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プラムとベリーとピーチ

 話は脱線しますが、アオは孵化前の記憶を

探ろうとしています。


♯♯ 静寂の祠 ♯♯


「ピーチ? ベリー? 何だろう……」


【アカに言えば喜ぶかもな。プラム】


「えっ!? ……何かが弾けた……これって……」


【カイヤナなら覚えてるか?】


「っ……」頭を抱えて床に突っ伏した。


「アオ兄!?」現れた。


【来たな、モルガナ】


「痛っ……痛たたた……」サクラも踞った。


コバルトは二人を治癒で包んだ。




 暫くして、二人から閃光が迸った。


「サクラ……同調した?」


「うん……返事ないから、ここ来たのぉ」


「荒療治ですね……始祖様」


「これ何なのぉ?」


 二人は、ようやく身体を起こした。


【思い出せたか?】


「断片的に。

 卵の中で話していたんですね、俺達」


「んで、ガーネ様が呼んでたんだよね?

 カイヤナ、モルガナって」


「ピーチ、ベリー、プラムは母上ですね?」


【その通りだ。

 そろそろアカに、普通に話していいと言ってやれ】


「「え?」」


【まだそこまでは思い出せてないのか?

 アオとサクラがそこそこ安定して以降、卵の中で3人はずっと喋ってたんだよ。

 中でもアカが一番よく喋ってたんだ。

 と言っても声は出してないんだがな。

 神耳を使って話して、神眼で周り観察して、掌握で突っつき合ってキャッキャしてたんだよ】


アオとサクラが顔を見合わせる。


【で、プラムが先に殻を割るって出て、ピーチが続く筈だったんだ。

 だが、ピーチは眠らされた。

 以降、連れられて来るアオは、プラムの気を感じさせない、ただの赤子だし、

ピーチが目覚める気配も無い。

 ベリーは警戒して、何も話さなくなったんだ。


 アオが目覚めて以降も、アカの沈黙は続いた。

 アオが殻を割っても大丈夫だと言ったから出はしたが、ピーチは眠ったままだ。

 誰が敵なのか判らない状況で、馴れ合うなんぞ出来なかったんだ。

 だからアオと執事長としか話さなくなったんだ。

 それも、誰が聞いているか分からないからな、必要最低限だけにしたんだよ】


「アカ兄、最近けっこうお話しするよね?

 もぉ緩めてもいいって思ったのかな?」


「俺達が思い出したら呪縛から解き放たれるのかもしれないね」


「うん♪ がんばる~♪」


「それにしても何となく俺達の鱗色っぽい呼び名なんて、どうして母上に付けられたんだろう?」


【そりゃあガーネが絡んでるからだよ。

 ミドリは、ずーっと御卵の聖堂に居たんだからな。卵を抱いたり撫でたりしてな。

 ガーネにとっちゃあ邪魔で仕方なかったんだったろうがな。

 だが、無理矢理な術で7つも産ませたんだし、護ってくれてるんだしで無下にも出来ず、卵に触れる為に神を騙って姿を見せる事も有ったんだよ。

 で、その場その場でいい加減に呼んでいたミドリに、どうせなら呼び名を付けたらどうかと言ったんだよ。

 ガーネは鱗色を見てたからな、ミドリから候補を聞いて、それならこの()だろう、と指し示して、ミドリが殻に書いたんだよ】


「あ……レモン、ライチって早くいなくなったからキン兄とハク兄だねっ♪」


「問題はグレープとオレンジだね。

 クロはどっちなんだろうね?」


「俺、そこ覚えてない……あとは孵化するちょっと前まで思い出せないよぉ」


【ミドリが適当に言ったからなぁ。

 黒い果物は思い付かなくて、淡色の子供が出てくるなんて想像してなかっただろうな。

 ま、ガーネは黒玉(コクギョク)葡萄と摩或蜜柑(マアルミカン)でも思い浮かべたのかもな】


「クロ兄がグレープなんだねっ♪

 フジ兄、オレンジ~♪」


「確かに外皮は淡い紫銀色だよね。

 中身は真っ赤だけど」


【お前ら、神眼で兄弟の鱗色は見なかったのか?】


「うん♪ 会ってのお楽しみ~って♪」


「そうだね。性別とかもだよね。

 とにかく中は見ないでおこうって」


【互いも、なのか?】


「うん♪」「はい」


【突っつき合ってたのに?】


「見ずに触れるのが楽しかったんですよ」


【一応、子供だったんだな……】


「掌握を使うのが楽しかったんです」


「他の兄貴達も触ったら動くの~♪」


「見ないで楽しみにしようって言ったのもベリーだったような……」


「そぉかも~♪ だいたい提案するの、俺じゃなかったし、最初に声かけてくれたのも、ベリーだよねっ♪」


「ピーチは何でも『やる~♪』って乗ってくれていたね。

 うん……少しずつ思い出してきたよ。

『誰か起きてない? お話ししようよ?』って繰り返す声で目覚めたよね」


「それ! でも、返事できなくて困ってたら『うん、起きたよ』って聞こえたの♪

 だから、くるんくるん動いてたら『君も起きたの?』って♪」


「ピーチは返事の代わりに掌握で抱きついてきたんだよね」


【言葉をどうやって覚えたんだよ?】


「さぁ……」「わっかんな~い」


【目覚めた瞬間から話すなんて、どこまでも変な奴らだな】


「「始祖様の子孫ですので」♪」


【どーゆー意味だよっ】


「そのまんま~♪」「だよね」


【ったく!

 あ、日が変わったな。

 儀式には先祖神も三兄妹も行くからな。

 しっかり寝て、ちゃんとやれよ】


「は~い♪」

「はい。ありがとうございました」

(続きは、また夜にお願いします)


コバルトは頷いて消えた。



「アオ兄、また悩んでる?」


「妃3人、悩みは尽きないよ」


「そっか~。帰るの?」


「帰らないと心配されてしまうからね」


「ん。じゃあまた朝ねっ」曲空。



 妖狐王様は三界王様で青身神様。

 これはもう間違いないだろう。


 三界王様には悪意は無い。

 他の域から来た方だとしても、

 この三界を救おうとしてくださっている。


 三界王様が導きたい未来への道は

 きっと三界を救える唯一の道で、

 狭くて入り難い道なんだろうな。


 俺とルリは、その道への鍵なんだろうか?

 サクラは巻き込まれているんだろうな。


 本当の平和は、きっとその先に在って、

 闇の神という存在を無くす事では

 ないんだろうな――



 考えながら祠の外に出たアオは、雲上の星空を見上げ、手が届きそうで届かない瞬きに向かって掌握を伸ばした。



 掴みたい……

 平和な世をルリと生きたい――


(アオ……)

心の中に戻ったルリがアオの背を抱きしめた。


(どうしたんだい?)

掌握を打ち消し、ルリの腕の中で、くるりと向かい合い、口づけた。


(遠くに行ってしまいそうで……怖くて……)


(どこにも行かないよ。

 ルリとは離れたくないからね)


(……うん)


(確かなのは、ルリをどうしようもなく愛しているって事。

 焦っても仕方ないよね。

 一歩ずつ進まないとね)


(アオが焦る?)


(早く平和にして、ルリと穏やかに暮らしたいんだよ)


(もう隠居を考えているの?)


(隠居……ではないんだけどね。

 平和への道も、その先の道もルリと一緒に。

 手を繋いで行けたらいいな)


(もちろん一緒に。離さないから)


(うん。帰る? 祠がいい?)


(アオの部屋)


(うん)曲空。




♯♯ 魔竜王城 ♯♯


 魔竜王国での式典の朝――


 早朝から三界各国と魔竜王国を曲空で行ったり来たりしていたサクラの兄達が、ようやく控室に集まったのは、開式の直前だった。


「着替えたら直ぐに入るぞ」


「「「「「はい!」」」」」


装美の壺を取り出し、一斉に第一正服に。


天竜王達の後ろに曲空し、整列した。


その後ろに先祖神達が現れた。


(始祖様、挨拶するんですか?)


【するかよ! パニックになるだろーが!】


(ですよね)


【一応、見守りに来ただけだよ。

 フローラとバナジンも同じくだ。

 親父と爺様は結界しに来たんだけどな】


(ゴルチル様はどうして?)


【さぁな。勝手に付いて来たんだよ】


 サクラ王の挨拶が始まった。


【しっかし何度見てもサクラとサクラ王のギャップには慣れないよなぁ】


(どちらもサクラですよ)くすくす♪

(始祖様もサクラが育つのを見ていたんですから、あのサクラも見慣れていたのではありませんか?)


【言われてみれば、そうだったな。

 お前らが人界の任に行く直前に、お前から引っ張り出された俺は、暴れて封じられてたんだ。

 久しぶりにサクラを見て驚いたのなんのって!

 心配で付いてった先でアオを見て、また驚愕だよ。

 三界が終わったとマジで思ったよ】


(そんな大袈裟な)くすくすくす♪


【笑い事かよ】フンッ。

【『光』も、二人の『闇障』もダメになってしまったと真っ暗どん底に突き落とされた気分だったよ】


【すみません。僕のせいで……】


【いや。ヒスイは頑張ったよ。

 ルリの時も、あの時も、ヒスイが助けたから、コイツは今、笑ってられるんだ】


(そうですね。

 ヒスイ、ありがとう)


 拍手が湧き起こった中、サクラ王が深く礼をし、虹藍女王と替わった。


【俺こそ、何も出来なかったんだ】


(俺とルリを生き続けさせて、サクラを育てましたよ。ヒスイとスミレもね。

 だから俺達は始祖様が大好きなんですよ)


【恥ずかしい事、サラッと言うな】プイッ。


(本心ですので)くすっ♪


【ヒスイまで笑うなっ】


(では、そろそろ行きますので)


【何処へ?】


(壇上ですよ。虹紲大臣としてね)曲空。


【バンバン曲空してるな……】


【技も竜宝も、竜だけのものにしないつもりなのです】


【アオイ、何か知ってるのか?】


【三界をひとつにするのが虹紲大臣の役目なのだとルリから聞きました。

 アオ様は、既に闇の神を倒した先の三界を見ているのです。

 ですので、神として協力してほしいと、娘達から頼まれました】


 アオが壇上で話し始めた。


【気の早い奴らだな。

 にしても、本当にミモザとアンズを娘として受け入れたんだな】


【ユリは卵が1つだったのが悔しかったそうなのです。

 どうやら私も、もっと子が欲しかったようで、娘が増えて、息子もできて、今とても幸せを感じているのです】


【神の血が強く出ると産卵数は神竜並みになる。

 強かったからこそ、お前ら3人は神に成れた。

 ま、ミモザとアンズの中の子供達は爺様の子だからな。

 引き合うのも当然っちゃあ当然なんだ。

 ガーネもディアナ様の子孫なんだが、ハルヒを遡れば爺様の弟に行き着くんだよ】


【えっ? ルバイル様の……】


【行方不明なんだがな。

 爺様は両親も弟夫婦も行方不明なんだ。

 いずれアオ達が見つけると、俺は信じてる。

 だから、それはいいんだ。

 言いたかったのは、大神の血だから引き合うのも強いって事だ】


【本当に親子なのですね♪

 お教えくださり、ありがとうございます!】


【あ、ルリも話すみたいだぞ】


 壇上では、アオが礼をして下がり、後ろに控えていたルリを前へと促していた。


【しっかり聞かなきゃ♪ ねっ♪】出た。


【連れて来てたのか?】


【はい♪ 常に共にです♪】


【ドイツもコイツも仲良過ぎだ】

コバルトの視線は、腰掛けているコハクに後ろから抱きついているスミレに向いていた。


【私達も負けられないわね♪ あなた♪】

フローラが楽しそうに腕を絡ませる。


【おいっ】


【では、私もプリムラを出します】にこにこ♪

バナジンがピーチプリムラを導き、腰を引き寄せた。


 少し離れていたルバイルとカルサイが優しく目を細めた後、

【では私達も】【手伝って頂きましょう】

消えたと思ったら、セレンテとドルマイを連れて戻った。


【御前等……】顔をしかめる。


【ゴルチル様もお姉様をお連れください】


【カルサイ、また生意気な――】


【そもそも何しに来たんだよ?】


【コバルト、何が言いたいのだ?】


【素朴な疑問だよ】


【私も見ておきたかっ――】【あなた♪】

【どうして――】【来たいから来たの♪】

【おいっ】【あなたも、なのでしょう?】


プラチナは見回すと微笑み、

【静かに見ましょうねっ♪】

ゴルチルの腕を抱いて壇上に目を向けた。





 この日の早朝――


♯♯ 洞窟 ♯♯


匡「頼もーう! 竜ヶ峰様ーっ!」


ビ【おっ、今日は目の輝きが違うなっ♪】


匡「拙者、修行に邁進するで御座るっ!」


ビ【よしっ! ビシバシ鍛えてやる!】


匡「お願い致しまする!」



♯♯ 中の城 ♯♯


静「お~い、志乃、居らぬのか? お~い」


睦「上様、志乃様は臥せっておりますれば」


静「ひと晩では無理か……では、睦月」


睦「はっ」


静「昼には家老が戻るのでな、其迄、城を頼む」


睦「私が!? ぃぇ、で、御座いまするか?」


静「城、と言うより、志乃を頼む」そそくさっ。


睦「は」……はあぁぁぁ……困った……

  そもそも一度、確と断られておるのに

  無理矢理、割り込もうなどとなさるから

  このような事に――そうか、仲間に

  頼めばよいのだな。

 「弥生、皐月」←双青輝会仲間。


弥「どうした睦月」

皐「難しい顔をして」


睦「志乃様を頼む」忍法、ドロン。


弥&皐「せめて何が有ったのか話せ!」


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