妙な気を漂わせる水晶玉
夜明け間近です。
♯♯ 静寂の祠 ♯♯
【ルゥ♪ サクラ~♪】
「あれ? キュルリとルリ姉、どしたの?」
【あそぼ~♪】「という事だ」
【では、森の家に行きましょう】【わ~い♪】
――森の家。
とたんに芳小竜達に囲まれた。
【サクラ~♪】【かぁさま~♪】【ルゥ~♪】
【あそぼ~♪】【いっしょ~♪】【ふえ~♪】
きゅるきゅる大合唱だ。
「じゃ、遊ぼうね~♪ 笛がいい?」
サクラが皆を連れて離れた。
(ルバイル様、サクラの光……後付けでない神の光ですね?)
【はい。アオには話せないのですが……】
(話しませんし、伝わらないようにします。
その方法は四半神竜として、前最高神様から伺っております)
【サクラはアオを護り、コバルトとガーネを救う為に原神と成ったのです】
(私がお断りした為なのですね?)
【そのようですね。
しかし、サクラが自身の考えで、そうしたのです】
(他にも何かお考えですよね?)
【ルリ自身にも強い拾知が有るのですね。
大神として認められた事は聞きましたか?】
(はい。次の改定ではルバイル様と並ぶなどと、信じ難く、受け入れ難い事を伺いました)
【アオならば、もっと拒絶が大きいでしょう】
(間違いなく、そうですね)
【ですので、当面は話せません。
少しだけ遠回りとなりますが、受け入れて頂かねばなりません。アオが抵抗すれば、平和への道程は、もっと遠回りとなってしまいますので。
ルリ、協力してくださいますか?】
(平和への道は、アオが望んでいる道ですので、ご協力させて頂きます)
【では、お話し致しましょう、ラピスリ様】
(本当に私達を『青身神』だなどと信じていらっしゃるのですか?)
【はい。私はお会いしておりますので】
♯♯ 赤虎工房 ♯♯
「おや、アカ」
「早いな、幽月」
「もしかして寝ていないのかい?」
「色々あってな」
「でも嬉しそうだね。気が輝いているよ」
「確かに良い事が有った。
卵の中で背負ったものが消えたのだ」
「それは嬉しいね。
またアオ様とサクラ様なのだね?
ああ、コバルト様もいらしていたのだね。
気配が漂っているよ」
【よっこいせっとな】金虎が現れた。
【赤虎、見つけたぞ。此じゃ】ほれ。
「水晶の欠片、なのかな?」
「そうらしい。禍石の中に混ざっていた」
「纏めるのだね? 手伝うよ」
【呼んだか? 金虎】緋晶も来た。
【また妙なモンが出たようじゃ】
【どうやら玉になりそうじゃな】
金虎が卓の上に魔法円を描いた。
二神と二人が卓を囲み、両掌を翳す。
【指示は出すからの。赤虎が唱えよ】
「はい、大師匠様」
♯♯ 竜宝の国 森の家 ♯♯
ルバイルはサクラに話したように、ルリにも話した。
「エントリーしても、アオをステージに立たせるのが問題ですね」
【そうなのです。
どう説得しようかと悩んでいるのです】
「キン様、ハク様、サクラを審査員に出来ればよいのですね。
コンテストの詳細を調べておきます。
あとはフジ様ですね……父に相談します」
サクラは笛を吹きながら飛んでおり、芳小竜達がサクラを追いながら歌っている。
「サクラとアオは違う。それは確かな事。
アオだけが拾っている何か――繋がっている誰にも拾えない何かが、何なのか知りたい……」
【そうですね。
アオの未来に何かが起こるのか、それとも過去に起こった何かに縛られているのか……私にも全く拾えません。
大神の1位なんて、こんなものです。
御大層に捉える必要など全くありませんよ】
「そうは仰いますが、人族にとっては――あ……」
「こちらでしたか。
どうしても気になって来てしまいました」
「アオ、アンズは?」
「すやすや眠っているよ」
「ちゃんと世話をしろ」
「したんだけどなぁ」
「こちらもだ。
子供達が寂しがっていたそうだ」
「それでサクラを呼び出したんですか?」
【そうなのです。私だけでは手に負えなくて】
「すみません、放ったらかしにしてしまって」
「だから遊んでやれ」
「そうだね」サクラの方に飛んで行った。
♯♯ 赤虎工房 ♯♯
部屋を満たした光が魔法円中央に向かって集まり、一点に吸い込まれた。
【確かに水晶玉じゃったな】
【八割、といった所かのぅ】
「穏やかとは言い難い気を漂わせていますね」
「何処かで感じた気なのだが……」
【ふむ。中心が空洞じゃな】
「では、封じられているものは?」
【卵の禍石同様、本体は未だ何処か、じゃな】
「アオとサクラの気が掴めぬ」
【ならば、あの祠じゃな】金虎が消えた。
アカと幽月が緋晶を見る。「「どちらに?」」
【竜宝の国の祠じゃろうて。
儂は行けぬから、ようは知らん。
金虎は匠神でありながら、正規の大神でもある。
とにかく修行好きじゃからな。
竜宝の国は、大神と、大神の加護を受けた者しか入れん所なんじゃ】
♯♯ 森の家 ♯♯
【こっちじゃったかぁ】現れた。
【おや、金虎様】にっこり。
【何をしとるんじゃ?】アオとサクラを指す。
【子供達と遊んでいるのです♪】
【工房にも集まっておる。
いつも幽月の子らと遊んでおるがな】
【お邪魔でしょうか?】
【いいや。明るくて良いぞ】
【でしたら、そのままで。
それで、何かございましたか?】
【妙な気を漂わせておる水晶が見つかっての。
あの二神に見てもらいたいんじゃよ】
【神とか呼ぶと嫌がりますよ?】ふふっ♪
【とにかく参りましょう】
ルリが二人を呼びに行った。
♯♯ 赤虎工房 ♯♯
アオとサクラの姿を見て、アカが申し訳なさそうな顔をしつつも嬉しさを溢した。
「アカ兄♪ おっはよ♪」ぴょん♪ ハグ♪
「早速だが、これだ」
アカはサクラの頭を撫でながら、アオに水晶を手渡した。
「これ……気が混ざっているよね。
神様が大勢って意味じゃなくて、異種の……例えば、人と神様と宝魂、みたいな。
しかも怒りを感じる。一緒に封じられた事を互いに怒っているような……暗室に入ってもいいかい?」
「王妃様に尋ねるのか?」
「それと恍恒鏡にも。アカも来てね」
アカはサクラをくっつけたままアオに付いて暗室に入った。
【サクラ様は原神に成られたのじゃな……】
緋晶が扉を見詰めて呟いた。
【はい。これで身体を切り離しても神です】
【アオ様は気付いておるようじゃが?】
【そうですね。ですが、サクラは別の個体。
そう考えておりますので、何も言わないつもりなのでしょう】
【然様か……ふむ】
【それにしても掌に乗せただけで、あれ程も読み取れるとはのぅ】
金虎も緋晶と並んで扉を見詰める。
【『青身神』という区分が出来てしまうのも御納得頂けますでしょう?】
【確かにのぅ。とうとう本物の大神様に成ってしもうたのぅ】
【金虎は三人より上なんじゃろ?】
【いやいや滅相もない。三神は遥か上じゃよ】
扉が開いた。
【どうじゃな?】
「はい。あと少し集めなければ、解決には繋がらないようです」
【ならば、透明な石の選別を急がせるわぃ】
緋晶が消えた。
【水晶自体は玉牢なのですか?】
「それが……玉牢でも竜魂でもなくて……まだ話せない状態で、確かめられないんです」
【それで、水晶玉は?】
「恍恒鏡に預かってもらいました」
【でしたら安心ですね】にこっ。
「あ♪ サクラにぃちゃん♪」「ちゃん♪」
「月草、月白、ご挨拶は?」
「おはようございますっ♪」「ますっ♪」
「よくできました」にこにこ。
「サクラにぃちゃん♪ あそぼ♪」「ぼっ♪」
きゅ~るるる♪ きゅるきゅ~♪ きゅっ♪
「いっぱいいる~♪」「アカ、この子達は?」
「勝手に集まる」「毎日増えているよね」
「じゃあ外で遊ぼうねっ♪」「「は~い♪」」
賑やかに出て行った。
ルバイルも芳小竜をくっつけて出て行った。
「竜宝の国に連れて行こうか?」
「あの子達が望むのならば、そうすればいい。
こちらが良いのなら、居ればいい」
「ありがとう、アカ」
「あ、金虎様、外に出ましたよ」
【そうか】よっこいせ。
奥から木箱を抱えて来た金虎も外に出た。
「あの箱は?」
「玩具だ」
「もしかして金虎様が作ったの?」
「幽月も、だ」
「アカも作っているよね♪」
「む……言うな」
「アカは本当に可愛いね♪」「そうだね♪」
「アオまで……笑うな」
♯♯ アオの屋敷 ♯♯
「お姉様まで、どこに行ったのかしらね」
食堂を見渡したミモザは、アンズの向かいに座った。
朝食が並んでいく。
「アンズ、どうしたの? 熱? 大丈夫?
食べられる?」
「違うの。幸せなの♡」
「良い夢でも見たの?」
「うん♡」
「どんな夢?♪」
「お兄様とお月見して、一緒にお団子を食べて……やんっ、言えないっ」
「そこでやめないでよぉ」
「言えないのっ」
「気になるじゃないのよっ」
「だってぇ~」
「言いなさいよね」
「えっとね~」
「もったいぶらないでよぉ」
「お兄様とぉ……」
「と?」
「キスしちゃったぁ♡」やんっ♡
「ええっ……て、夢なのよね?」
「夢なんだけど~、目覚めたら、お兄様のお部屋だったの♡」
「また寝曲空したのね……」
「お兄様に包まれてるみたいで幸せだったの♡」
「それは幸せよね……」
「ね♪ 今夜、お兄様のお部屋で寝ない?♪」
「え?」
「お帰りでも、そうでなくても♪」
「どっちもマズいでしょっ」
「え~、どうしてぇ?
妹でもアリでしょ?」
「もっと子供ならねっ」
「未成年だも~ん」
「あのねぇ」
「決まりねっ♪
今日もお仕事頑張りましょ♪」
青「俺達も闇の神を倒したら終わって
もらえるんだね?」
凜「終わってほしいの?」
青「俺はルリと穏やかに生きたいんだよ」
凜「本編アオも同じ事を言ってたけどね、
寝る暇も、食べる暇も無いくらい
バタバタ虹紲大臣してるよ」
青「……だろうね」
凜「アオなんて絶対のんびりムリなんだから
動き回ってネタになってねっ♪」
青「ったく……あ、ところで、そっちの世界
では戦隊ヒーローって沢山いるんだよね?
『シノビマン』って既に出ていないの?」
凜「あ……」
青「やっぱり調べていないんだね」
凜「もしいたら……ど~しよ~」
青「罷り間違って多くの方の目に触れる事に
でもなってしまったら、謝罪して
書き直せばいいだろ?」
そっちの細かい事なんて知らないけどね。
凜「あ、そっか~」
青「リリスさんの本の時は、そんなこんなで
タイトルが付けられなかったのに、
もう忘れているんだね」
凜「あうっ」氷の刃がっ――
青「って遊んでいないで、続きを書けば?
ストック切れだよね?」
凜「書いていいのねっ♪」
青「中途半端には出来ないだろ?
ちゃんと着地させてくれよ」
凜「ふぇ~い」