再び始まる
卵の中で、よく喋っていたらしいアカ――
って、想像できません。
♯♯ 魔竜王城 ♯♯
楽器を抱えた天竜王子達が控室に曲空すると、コバルトが待っていた。
「始祖様、他の神様は?」
【帰ったよ。後は晩餐会だけだろ?】
「始祖様は誰待ちですか?」
【お前だよ。で、サクラは?】
「今日は魔竜王ですからね、虹藍様と一緒に別の部屋ですよ」
【そうか。ま、終われば、いつも通りなんだろ?
今夜はアカと話せよ。仲良し卵達♪】
(そうですね。そうさせて頂きます。
始祖様、明日お願い致します)
【俺が いつでも暇だと思ってるだろ】
(そうですね♪)くすっ♪
【悔しいが、その通りなんだよな。
あ、輝竜、良かったぞ♪
じゃあ明日なっ】消えた。
(アオ、始祖様は何と? 結界絡みか?)
(なんだか俺と話がしたいらしくてね、明日の撮影後にって約束しただけだよ。
また神になれとか言われるのかな?)
(何故、明日? 今日、この後は?)
(アカと話したいからね♪)
(む……そうだな)じんわり嬉しそうになる。
(どこで話す?)
(竜ヶ峰工房)
(うん♪ サクラと行くよ)
♯♯ 最高神殿 ♯♯
【親父、俺なんかを呼び出すなんて、どうしたんだ?】
【親が子を呼ぶのは、おかしいですか?】
【そんな話じゃないんだろ?】
【ひとつ、任せたい事が有るのです。
アオが信頼している絆神ですからね】
【アオ絡みか。ま、納得だな。
俺自身になんて何も無いだろうからな】
【そんな事は――そうそう、最高匠神様から嘆願書をお預かりしていたのですよ。
先に、そちらの話をしましょう】
コバルトは差し出された石板を受け取った。
【ん? これ……俺なんかを……】
【歴代最高神様方の総意として認められました。
ですので、これまでのコバルトの素行は、呪に因るものと断定し、大神コバルトの個神歴からは削除されました】
【それって……つまり……】
【未来を諦めないでください】
【あ……有り難く……】
【虹の涙ですか……大神コバルト様、今後を期待しておりますよ】
【はい。最高神様】
【その上で、こちらなのです】もう一枚、はい。
【また石板って……直々に? ゲ……】
【絆神として、しっかり支えてくださいね】
【本当は、この為なんだな?】
【期待しております】にっこり♪
【親父ぃ~】
♯♯ 竜ヶ峰工房 ♯♯
「ベリー♪」ぱふっ♪ 「おいっ」
アカの背にサクラが曲空して来た。
「今日は王と輝竜で、らしくなかったけど、もう大丈夫そうだね。
安心したよ」くすくす♪
「やめてよぉ、プラムぅ」
「今日は、それで呼び合うんだね?
で、ピーチはジュースかい?」
「ん♪」
「甘万桃か? 共食いだな」ふふっ♪
「ベリーのは苺のお酒にしてっ」ぷんっ。
「怒るな」ぽふっ。
「それで、どの程度 思い出したのだ?」
「たぶん、ほんの少しだよ。
だからまだ思い出話を夜通しなんて無理なんだけどね。
もう警戒しなくても大丈夫だと伝えたくて来たんだよ」
「俺達を眠らせたの、闇の神じゃなくてガーネ様なんだって~」
「何の為に?」
「ここからは想像なんだけど、おそらくスミレを再誕させる為なんだと思うんだ。
ヒスイとスミレは、サクラと一緒に孵化したんだ。
そのまま一緒に隠れ住んで育ったから、サクラ同様、俺にとっては弟妹なんだよ」
「俺にとっては三つ子で、ヒスイは兄、スミレは妹~♪」
「そのスミレをいつサクラの卵に込めたのかは、神様も見ていなかったらしいんだけど、きっとピーチを眠らせた時なんだろうね。
俺とスミレは既に絆が成っていて、再誕させようとしたら俺が孵化していた。
だから俺とピーチを『ひとり』に戻して、スミレを込めたんだと思うんだ。
眠らせたのか、眠ってしまったのかは分からないけどね」
「だから、あのアオはプラムではなかったのか……ふむ。納得した」
「でも、想像だよ?」
「いや。合っているのだろう」
「5年後、俺とピーチを妖狐王様が分離したらしいけど、俺もピーチも、それまでの記憶を失っていたそうなんだ。
俺に戻せた記憶は、孵化から眠らされる迄。
ピーチは、俺が成長して護れるようになるまで、孵化を遅らせる為に、引き続き眠らされたんだ」
「でもね、起きたらプラムが眠ってて、始祖様だったの~」
「ルリを失った俺が瀕死になってしまったから、起こし役に変えたんだろうね」
「そうか……俺は、居もしない敵に警戒し続けていたのか……しかし、良かった……」
「ありがとう、ベリー。
長い間、苦しめてしまって、すまない」
「いや……」
「これから、い~っぱいお話ししようねっ♪」
「うむ……」
「だぁい好きだから~、ねっ♪」ハグ♡
「……話し方を忘れたらしい」ぼそっ。
「少しずつでいいよ」くすっ♪
「撮影も~、結界も~、毎日いっしょ~♪」
「そうだな」
「禍石探しもね」
「そうだな。
そう言えば、あの古の王妃様だが、石が集まってきたので、そろそろ出せるのではないかと緋晶様が仰っていた」
「じゃあ、それもいっしょ~♪」
「うん。一緒にお願いね。
あ、まだ分けていない禍石は有るの?」
「沢山 残っている」
「分けようか?」「話しながらねっ♪」
「ふむ。では、行こう」二人の手を取り、曲空。
♯♯ ゴルチルの家 ♯♯
【バナジン何処だぁ?】
【父上様、どうしたのですか?】
【アオイの部屋だったのか。
あ、ちょうどいいな♪
アオイも手伝え♪】
【【はい……】】
【爺様は?】
【匠神殿で結界竜宝を作っておられますよ】
【そうか……それなら仕方な――いや、そっちに絡ませるか♪
アイツら、竜宝の王だからな♪】
【あら♪ お帰りになってたのね♪】
フローラが、ふわりとコバルトに寄り添う。
【フローラも手伝ってくれ♪】
【なんだか楽しそうね♪】
【三界と俺達の未来の為に動くんだ♪】
【良い事なのね♪】
【ただし……大変な事なんだ。だから頼む!】
サッと石板を突き出し、頭を下げた。
【まあっ♪】【これは……】【……ですね】
【【【おめでとうございます♪】】】
【え?】
【未来の為とは、そういう事なのですね!】
【あなた♪ 良かったわね♪】うるうるるっ。
【正式に大神様なのですね!】キラキララ☆
【ん?】石板を確かめ、【あっ、違っ!】
慌てて入れ換えた。【こっちなんだっ!】
【【【え? ・・・ええっ!?】】】
【ルリの父! ルリの絆神! 俺の妻!
どうか助けてくれっ!!】
【父上様、アオとサクラの絆神は?】
【ヒスイならいいが……】
【呼んで参ります!】アメシス消える。
【肝心のアオの絆神は?】
【俺だ。だから押し付けられたんだよ】
【始祖様、お呼びですか?】
兄弟二神、手を繋いでいる。
【スミレに聞かれないようにか?】
【【ええ、まぁ……】】
【よしっ!
サクラの絆神も一緒に爺様の所に行くぞ!】
【えっ!?】
♯♯ 赤虎工房 ♯♯
【本当に頼んでもよいのか?】よっこいせ。
ドンッ! っと禍石の山が現れた。
(これで全部ですか?)
【いや、まだまだじゃ】
(これが終わったら入れ換えてくださいね)
【寝ないつもりか?】
(アカとゆっくり話したいんですよ)
【程々になぁ】苦笑して消えた。
(始める~♪)
(そうだね)壁に沿って集縮の壺を並べた。
アオとサクラが神眼全開で、掌握を千手観音の如く出して分け始めた。
(コツが有るのか?)
(掌握強めにすると見易いんだよ)
(慣れると、お顔が見えるの~♪)
(ふむ。確かにな。よし!)全開!
(もぉ見えちゃったのぉ?
さっすが掌握マスター♪)
(アカなら匠神になっても困らなさそうだね)
(何方かに聞いたのか?)
(ん?)(まさか……)
(また勘だったのか。
幽月から一緒にと言われてな。
光を得てもよくなれば匠原神に成ろうと思っている)
(良かったね。ずっと作っていられるね)
(ワカナさんとも、ずっといっしょ~♪)
(そうだな。アオのように取り込めばいいと言われた)
(もしかして、それで決めた?)
(む……)俯いたが耳は隠せない。
(ベリー♪ か~わ~い~い~♪)(む)
(この状態、確かに、とても幸せだよ)
(今、ルリ殿は?)俯いたまま。
(最近、複製に入って離れられるようになってね、今も妹達と一緒に居るよ)
(そうか……)
(ルリ姉、神の血が濃いんだって~。
だから出られるけど、ワカナさんは出たりしないから心配しないでねっ♪)
(うん。ずっと一緒に居てくれるよ)
(ベリーの耳、鱗みたくなってるよ♪
痛っ! 掌握デコピンしたぁ~)
(ピーチ、煩い)
(神眼で睨むぅ)
(あ……なんか、同じような事、卵の頃も有ったよね?)
(こんな遣り取りは茶飯事だった。
ただ……プラムとピーチは似過ぎていて、区別は難しかった。
他の卵だけでなく互いも見ないでおこうと言った事をかなり後悔した)
(やっぱりベリーが言ったんだ~♪)
(二人の神眼が強いから……負けを認めたくなかっただけだ)
(でも、おかげで楽しさが増したよ)
(うん♪ 聞き易くなったし、掌握も使い易くなったよねっ♪)
(そうだね。思いのままに掌握が使えるようになっていくのが嬉しくて、楽しくて仕方なかったよね)
(うんっ♪)(そうか……良かった……)
(あれれ?)
((どうした?))
(この石、見て)
(あ……初めてだね)(男神様だな)
(それに……なんか、プラム?)
(え?)(確かにな)
姫「久方振りに城なのじゃ♪」
静「静香、部屋は其方ではないぞ」
姫「分かっておる♪ 志乃に会うだけじゃ」
静「そっとしてやってはくれぬか?」
姫「何かあったのかの?」
静「――斯々然々――なのだ」
姫「性懲りも無ぅ……」ため息。
「ならば尚の事、確と話さねばなるまいて」
静「何を話す気だ?」
姫「リリスから新たな本を貰ぅたのじゃ。
此度はアンズ殿の話なのじゃ。
アンズ殿は百年もの間、アオを慕ぅて
おるのじゃ。やっと成就するのじゃから
邪魔立ては無用なのじゃ」
静「本になっておるのか?」
姫「此方がアオとルリ殿の本なのじゃ。
双方、フジが訳してくれたのじゃ」
静「儂にも貸してくれぬかの?」
姫「志乃の後じゃ」
静「ケチなのだ」
姫「志乃を復活させねば何かと不便じゃろ!」
静「そうであったな。致し方無しか……」