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次は閻魔様の番

 魔神界で掘り出した禍岩には強い仏様が

封じられていました。

その仏様に『釈迦』を返した釈迦様は、

文殊様になりました。


 アオとサクラは、アンズとミモザを連れて赤虎工房の庭に戻った。


「ルバイル様、お待たせして、すみません」


【では、始めましょう。

 やはり闇の力が必要でしたので、内の囲みをお願いしますね。

 セレンテ、中央に。

 閻魔大王様、術主として正面にお願い致します。

 コバルト、対面に。アオ、サクラ、左右に。

 えっ? 釈迦様、大丈夫なのですか?】


 禍岩から解放されたばかりの釈迦が来ていた。

【私の時と同様なのでしょう?

 ご心配には及びませんよ】にこやかに合掌。


【では、釈迦様、カルサイ様。

 閻魔大王様と正三角形に、お願い致します】


 ルバイルは、目覚めたばかりで不安そうなセレンテに近寄り、

【少しだけ記憶が封印されているのです。

 それを解くだけですよ】

やわらかく微笑み、ふわりと抱いてから、外周に立った。


【それでは皆様、お願い致します】


 閻魔大王の声を合図に、コバルト、アオ、サクラは闇障を限界まで上げた。


きゅる♪


(キュルリ、よく眠っていたね。

 お手伝いできるかな?)


【は~い♪】セレンテの頭上へと飛んだ。


 いつもなら、光で行う事が、全て闇で行われ、術が進んでいく。

しかし、闇と言っても、宵闇のような清涼感に満ちた闇が、禍々しい闇を吸着し、滅していく、心地よいものだった。


 キュルリがセレンテから闇黒色の細い鎖を引き出し、掲げた。


【あとは光で滅してください】


 内・外周からの光が鎖に集中し、鎖は弾け散って、無と化した。


【ご協力ありがとう御座いました】

ルバイルの声で、親族が一斉にセレンテへと飛んで寄った。


【お母様、ちゃんと妹達は生きているから、そんなお顔をなさらないで】


【え? ドルマイ……どうして知っているの?

 ええっ!? 妹!? 達!?】


【アンズ、ミモザ、こちらに♪】


 アンズは楽しそうに、恥ずかしそうなミモザの手を引いて、駆け寄った。


「セレンテ様♪ 私達の中に可愛い双子の女の子が居るのです。

 まだ眠っていますけど、とっても元気ですわ♪」


 アオが工房から出て来た。

手には卵が封じられていた石を持っている。

「この石は禍石でした。

 この中にルバイル様とセレンテ様の御子が、未熟卵のまま封じられていたんです。

 昨夜、石から出せる程に集まり、生命力が戻りましたので、俺とサクラの複製に保護したんです」


【セレンテ、奪われた卵は双子卵だったのですよ。

 未熟卵ですので、すぐには会えませんが、孵化できる程に成長すれば、神竜として再誕できますよ】

ルバイルがセレンテの肩を包む。


【私……こんな大切な記憶を封じられて……ずっと……忘れたまま……】


【いいえ。封じられても尚、お母(セレンテ)様の御心には、この()への強い想いが、しっかりと在ったのでしょう。

 ですから、もうひとつの(わたし)を我が子として受け入れてくださったのでしょう】


 近寄りながら語り掛けていたカルサイがセレンテを抱きしめた。

【お母様……】


【カルサイ……ありがとう】


【セレンテ、泣いてなんかいられないわよ。

 しっかり、この二人を護らないとね】

(プラチナ)(セレンテ)を背から抱きしめた。


【カルサイも、兄として護らないとね】


【はい。お姉様】


【やっと祖母から姉になれたわ♪】うふっ♪

【私も早く石から出たいわ~】


「「『出たい』を強めないで」ください!」


【あら、そうだったわね♪】あはっ♪


【アンズ、ミモザ、子供達を確かめさせてもらえるかしら?】


「はい♪ いつでも♪」「どうぞ……」


セレンテは二人を抱きしめた。

【確かに双子だわ……無事で……良かった……】



(アオ兄、どぉしてミモザ、もじもじしてるの?)


(人見知り、なんだと思うよ。

 慌てて作ったからかな?

 そんな性格が主張してしまうなんて……)


(アオ兄が人見知り!?)


(見せたくない俺。その頂上だね)苦笑。


(だぁれも知らないアオ兄だぁ……)


(そう? なら、上手く隠せているんだね。

『自分』なんて、皆そんなものだと思うよ)


(あ……うんっ♪)


 二人は晴れやかな笑顔で笛を構えた。

コバルトが気付いて、音を合わせる。

アンズとミモザも微笑み合い、笛を出した。



♯♯♯



 アオとサクラは笛を仕舞い、少し離れて聞いていた閻魔大王に近付いた。


「閻魔大王様、後回しになってしまって申し訳ありませんでした。

 前にお約束していたお話を伺ってもよろしいでしょうか?」


【お忙しいのに申し訳御座いません。

 では、場所を改めましょうか?】


「いえ、こちらでもよろしいでしょうか?

 協力が大事ですので。

 釈迦様も、よろしいでしょうか?」


【私共も伺いたく、残っておりました】合掌。


「ご先祖様ぁ~、次だよ~♪」


【ったく! 先祖使いの荒い子孫共だなっ】

楽しげな笑い声が賑やかに近寄る。



♯♯♯



【私共の祖先が、人神様と分断され、今の魔神界に入ったのが、およそ15万7千年前です。

 その頃は、闇を封じる結界を成してはおりませんでしたので、異間平原に頼るばかりだったようです】


【原因は私が釈迦を継ぎながらも弱かった為で御座います。

 私が封じられてしまった為に――】


【いいえ、文殊様。

 魔神も闇の神に負け、異間平原を越えねばならない程に弱かったのです。

 逃げ込んで2万年程は、人神様も、少数ではございましたが、共に戦っておられたようです】


【私が禍山に封じられてしまって、人神は全て行方不明となったのです】


「弥勒様もぉ、そんな言わないのぉ」


【その後、いつ、という記録は全く残ってはいないのですが、青身神様が現れ、強い結界を成してくださったのです。

 その結界に護られ、なんとか無事に過ごしておったようですが、25600年程前、唐突に開いた闇黒色の鏡にも見える穴から噴き出た闇黒竜達に蹂躙され、魔神は滅亡寸前となったのです。

 その時、どのようにして収束させたのか、何も記録は残っておりません。

 戦いに出た者は全て、戻らなかったそうです。

 当時の閻魔大王も、その時に……行方不明だと信じております】


「その時、閻魔大王(剛鬼)様は、どうやって助かったんですか?」


【私は母の胎内でした。

 身重であった王妃は、側近達に護られ、どうにか生き延びたのです。

 閻魔族は胎内で1万年程を要しますので――】


「ほえっ!?」「そんなにも!?」


【仏陀族も似たようなものですよ】


「ほえぇ~」「竜の神様は?」


【平均で胎内百年、卵で百年って所かしら。

 普通は、どんなに長くても千年を越える事は無いわ】


「回転が速いんですね」「でも長ぁいよ?」

「サクラも同じようなものだよ」「そっか」


【続けますね?

 閻魔大王の力は、胎内に居た私に継がれたのです。

 ですので私は、生まれた瞬間から閻魔大王だったのです。

 子供の頃は、当然ながら、私ではなく、母が全て行っておりました。

 その後、あの闇黒竜達が魔神界に現れる事は無かったのですが、蒼月の影響が無くなると、結界を破壊しようと異間平原に来ておりました。

 その攻防の中、母も行方不明となってしまったのです】


「優鬼さんと飾鬼さんって、お母上様が違うの?」


【はい。私には妻が5人居ります。

 閻魔の血を絶やさぬ事も私の使命ですので。

 5人全てが身籠り、私は神と成ったのです。

 ですので、神としては若輩者なのです】


「でも、閻魔大王様って、すっごい大神様だよ。

 ね、アオ兄♪」


「そうですよ。

 いつもお助けくださるではありませんか」


【それは閻魔大王の力。

 私自身はまだまだ修行の身ですよ】


「まだ言ってる~」


「だからこそ、閻魔族の大神様方を探そう。

 きっと閻魔大王様をお認めくださるよ」


「うん♪ ね、アオ兄は、どこだと思う?」


「あの鏡達……そんな気がするんだ」


「俺も~♪」


「ルバイル様、光と闇を使ったら、どうなりましたか?」


【封印は緩みました。

 しかし、そこまででした。

 鏡の向こうを見る事すら出来なかったのです。

 しかし、希望の光だけは見えましたよ】


「釈迦様、引き続きになりますが、試したいんです。よろしいでしょうか?」


【勿論で御座います】


「カンで選んで持って来る~♪」曲空♪



 サクラは、すぐに戻った。「はい♪」


 三最高神が鏡面に掌を当て、気を込めると、鏡に纏わり付く闇黒色の鎖が浮き出た。

キュルリが大喜びで鎖を引いて飛ぶ。


 竜の神の光と、仏の無属性の光、そして闇障持ち達の闇が合わさった時、その鎖は弾けて消えた。


「これで、あとは探るだけ~♪」


【おい、青身神達】


「また言ってるぅ」「いい加減にしてください」


【いい加減、自覚を持て】「「嫌です!」」


【兎に角だ。探れ】


「大神様いっぱいなのにぃ」「そうですよ」


【御前等が始めたのであろう?

 それに神眼と掌握を合わせた上、光と闇を纏わせられる程に器用な者など、御前等の他には居らぬ】


 二人がコバルトを見る。


【見るなよ。視線で無茶言うな】


「ったく……」「ムチャクチャ~」


 三最高神が鏡の裏を支え、気を高めた。

アオとサクラは鏡面に両掌を当て、神眼と掌握を極大発動した。

もちろん、光と闇を纏って。


(いくよっ! せーのっ!)

二人は掌握()を繋いで、一気に伸ばした。


アンズとミモザが二人の背に掌を当てた。

(ありがと♪)(早く見つかりそうだよ)




♯♯ イベント会場 ♯♯


「少し落ち着いたから、順に休憩して」


【ルリも休憩しなきゃダ~メ】


(お母さん、私は今『ルリ先生』なんだから話し掛けないでよぉ。

 お父さんが女姿で看護師してるってだけで、やり辛いんだからぁ)


【ルリ、可愛い♪】


(もうっ)


(ルリ殿、少し離れられるか?

 輝竜控室に来て欲しいのだが)


(はい。キン様)(ちょっと離れるわね)



――輝竜控室。


「アオの気が伝わっていると思うが、天界で、また大きな事をしているようだ」


「はい。魔神様を探しているようです」


「そちらに行ってくれるか?

 私が『ルリ先生』を代わるのでな」


「え……しかし――」


「似たようなものだ。問題無い」フフッ。

キンは蒼月煌し、髪を青くした。

そして装美の壺を使って着替えた。


「その服……」


「次なるグッズだ。

 先程、試着するよう渡されたのだ。

 伸縮性に富んでおり、とても動き易い。

 ただ……派手なのが難点だ」肩を竦める。


「確かに……」


 輝竜の衣装が全面プリントされたTシャツとレギンスパンツに白衣を羽織って、ルリ先生(キン)は曲空した。


 控室には、他の衣装や王子服、シノビマン装束などがプリントされた物も置いてあった。


「『なりきり輝竜』はシリーズなのか?

 次は何を作る気だ? アオ……」


 呟いている場合ではないと、ルリは複製を消し、アオの中に戻った。



(あ、ルリ♪ でも救護室は?)


(キン様が私をしている)


(あ……本当だ……)


(アオ、共心しろ)


(えっ)


(かなり遠いぞ。早くしろ)


(見えたの?)


(どうにかな。ぐずぐずするな)


(……うん)




♯♯ イベント会場 救護室 ♯♯


【ルリじゃない……キンなの!?♪】


(スミレ様、騒がないでください)


【ルリの気が掴めないのですが、何をしているのでしょう?】


(アメシス様、ご心配には及びません。

 閻魔様をお探しする為、異空間に入ったのだと思います)


【サクラも? サクラは掴めるけど?】


(ヒスイ様、サクラは命綱を持って、三界側に居るのでしょう)


 キンは『神様なのですから御自分で御確かめください』という言葉を喉で止め、呑み込んだ。


(あの……私を囲むのではなく、お仕事をお願い致します)


 三神が渋々といった様子でキンから離れた。



 常々、大神様な絆神(ゴルチル)様に苦労しているが、

 大神様で無ければ無いで苦労するのだな――


「あっ、フ――」口を押さえる。


【今、『フジ』って言いそうになったんでしょ♪】


「え?」思わず振り返る。


【似てるわよね~♪】うふふふ♪


 己に治癒を当て、頭痛を鎮めるキンだった。





ビ【で、どんな姫なのだ?】


匡「あの木の下で瞑想しておった――」


ビ【あれが姫だとっ!?

  人界は、どうなっておるのだっ!?】


匡「ですがっ!

  静香姫様は、城では楚々としており、

  麗しき姫様なので御座いまする!」


ビ【ほぉ? 別人ではないのか?

  要人は影武者という奴を表に出すとか

  聞いたのだが?】


匡「しかしっ!」


ビ【顔は確かめたのか?】


匡「……いえ……御簾や衝立の向こうで……」


ビ【声は?】


匡「扇で口元を隠しており……」


ビ【立ち居振舞いは?】


匡「楚々と……爪の先にまで気品が溢れ――」


ビ【別人確定ではないか】


匡「其の様な事……有り得ませぬ!」


ビ【頑固な奴だな】


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