、この方にお助け頂いたのですが、この方を追って来た黒き者達にも囲まれ、私を庇い戦う内、怪我を負い、谷底に落ちてしまったのです。

 黒き者達は、この方の持ち物を奪い、去って行きました。

 私は、この方の命を保ちつつ、救援を求める光を放ち続け、気付いた音達と共に、この洞窟までは運んだのです。

 ですが……】


【三界域の方々とは接してはならない、と私が言った為に、三界域の方には連絡できず、勝手に来てしまった為に、精霊域にも報告できずに、隠したままになってしまったのですね?】


【はい……申し訳ございません】


【リヒト王様、あちらを】


【終わったようですね】


 笛の音は続いているが、アオ達は嬉しそうに手を取り合い、アオバがアオイの方を向き、微笑んでいた。


 アオが、その輪から離れ、出した複製の姿を変えて、輪の方へと背を押した。

そして、アオだけが精霊達の方に来た。


「またお会い叶いまして恐悦至極で御座います。リヒト王様」


【また笛の音が聞けて、嬉しく思います。

 アオ様、あの方はお知り合いなのですか?】


「はい。お守り頂き、心より感謝致します。

 妻の大伯父なのです」


【そうでしたか。

 ルクス、お礼申し上げたいのでしょう?

 もう三界域も以前程、危険ではありません。

 アオ様が変えたのです。

 近いうちに、全面的に交流が叶うでしょう。

 その魁とお成りなさい】


【ありがとうございます!】

ルクス達がアオバの方に飛んで行った。


【ルクスの話は聞こえておりましたか?】


「はい。妻にも聞こえていた筈です。

 リヒト王様、この場所は天界の端。

 とても不安定な場所ですが、大丈夫なのですか?」


【ええ。境界の近くですね。

 身体を持つ方には不安定でしょうが、私共にとりましては何ともない場所ですよ。

 ご心配くださり、ありがとうございます】


「そうですか。良う御座いました」


【おいっ! リヒト!

 また勝手に――よぉ♪ アオ♪】


「ユルヌ王様もお元気そうで何よりです」


【笛なら笛と言って行けよなぁ】


「でしたら、この場を整えますね」


【また兄弟を集めてくれるのか?♪】


「では、集めます」(兄貴達、呼んだ~♪)


【クレフ呼ばないと拗ねるな】消えた。


「準備しますので、お待ちください」




 洞窟内に牆壁のドームを作り、精霊達が犇めく中で兄弟は七色の笛を奏でた。


 準備をしている間に兄弟の婚約者達も揃っており、ユリもアオバの傍に姿を見せていた。

絆神、先祖神達も揃っており、匠神達も次々と増えていた。


(始祖様も吹こ~♪)

(匠神様もお願いします)

(ルリ姉、ミモザ、アンズ、いっしょねっ♪)

(音は示します。何方でもご参加ください)

(楽器なんでも~♪ 歌もねっ♪)


頭上に楽譜が広がった。

青い音符がキラキラと『今』を示す。


【アオ、この楽譜は?】

コバルトが不思議そうに仰ぎ見ながら、吹き始めた。


(瑠璃花乱舞です♪)(その名は使うな!)


(じゃあ副旋律、桜花乱舞♪)

桜色の音符が重なり、煌めく。


 様々な楽器が笛の音に重なった。

そこに音の精霊達の美しい声が重なる。

光の精霊達は楽譜に近寄り、しげしげと見詰める者も、煌めきの流れを追って飛ぶ者も皆、満面の笑顔だった。




「アオイ君、ユリさん。

 俺だけが生きてしまったんだな……護れず……申し訳ない」


 アオバは起き上がれてはいないが、意識は確かで、すぐ傍に居るアオイとユリにだけ聞こえるように小声で話し掛けた。


【アオバ伯父さん、私達は生きているのです。

 身体を失いはしましたが、私もユリもルリも、しっかり生きているのです。

 私には弟と妹が居る事も知りました。

 全ては、アオバ伯父さんが保護してくださったからこそなのです】

アオイはヒスイとスミレに視線を向けた。


「ああ、同じ顔だ。弟かぁ。

 そうか……妹って、王妃様か……って!

 王妃様はお亡くなりになったよなっ!?」


【弟も妹も、私と同じで身体を失っただけなのです。生きているのですよ】


「そうか……生きている、か……」


【ご覧ください。ルリの幸せそうな笑顔を。

 ルリは素晴らしい方と結婚出来ました。

 私達には娘が増え、息子も出来ました。

 とても幸せに暮らしているのです。

 伯父さんも早く元気になってください。

 山の皆様もお元気ですので】


「そうか……皆、元気なんだな……」


【元気になったら、お連れしますよ】


「そうだな。早く元気にならないとな。

 アオイ君は……神様なのか?」


【父が神竜だったそうです。

 弟も妹も神に成りました】


「本当の母親は……その……ベニ女王様なのか?」


【そう、らしいのですが……私にとって母はエリカ、父はヒイロですので……】


「そうか……本当なら王子様なのにな……」


【伯父さんに拾って頂けたからこそ、今の幸せがあるのです。

 王子なんて私には……王族として登録はされましたが、そういう関わり方は全く望みません。

 神として、もっと修行して、この国の守護神に成れたら、とは夢見ています】


「立派な夢だな……神様に成れるだけはあるんだな。

 女王様も軍の長として何度かお目にかかったが、遠目にも立派な御方だったよ。

 本当のご両親には会えたのか?」


【いいえ。もっともっと修行しなければ、入れない場所でお暮らしのようなのです。

 命をお与えくださったお礼は伝えたいので、いずれは会いに行くつもりなのですが、神に成ったばかりの私には遠い道程です。

 その両親だけでなく、両親にも、ユリの両親にも未だ会えていないのです。

 ですが、必ず会えると信じております】


【やっと見つけたよ!】


【「え?」】





黒「おい、凜。日がブッ飛んだぞ?」

白「ハロウィンライブ、書いてねぇだろ」

藤「ライブ、と言うよりハロウィン丸ごと

  書かれておりませんよ?」


黒「だよな」

白「オマケはアオが一晩で読んだって

  設定だったろ?」


凜「みんなは何してたの?♪」


白黒「誤魔化すなっ!」


凜「設定って何よぉ。

  アオが読んだ夜の事を確かに書いたわよ。

  それが何?」


白「ハロウィンは? どーすんだよ?」


凜「考えてるわよ~♪

  ハクじゃないんだから~♪」


白「そうかよっ!」


凜「で、サクラに呼び出されるまで

  みんなは何してたの?」


黒「修行だよ。オレはハク兄に、姫はフジに

  見てもらってるんだ」


凜「キン様とアカは?」


白「俺の王太子の仕事を、執務はアオ、

  他は兄貴がやってくれてるんだ。

  今はクロを仕上げるのが最優先だからな」


藤「ですのでアカ兄様は、クロ兄様用の竜宝を

  急いでいるのです」


凜「全てはクロなのねぇ。

  ハクの勉強は?」


白「してるよ。トーゼンだろ」

黒「オレも一緒に習ってるんだっ♪」


藤「大変なのはキン兄様とアオ兄様とサクラ

  なのですよ」


白黒「バラすなよなぁ」


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