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『ミモザ色の風』12

 やっと想いが通じた二人ですが――


「ブルーってば!」


「……うん。大丈夫だよ」


「どうしたの?」


「ちょっと……見つけてしまって……」


「……何を?」


「とても困った現実、って所かな?」


「もうっ、ちゃんと言ってよっ」


「言い辛いんだけど……」


「このまま封じられてもいいの?」


「……確かに、そうだね。

 うん。白状するよ。

 さっきからずっと既視感(デジャヴ)が纏わり着いていたんだ。

 封じられている『もうひとり』に対する記憶の中で、きっと俺は、その女性にも同じような約束をしていると感じるんだ」


「なぁんだ。そんな事」


「そんな事って……」


「だって、王族って昔からお妃様をたくさん連れてたんでしょ?

 1人なんてカワイイものでしょ?」


「王族って、とんでもなく誤解されているんだね」


「違うの? でもいいわ、そんな事。

 他のもっと恐ろしい事いっぱい想像したのよ?

 泣きそうなくらい怖かったんだからねっ」


「もっと恐ろしい事って?」


「死んじゃうんじゃないか、とか」


「うん」


「魔物になっちゃうんじゃないか、とか」


「うん」


「私を憎むように変えられちゃうんじゃないか――」


「まだあるの?」


「女の子になっちゃったらどうしよう、とか」


「友達になろうか?」


「もうっ!」


「嘘だよ。心配かけて、ごめんね」

抱き締めて、額をくっつけた。

「ちゃんと生きてるし、天竜の男のままだし、ミモザが大好きなままだよ」


「うん」


「でも、ミモザを忘れさせられている間に、『もうひとり』と共に生きる事を許されて、結婚してしまうかもしれないんだ。

『もうひとり』を忘れさせられている間にミモザを好きになったように」


「でも……それでも、また出会うわ。

 そしたら私とも結婚してね」


「本当に、それでいいの?」


「いいの♪

 私、そもそもブルー先生には近寄れないって思ってたのよ。

 だって同い歳の子供なのにお医者さんだなんて、ただの子供には諦めるしかない高嶺の花だわ。

 だから近くで生きていられれば満足なの♪

 凄い先生なんだから独占なんて、私が私を許せないわ。

 時々、好きって言ってもらえたら……それだけでいいの♡」


「可愛い事、言い過ぎだよ」


 額と鼻が離れた事にミモザが驚いていると、熱を帯びた赤い瞳が挑むように迫り、唇を塞がれた。




 いくら並外れて大人びていようが、二人は80歳(8人歳)の子供である。

 想いを込めた気を交わし合い、互いの存在を確かめ合えれば、それだけで満足だった。


 それでも大人に見付かれば、首根っこを掴まれて離されるのは間違いない行為だったのだが。


 ともかく、満足した二人は、身体を離し、微笑み合って手を繋いだ。


「ずっとこうしていたいけど、踏み出さないといけないよね」


「そうね。

 本当に認められて、ずっと一緒に居られるように、前に進まないといけないわね」


「必ずミモザを妃に迎えられる男になるよ」


「ブルー王子と堂々と並べる女性になるわ」


「「たとえ全てを封じられてしまっても」」


微笑み合った二人は、振り返り、

「ご先祖様、証人になってくださいね!」

「どうか宜しくお願い致します!」


「あっ、ミモザも王族としてお認め頂けますよね?」


『もう認めておりますよ』


「ありがとうございます!」


『私達が覚えておきます。

 ブルー王子、ミモザと再び手を携えられるよう努めなさい。

 そうすれば、ラピスとも共に歩めます』


「あ……」「やっぱりいた♪」


「俺……やっぱり同じ事をしているんだ……」


「いいじゃない♪

 私も早くラピスさんに会ってみたい♪」


「ミモザで良かった……」


「ブルー先生♪ 大好きだから踏み出しましょ♪」


「そうだね。行こう!」


 二人は、姿を見せたリーフリィに深く礼をし、手を繋いで祠を出た。



『また、笑って封じられに行ったわね』


『そうですね。

 また心の強い相手を連れて来ましたね』


『同腹でも、あれ程に似るとはな』


『幸せになって欲しいものだな』


『掴み取りますよ。あの王子なら』


 大勢の先祖達が、楽しげに去って行く後ろ姿を見送っていた。



―・―*―・―



 二人は初めて会った時と同じように、麓の村を手を繋いで少し歩いた。


「ちゃんと解いてもらえたら、今度は一緒にお買い物しましょうね♪」


「そうだね。でも野菜は作っているんだよね?

 袋は随分小さくなるね」


「そうね♪ 壺が要らないかも♪

 ……それじゃあ、そろそろ帰るわ」


「……そうだね」


 ブルーはミモザと手を繋いだまま、最初に見送ったように、山の上空に曲空した。


「それじゃあ、ここで」


「うん。またね」


「そうだね。またね、ミモザ」


「ブルー……」


「ん?」


「大好き♡」

ミモザは、掠めるように口づけて、悪戯っぽく微笑み、曲空した。


 涙が溢れる前に――




 ブルーは動けないまま、ミモザが暮らす山を見詰めていたが、やがて意を決し、曲空した。



―◦―



 ミモザは家の前で、そんなブルーの様子を神眼で見ていた。


 ブルーが曲空して去った空を見上げ、涙は止められたと深呼吸して、家に向かった。




「お? ミモザ、遅かったな」


「今日ね、ブルー先生の特別講義があったの。

 その後で、学生が集まっちゃって質問大会になっちゃって、ずっと大勢でワイワイしてたの♪

 とっても楽しかったわ♪」


「おい、まさか――」


「何? 私は楽しく聞いてただけよ?」


「それならいい。早く食え」


「うん♪」



「ね、お父さん……」


「ん? ミモザ、何か変だぞ?」


「サルビアおばさんって、禍黒だったの?」


「ああそれか。そうだったよ。

 だが完治したんだ」


「ブルー先生と魔人の先生が竜宝薬を使って治したのよね?」


「どうしてそれを……」


「その質問大会での先生の話聞いてて、そうじゃないかな~って思ったの。

 先生は、あんな小さな頃に、その方法を見つけてたんだ、って。

 ブルー先生って、本当に凄い名医なのね♪」


「ああ、そうだな」


「私、看護師になって働いて、それから天性を活かした技師にもなって、それから医師にもなるの!

 鍛練も頑張るわ!」


「おい、やっぱり変だぞ。どうしたんだ?」


「もしも……私が……ブルー先生の事を忘れさせられてしまっても、お父さん……代わりに覚えていてね。

 ブレそうになったら、軌道修正してね」

止めたと思っていた涙が溢れた。


「解った……分かってるよ」


「お父さん!」

コルクの胸に飛び込んだ。




『コルク! 起きてるよな!?』


 扉が激しく叩かれ、父娘は弾かれるように離れた。


「オーカー!?」


バンッ!


「おい、壊す気か?」


「下の村が燃えてる!」


「何だとっ!?」


エルムも駆け込み、クラウドも飛んで来た。


「皆を集めろ! 村人を(ここ)に運ぶんだ!」


「私が曲空で運ぶわ!」


「ミモザは行くな!

 ここで怪我人を治療しろ!

 サルビアさん、クラレさん、頼む!」


「はい!」「あいよ!」


「でも! 最初だけでも!」


「ダメだっ!」


「しかし急ぐんだから最初だけ、なぁ」

「すぐ帰しゃいいだろ?」


「そうするからっ」


「本当に帰れよ。いいな?」


ミモザは頷いて外に出た。

「皆さん、指先でいいから私に触れて!」


「おいっ!」


「変な事するかよ」「バカ親父」「行くぞ」


「行きます!」曲空!




 村からは離れた場所に出たが、そこでも熱気は凄かった。


 元軍人達は炎に向かって飛んだ。


「ミモザ、早く帰れ!」


「でも、お父さん――」「帰れ!!」


「無茶しないでね!」「解ってるよ!」


 ミモザは曲空した。


 コルクは見届けてから仲間を追った。



―◦―



 ミモザが曲空した先は、村の中だった。


 村は端の方ほど激しく炎を上げており、中心部には燃えている家は無く、村人達が逃げ惑っていた。


 見上げると、炎が椀を伏せたように空を隠し、真っ赤に猛っていた。


「皆さん! 助け出すから私に触れて!」


 ミモザの声は、泣き叫んでいる人々には届いていなかった。

 已む無くミモザは竜体になり、手当たり次第、腕を掴んでは背に放り投げた。



 サルビアの気に曲空する。

「おばさん! お願い!」

叫んで人姿になり、人々を半ば落とすように降ろして、また曲空した。


「ミモザちゃん!?」「行っちゃダメだよっ!」



―◦―



 元軍人達は、燃え盛る村の手前で魔物と戦っていた。


「どんだけいるんだよっ!?」


「湧いてるのか!?」


「あそこだ! 黒いトコから出て来たぞ!」


「あれを攻撃するんだ!」



―◦―



 ミモザは4度目に村に入った時、眩暈を感じた。

膝を突いて、少し休む。

が、熱さもあって踞ってなど居られず、直ぐに立ち上がった。


 連続曲空し過ぎなの?

 でも、今は言ってられないわ!


 人が減ってきたので神眼でも探すようにし、炎の近くで倒れている人は掌握で引き寄せた。

魔物と対峙しないようにも神眼を使い、曲空を繰り返して村人達を背に乗せていった。



 そうして、10度目に村に入った時――


 ミモザと同じくらいの女の子が、後ろを振り返りつつ逃げているのが見え、続けて、その行く手に黒々とした大きな竜のような魔物が現れたのが見えた。


「こっちよ!」


 女の子に向かって叫んだが、届いてはおらず、竜の魔物は女の子に向かって飛び始めた。

ミモザは已む無く魔物の背後に曲空した。


「アンタが探してるのは私でしょっ!!」


竜の魔物が振り返り、ニヤリとする。

「ほう……複天性で神の光を纏う娘か……」


竜の魔物が手を挙げた先に黒い穴が開いた。

そこから竜ではない魔物達が溢れ出た。


その間にミモザは女の子へと曲空し、

抱いて山へと曲空しようとしていた。


しかし曲空できずに膝を突いてしまった。


 力が出ない!?


魔物達に囲まれてしまった。


「殺すな。捕らえよ」


一斉に迫る!


 ブルー! 助けて!!


女の子を庇って抱き締め、目をギュッと瞑った、その時――


極輝迅(ゴクキジン)!!」

閃光が辺りを白く変えた。


闇化包囲(アンカホウイ)! 闇神竜牙(アンジンリュウガ)!」


白い世界が真の闇に覆われ、強い闇の気が迫っているのを感じた。


「ミモザ!!」

覆い被さり、光で包み盾とした。


「させるか!! 龍神帝王め!! 光輝神雷(コウキジンライ)!!」


再び白輝の世界に変わる。


凍刃激流(トウジンゲキリュウ)!!」


熱気も消え、静寂が支配した。


「ブルー、ミモザ、無事か?」


 二人は、その低い声が誰のものなのか気付いており、バツが悪そうに顔を上げた。


「ブルー、先ずは、その二人を含め、残っている村人と山の民を山に運べ。

 医者としての責務を果たさねばならぬ」


「はい、コリョウ様」





青「ところで、そろそろ読んでもいいかな?」


ミ「いいわ♪ 夫婦になれたから♪」


青「どういう意味だよ?」


ミ「読めば分かるわ♪」


青「なら、読ませてもらうから寝てよ」


ミ「ここで? いいの?」


青「今夜はアンズは来ないよ」読み始めた。


ミ「え? あ……お姉様の所に……」


青「サクラがルリに託したんだ」


ミ「魔竜王国に寝曲空!?」


青「そうらしいよ」


ミ「アンズも早く妻にしてあげてよ」


青「それは……」


ミ「そうすれば少しは落ち着くと思うわ。

  だって不安が助長しているんでしょ?」


青「そうだろうけどね……」


ミ「アンズも好きなのよね?」


青「うん……『妹』? よりも『娘』かな?

  そんな感じで好きだよ」


ミ「そっちの壁も壊しちゃおかな~♪」


青「成人するまでは駄目だ」


ミ「成人すればいいのね♪」


青「企むなっ!」


ミ「行動力はアオ譲りよ♪」


青「ったく~」


ミ「なぁに?♪」


青「寝ろ」


ミ「アオも♡」


青「読みたいんだよ」


ミ「じゃあ、一緒に読むわ♪」


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