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アオとクロの合わせ技

 久しぶりに兄弟と共にステージに立った

クロは、嬉しそうに張りきっています。


♯♯ イベント会場 輝竜控室 ♯♯


「お♪ デザートってソレか♪」


「はい♪」


「半分くれ。欲しいのは種なんだろ?」


「はい♪」


「種じゃと? 植えるのか?」


「種の中身が薬の原料なのです♪

 ですので、実を召し上がって頂けると、とても助かるのです♪」


「然様か♪

 クロ、其は如何にするのじゃ?」


「美味くするに決まってんだろ♪」

クロは楽しそうに出て行った。




 姫が食べる事に集中したので、兄弟は小声で話し始めた。


「アイツ、よっぽど寂しかったんだな……」


「アオ、進み具合は?」


「今回はサクラに任せていますよ」


「順調~♪ イッキに伸びてるよ♪」


「風穴卒業は?」


「それは、まだ~」


「そっか……」


「ハク兄も寂しい?」


「まぁな」


「じゃ、ハク兄が指導する?」


「俺、風じゃねぇし」


「だいじょぶ~♪

 双璧(ソウヘキ)して確かめてあげて~♪」


「ふむ。進捗を体感出来るのはハクだけ。

 そういう事なのだな?」


「うんっ♪」


「アカとフジは火だから、姫の方をお願い」


「む」「はい♪」


「キン兄、食材とか運ぶ?」


「そうさせて貰えるか?」


「お願~い♪」



「お~い、出来たぞっ♪」


「ソレなぁに?」


「綺麗じゃな♪」


「アオ、手伝ってくれ♪」


「いいけど何?」


「こっち来いよ♪」

二人は廊下で話し始めた。



「甘い匂いじゃの♪」ごくん♪「美味じゃ♪」


「あ~っ! 赤いの飲んじゃったぁ!」

「うわっ! オレンジも!?」

「サクラ! 持って逃げるのだ!」


「うんっ!」「逃がさぬぞっ!♪」

「やぁん!」「頂きなのじゃ!♪」


「おわっ!? 姫様、曲空したのかっ!?」

「しましたよね?」「した」「サクラ!?」


「俺……ムリ~」ぱたん、きゅ~。


「おい、さっきの色とりどりのは?」


「姫、ぜ~んぶ飲んじゃったぁ~」


アオとクロが戻った。「あれ? シロップは?」


「美味じゃったぞ♪」


「姫、またかよぉ」


「いつもこうなのかぁ?」


「毎食、食材が半減しちまうんだ。

 んで、出来上がる毎に片っ端 食っちまう」


「苦労しているんだね、クロ」肩をポンッ。


「まぁな。だから大量に作ってある。

 持って来るからな。

 アオ、美味い水で頼んだぞ」


「うん。それは任せて」


 クロは空になったシロップの器を持って出、アオは別の器をテーブルに並べた。


そして、少し離れて両手を突き出し――


しゅばばばばっ!


キラキラ微細な氷粒が放たれ、器に溜まっていく。

「「「「おおっ♪」」」」「にゃはっ♪」

「まあっ♪ 綺麗ねっ♪」「……うん♪」


全ての器に、てんこ盛り氷が出来上がった。


「んで、コレだ♪

 好きに掛けて食え♪

 さっきの瑠璃杏が、このキレイな青だ♪」


「他は?」


「オレの畑から採って来たっ♪

 果物いろいろだっ♪」


「俺、ぜんぶかける~♪ レインボー♪」

「ワラワも、た~っぷり掛けるからの♪」


「さっきは、原液飲んじまったのかぁ?」

「そのようだな。凄まじい味覚なのだな」


「アカ兄様は、何も掛けないのですか?」

「今は良質の水を味わいたい。蜜は後だ」


「ミモザお姉様は黄色にしたのですね♪」

「甘酸っぱくて、とても美味しい……♪」



「クロ、この渋い緑のは何だぁ?」


「人界抹茶。七色豆餡と白玉と天蜜練乳もあるから、甘さは好きに調整してくれ。

 透明の蜜ベースも、けっこうイケるんだ。

 果物も刻んであるし、トッピングで楽しんでくれ」


「アオ兄♪ おかわり~♪」「ワラワも♪」


「もう? 早いね」ぽんっぽんっと氷の山。


「さっきの、しゅばばば~は?」


「パフォーマンスだよ。涼しいし。

 クロ、その物凄い色のは?」


「天界苺ミックスだっ♪ 美味いぞ♪」


「どぉしてこんな色なのぉ?」


紫玉苺(ムラタマゴ)のせいだよ。

 でもアレがイッチバン美味いからな。

 外せねぇんだよなぁ」


「紫玉苺♡ 俺ソレ~♪ あれれ? どこ?」


「真、美味じゃ♪」空っぽじゃ♪


「また飲んじゃったのぉ?」苺ミックスぅ。

「姫! 紫玉苺は希少なんだからなっ!」


「紫玉苺ぉ~」しくしく――


「クロ、シロップの おかわりは?」


「もう無ぇよ。全部持って来たからな。

 サクラ、こっちの黄苺(キイチゴ)で我慢してくれよ。な?」


「黄苺も好き~♪」るんっ♪


「美味じゃったぞ♪」また空っ。


「ひどぉいぃ~」うるるっ――


「サクラ……これ……あげる」


「ミモザぁ~、ありがとぉ~♪」黄苺♡


「ミモザ、氷おかわりね」ぽんっ。


「ありがと……」えへ……♡




♯♯ アオの酒倉 ♯♯


【あっ、爽蛇――】

カルサイは料理を運んで来た爽蛇を呼び止めた。


「はい♪ 何で御座いましょう?」


【身体を持つ者が、勝手に酒を開けてしまっておりますが――】


「どうぞご自由に、で御座いますぅ♪

 あ♪ 薬酒は、こちらで御座いますよ。

 お奨めは、こちら。『紅雫』で御座います♪」


【確かに薬とは思えない素晴らしい味ですね】


「はい♪ アオ様が努力を重ねて参りました味で御座いますぅ♪」


【アオが、まさか酒造を?】


「はい♪ 美味しい薬を目指しております♪

 少ないものは、こうして増やせばよろしいので御座いますぅ♪」

集縮の壺に、増幅鏡を入れて、紅雫を注いだ。


すると、あっという間に壺の口まで、なみなみになった。


「壺をお運び致しますので、お好きな酒を増幅してくださいませね♪」



♯♯♯



 閻魔大王・剛鬼(ゴウキ)は、父・厳鬼(ゲンキ)と飲んでいた。


【剛鬼、閻魔大王の力に限らず、最高神の力というものは、それ自体が意志を持ち、主を選んで力を与えるのだ。

 私は、王妃である玲鬼(レイキ)に継ごうとしたのだが、力は胎児である剛鬼を選んだのだ。

 お前は閻魔大王として、力に選ばれたのだ。

 だから卑下するな。自信を持て】


【選ばれた……私が……】


【そうだ。

 もしも力が入るべき器を備えていない者に継ごうとしたならば、先ずは拒絶される。

 それでも無理を通そうとしたならば、その者は力に負け、消滅する。

 心が不適であっても同じ事だ。

 お前は胎児でありながら、十分な器を備え、閻魔族を統べる者として育つと認められたのだ。

 だから二度と、その力を私に返そうなどと考えるな。

 私も玲鬼も、これからはずっと支えていくのだからな】


 剛鬼は俯き加減で目を閉じていたが、顔を上げ、決意の眼差しを真っ直ぐ父に向けた。


【では、引き続き私が閻魔大王として、皆を率います。

 御指導、宜しくお願い致します】


【よくぞ言った。それでこそ我が子だ。

 しかし、たまには甘えろ。親子なのだからな】


【父上様……はい♪】


【まあ、そう固く考えずとも、青身神達も何事も全力を尽くすと言ってくれておったし、今後はそうそう悪い事など起こらぬだろう】


【アオ様とお話しなさったのですか?】


【ここに来て暫く話していた。

 青身神ではないと言っていたが、な。

 お前とは友だから、力を尽くすのは当然なのだそうだ】


【そうですか……友と……】


【嬉しそうだな】フフッ。


【初めての友ですので】


【そうか? 天の最高神も友だと言ったぞ】


【そうですか。有り難き事……】


【しかしどうしてアオ様は青身神である事を否定するのか……あの御姿は否定のしようが無いのだがな】


【私も青身神様を垣間見た事は御座います。

 確かにアオ様は青身神様だとは思うのですが……ゴルチル様が仰るには、再誕されて未だ前世のご記憶が戻られていないそうなのです】


【そうか。納得した】


【閻魔大王様――】


【あ、釈迦様。如何なさいましたか?】


【アオ様と話しておりましたら、こちらだと伺いましたので参りました。

 友の杯を酌み交わして頂けますか?】


【あ……はい! ありがとうございます!】


【泣くな剛鬼。

 閻魔が泣くと『鬼の目にも涙』だと言われてしまうのだぞ】




♯♯ イベント会場 ♯♯


 クロと姫は風穴に行き、ハクは長月に連れて行かれた。


「アオ兄♪ ルリ姉♪

 今日はお休みしてね~♪

 救護室は俺に任せてね~♪」


「いいの? サクラだって休まないと――」


「ダ~メ」

(アンズ、ミモザとお話ししなきゃ。ね?)

「ちゃんと休んで~♪」


「ありがとう、サクラ。

 昼食、夕食ステージには来るからね」


「間に合わなかったら俺がアオ兄する~♪」


「間に合わせるからね」


「まっかせて~♪」


 アオとルリは苦笑しつつ、ミモザとアンズを連れて曲空した。



――アオの屋敷。


「ミモザ、私の部屋で休もう」


「ぇ……」小さく頷いた。



 二人が部屋に入ったのを見届け、

「アンズ、話があるんだ。いいかい?」

アオはアンズの顔を覗き込んだ。


「これからの事、ですよね?」


「そうなるね」


「はい、お兄様」


 アオが歩き始め、アンズは数歩後ろを付いて行った。



♯♯♯



「ミモザは、もうアオの複製ではない。

 ひとりの女性なのだから、アオを引き摺る必要は全く無い。

 アオと私は、ミモザとアンズを護るが、だからと言ってミモザの自由を奪うつもりなんぞ全く無い。

 ミモザはミモザの幸せを追えばよい。

 その上で私達は勝手に護るのだから」


 ルリはミモザの背を包むように抱き、やわらかな声で語り掛けていた。


「ルリお姉様……」


「ん? 遠慮しなくていい」


「私…………今、とても幸せです」


「ここに住むか?」


「そうしても、いいの?」


「当然だ」


「お姉様に包まれているの……とても幸せ……」


「そうか」髪を撫でる。


「嬉しい……♡」


「このくらい、いつでもだ」


「幸せが、いつでも……お姉様と、いつでも♡」


 不意にミモザが身を捩り、ルリの方を向いた。

ルリが動く隙も無く、唇が重なる。


(大好き♡)





匡:さて、夜迄を少し休んだ後、修行に――

  あれは……衝立に囲まれて移動するは、

  静香姫様に間違い無かろう!

  追跡するで御座る!


  其にしても厳重で御座るな。

  昨夜は此程迄では無かったが……

  まあ、明るい刻ならば、致し方有るまい。

  高貴な御姿を晒さぬは、当然至極で

  御座るからな。


  どうやら姫様お一人のようだが……

  志乃様は御一緒では無いのであろうか?

  姫様の御部屋の方角では無く、

  志乃様の御部屋の方角からいらしたように

  思えたので御座るが……?


虎「匡鷹ではないか」


匡「あっ! 父上!」


虎「此のような場所で如何致した?」


匡「あ、いや……」


虎「何事か異変か?」


匡「異変では……ただ、静香姫様とお話し致し

  たく、その機を見計ろうておったので御座る」


虎「ならば、正式に謁見を申し込めばよい。

  其の位の手続きは知っておろう?」


匡「確かに……其の様に致しまする」


虎「ふむ。しかし、婚儀に関してならば、

  最早、確定ぞ。

  今更、何も動きはせぬぞ」


匡「然様で御座るか……」


虎「姫様には及ばずとも良い娘御は大勢居る。

  其の様に落胆するでない。

  堂々として居れば、良き縁談も届く事で

  あろうよ」


匡「否……姫様でないのならば縁談なんぞ

  不要で御座る。

  拙者、修行の道に専念するで御座る!」



 放っといたら一生 気付きそうにない……。


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