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凄過ぎる輝竜

 出演者は天竜王族と中の城関係者だけ?


♯♯ 中の国 十九音楽事務所 ♯♯


 その日の撮影が終わった後、キンとアオは社長に呼び出された。


「社長は間もなく戻りますので、こちらでお待ちください」

座る場所を示された。



「どうやら俺達だけではなさそうですね」


「そのようだな。アオ、バイトは?」


「ルリが行ってくれました。兄さんの方は?」


「アカが代わりに行ってくれた。

 アカも少し変わったようだが?」


「そうですね。

 打ち解けてくれるのかもしれません」


「そうか」嬉しそうに頷いた。


コンコン。『どうぞ、こちらです』


促されて入ったのは社長ではなく――

「おや?」「助監督さん、どうして?」


「内容は聞いてないんですけど、呼ばれてしまって……」

苦笑を浮かべ、示された席に座った。


「監督さんも呼ばれているんですか?」


「さぁ……内容次第ですが、来ると……ねぇ?」


キンとアオは苦笑を返すしかなかった。


コンコン。

「いや、お待たせしてしまいましたな」

やっと社長が来た。



「さて、早速ですが、日程が詰まっておりますからな。トントンと参りましょう」

分厚いファイルをドサッと卓に置いた。

姫役(ヒロイン)客演(ゲスト)を決めて頂かねばなりませんからな」


「「え?」」助監督を見る。


「やはり、そのお話でしたかぁ……」

とっても困り顔で頭を掻く。

「ですので、姫役は双子で、と。

 これは譲れない設定なんですよ」


「当方には双子の女性タレントは所属しておりませんからな。

 そこは二役という事で、売り出して頂かねば契約に反しますぞ?」


「そこは客演としてご出演頂くという事で、監督がお話させて頂いた筈ですが……」


「まだ私は『ウン』とは申しておりませんが?」


「ですが……こちらは最初からオーディションで、と申し上げておりましたよね?」


不満顔と困り顔が睨み合う。


「あの、その話に俺達は必要なんですか?」

堪り兼ねてアオが口を挟んだ。


「ああ、説明しておりませんでしたな。

 輝竜にオファーがあった最初の最初に、出演の条件として、新人を売り出して頂きたいと申したのですよ」


「その辺は監督だけが話してまして、私は知らなかったんですよ。

 でも監督はオーディションだ、と……はい」


「シノビマンは社長が売り込んだのではなくて、そちらからだったんですか?」


「はい。ウチの社からなんですよ。

 私は後で加わったので、最初をよく知らないんですけどね」


「それで社長は、子供達の反応を確かめて、便乗まで考えたんですね?」


「それはまぁ当然ですな、確かめましたよ。

 大人の女性にはウケが良いでしょうが、ドラマ自体の対象はお子様ですからな。

 その上で受けた訳ですよ。


 で、最初の打ち合わせで、姫役は企画段階から双子だったと聞かされましてな、それならば客演を、と申し入れたのですよ。

 確かに、書面などの明確な返事は頂いておりませんが、話が進みましたからな、受けて頂けたものと解釈しておったのですよ」


「監督も客演を途中から加えるとは言ってましたよ。

 だから『つもり』は有るんだと思います」


「別に、ミモザとアンズは出さなくていいんですけど?」


「おおっ♪ あの評判の!♪

 是非ともウチに所属――」「させません!!」


「ミモザ殿とアンズ殿は、王族として、天界で管理させて頂きます。

 人界での活動は、シノビマン限りですので」

黙って聞いていたキンも口を開いた。


「そんなぁ……」「勿体ない……」

ここは意見が合致した、と握手。


「意気投合しようが変わりませんからね」

アオが睨む。


「私達としては姫役が何方であろうが、客演が加わろうが構いません。

 制作側の御都合でお進めください」


「私も客演は加えてもいいと思ってますよ。

 ただ、輝竜さんレベルでないと、スケジュール的に大問題なんですよ。

 当初の撮影スケジュールのまま、放映時間も回数も倍になったんですからね」

社長をジト~っと見る。


「「ええっ!?」」社長を睨む。

「1クールでしたよねっ!?」

「何もお話しくださらないのは何故なのです?」


社長がバツが悪そうに顔を逸らせ、横目で助監督を睨んだ。

「輝竜ならば大丈夫だと――」


「はい。輝竜さんなら、です。

 驚異的な長回し(ロングテイク)で、しかも一発で撮れる輝竜さんだからこそ可能なんです。

 新人タレントで、それが可能な方をご提示ください」


「それは……」


(キン兄さん、放映期間が延びたという事は、撮影期間の延長も考えられますが、俺としては撮影期間が長くなるのも嫌なんですけど)


(そうだな。

 地下界奪還も復興も進めねばならないからな。

 あまり輝竜が重くなるのは望ましくない、と私も思う)


(客演に何を演じさせるのか分からないままでは、対処も出来ませんね)


(そうだな。そこを確かめるとしよう)

「どのような役を想定しているのですか?」


「あ、言ってませんでしたね。

 拐われて助け出される人とか、忍仲間とか、レストランの常連客とか、そんな役が未定ですので、そうなると思います」


「1回限りでない客演も、という事ですね?」


「はい。常連客だと、そうなりますよね」


「試しに、という形にはなりますが、社長のイチオシをひとり加えてみては?

 社長も撮影現場で見て、今後を判断すれば如何です?

 ただし、撮影期間の延長は受けませんよ」


「ふむ……」


「でしたら監督と話さないと。

 私では決められませんので、呼び出すか、行きたいんですけど?」


「社長は候補を決めてください。

 俺達は助監督さんに付いて行きます。

 明日、また集まりましょう」

アオが窓に寄って指笛を吹くと、宵闇に青竜が飛来した。

「助監督さん、行きましょう」



♯♯ 撮影スタジオ ♯♯


 編集室では、モニターを見る2人の男が、鏡のように顎に手を当て、嬉しそうに頷いた。


「ほらね兄サン、演出家不要だろ?」


「確かに出る幕はなさそうだな。

 しかし客演とやらは、どうなったんだ?」


「そろそろ話さないとなぁ……要らないって」


「そうはいかないんだろ?」


「なんだよなぁ……」コンコン。「あ?」


『監督、こちらですか?』「おう♪」


カチャ。


中間(なかはし)、どうしたぁ?

 お♪「シノビマン・キンとアオ♪」」


後ろの2人が苦笑する。


「あ、演出家先生も来てたんですか。

 あ、でも丁度いいかも」


「ひとりでブツブツなんだよぉ?」


「例の客演の話で、十九社長に呼ばれたんですよ。

 で、『出せ』『要らない』の押し問答になりそうだったのを二人が止めてくれて、試しに社長イチオシを参加させて、社長にも撮影を見てもらって今後を考えるって方向になったんですけど、どうですか?」


「ふぅん……シノビマン的に、それでいいなら、ま、やってみるか。

 姫役じゃないんだよな?」


「はい。客演です」


「候補がいないの知ってて双子設定にしたのもバレてないよな?」


「はい。私は最初を知りませんので」


「ならヨ~シ!

 そうだな……第3話の拐われ役だっ!」


「台詞ナシ、叫ぶだけ、か?」


「台詞なら、後で礼だけ言わせるぞ。

 演出、頼むなっ♪」


「けっこう難易度高いんだぞ?

 新人かぁ……」ため息が深い。


ココン、カチャッ。

「お♪ 集まってるなっ♪」

脚本家も入って来た。


「行き詰まったのかぁ?」演出家がニヤリ。


「酷い言いようだな、賀助(カースケ)

 喜助(キースケ)に相談があって来たんだよ」


「なんだぁ?」


「夜の場面は無いのか?

 竜も忍法も綺麗だと思うんだが?」


「そうか! 忍と言えば夜!

 ヨシッ♪ 決まりだーーーっ!!」


 いやいや、夜のシノビマンは目立ち過ぎだろ。


「綺麗って?」


「そうか、兄サンは見てないんだよな。

 シノビマン♪ 頼むっ♪」拝む♪


(キン兄さん、曲空してください。

 複製を出しますので)

「では、外で」

キンが先に編集室を出、アオが続いた。




 キンが指笛を鳴らすと、黄金に輝く竜が飛来した。

宵闇に浮かぶ荘厳な竜に圧倒された男達は、言葉を失い、ただ見上げていた。


「で、もういいですか?」


「あっ! いや、忍法も――」

「「「乗りたいっ!♪!」」」


「いいですよ」

キン(アオ複製)とアオが両脇に男達を抱えて、金竜(キン)の背に跳んだ。



 浮上し、城下の明かりが小さくなる。


「夜に飛んでも真っ暗なだけですので、次の外撮影で乗ってくださいね」


「俺も行く!」

「お前は本書いてろよ」

「乗ったらもっと良い本になる!」

「〆切だけは守れよ」

「兄サンもスタジオ撮影だけだが?」

「いいや行く!」

「別に来なくてもいいけど?」

「より良い演出の為だ!」


「助監督さん、演出家の賀助さんが兄、監督の喜助さんが弟なんですよね?

 脚本家さんは?」


「賀助さんの学友だそうです。

 皆さん、芸能大学出身なんですよ」



 ゆっくり竜ヶ峰まで飛び、降下した。


「忍法一発だけですよ」

アオだけが降りた。



「忍法、分身の術、氷双青輝!」

2人のアオから放たれた輝く青氷の双竜が絡み、弾けて、巨氷竜と化し、煌めき増量でオーロラを纏って飛び去った。


巨氷竜の残像のような、チラチラと瞬く氷の煌めきが消える。


「戻りますね」




 呆然としたまま、男達は編集室に運ばれた。


「では、話し合いの続きをどうぞ。

 私達は、これで帰らせて頂きます」


返事は無いが、キンとアオは洞窟に帰った。




 暫くして、監督がブンブンッと頭を振った。


「夜だっ! ここも、ここも、ここも!

 夜に決まりだーーーっっ!!」

台本をバンバンバンッと作業台に広げた。


「前に見たのより凄みを増しましたよね?」


「だよなっ!♪

 竜も昼間とは大違いだよなっ!♪」


「さっきの、特効ナシだよな?」


3人、大きく頷く。

「兄サン、それが輝竜なんだよっ!♪」

「ビックリだよなっ♪ 凄いよなっ♪」

「竜を治療する時の光なんだそうです」


「いっぺんに……とにかく自力で出してるんだな?」


「光る氷だけじゃないんだ!

 火も雷も竜巻も出るんだよ!」


「で、竜に乗るって……ホントに人なのか?」


「どう見ても人じゃないか!」


「人が、あんな事できると思ってるのか?」


「事実、出来てるじゃないか!」


「もう一度、映像を見せてくれ」


「何度でも見ればいいさ!」


 演出家はモニターに齧り付くように見始めた。

何度も何度も止めながら。



「人だろうが、人でなかろうが、いいモンが撮れりゃいいと思わないか?」


「俺も同感だな。

 見た目、どう見ても人だしな」


 監督と脚本家は、そんな話から、これからの展開についての話に展開し、小声で話し続けていた。


「あのぅ、客演の件は?」


「試しに受ける、で決定!

 3ポカでクビだっ!

 客演出るトコだけ刻んで撮るぞ!

 以上だっ!」


「はい」メモった。「そう返事しますね」


「喜助、元映像は?」


「あの箱だ」棚を指す。


「全部見せてくれよ」


「いくらでも見てくれ。

 輝竜兄弟が人でなくても、俺は何も変えやしない。公表する気もない。

 もしも兄サンが、そんな事をしたなら、もう兄だなんて思わない。

 全力で闘うからなっ」





凜「撮影スタッフの皆さんって

 『御座る』とか『のじゃ』とかって

  言わないのね~」


青「また来た……」


凜「ね、どうして?」


青「姫に聞けよ」


凜「クロと仲良く修行してるから

  邪魔できないでしょ」


桜「位の高いヒトしか使わないんだって~」


凜「サクラ、ありがと♪」


桜「んとね、由緒正しいコトバなんだって♪」


凜「だから、お城の皆さんだけが使ってて、

  他では聞かないのか~。

  他の国もなの?」


桜「うんっ♪

  お武家様とか~、お公家様とか~、

  そんなヒトだけなの~♪」


凜「あれ? アオは?」


桜「静寂の祠だよ♪ 俺も行く~♪」曲空♪


凜「あ……行っちゃったぁ……

  あ!♪ ベリー!♪」


赤「む?」曲空。


凜「ったく失礼な兄弟ねっ!

  後書きを埋めさせろっ!」


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