とにかく急いで頑張る
あれやこれやと常にドタバタなのが
『ぱられる』なんです。
♯♯ 天竜王国 出版社 ♯♯
夕食ステージを終え、ルリが戻って来た。
「その、移動するのは技なのか?」
「そうだよ。
『曲空』という、風属性の移動技だよ。
風技なんだけど、光属性も不自由なく使えるんだ」
「書いてもいいのか?」
「いいよ。別に秘技じゃないし。
で、ほぼ決まったよね?」
「主役の名前で困ってるんだが……」
「ああ、そうか……そうだね。
短くすると誰の事だか分からなくなってしまうんだね。
なら、方向を変えて、アン……何がいいかな?
1文字加えて女の子らしくすればいいんだよね?
スオウがインタビューを受けている間に考えるよ」
「インタビュー!?」
「『双青輝伝説』が事実を元にした物語だと発表してよ。
そのインタビューが、次作の予告と共に雑誌に載るんだよ」
「そんな話になってたのか!?」
「うん。だから出版社に呼んだんだよ」
「ちょい待てっ、対談にしよう。
その方が良いと思う!」
「ルリも?」
「勿論!」
「ルリ、いい?」
「仕方ないな」
♯♯ 神楽の風穴 ♯♯
(おお♪ アンズ殿!♪)
(遅くなってしまって、ごめんなさい。
進み具合を確かめますわね♪)
(うむ♪ お頼み申す♪)
アンズは姫の額に掌を翳した。
(まずは基底に……高めて……最大に……うん♪
とても澄んでいて、滑らかに動いているわ♪
とっても進んだわ♪)
(然様か!?♪)
(ええ♪ この調子ですと、ハクお兄様のイベントが終わる頃には、技の練習が出来ますわ♪)
(おおっ!♪ 頑張るからの♪)
(はい♪ 次はクロお兄様♪)
今度はクロの額に掌を翳す。
そしてサクラはクロにだけ話した。
(寂しいんだろうけど、今は我慢してよね。
ちょいちょい見なくても、俺、ちゃんとクロ兄するから、任せてよ)
(気づいてたのか……すまねぇ)
(昼と夜のステージも見てたでしょ?)
(ああ)
(アオ兄 見て何か気づかなかった?)
(アオがどうしたんだ?
フツーに輝竜してたじゃねぇか)
(せっかく見るんだったら、ちゃんと神眼らしく使ってよね)
(ん? どういう事だ?)
(フツーに目で見るみたくするのは、もったいないの!
クロ兄の神眼は大神様クラスなんだよ?
対象の本質とかもシッカリみえるんだからねっ)
(本質? 中身って事か?)
(単純に内側ってだけじゃなくて、分析とか、もっと深く出来ちゃうの!)
(へえぇ~♪ スッゲーなっ♪)
(メゲないトコが、クロ兄のいいトコだけどね、早く使えるようになってよ。
今日のアオ兄、ルリ姉だったんだよ)
(えええーっ!!!)
(クロ兄うるさい)
(あ……すまねぇ)
(俺達、忙しいんだからね。
修行だけに集中して、早く助けてよね)
アンズが手を下げた。
(それでは、患者さんが多いので、もう戻りますね)
(アンズ殿……真、大丈夫なのか?
今日もアオとは会ぅておらぬのじゃろ?)
(アオお兄様がお忙しいのは、いつもの事ですからぁ)
(しかしのぅ――)
(静香お姉様も修行に集中なさってくださいねっ。
では、失礼致します♪)
アンズは、にこにこ笑顔で曲空した。
(アンズ殿が……不憫なのじゃ……)
(アンズなら大丈夫だよ。
修行に集中しろって言われただろ)
(クロが冷たいのじゃ)
(仕方ねぇだろ。今は修行だ。
そんで、自由になってからアンズの為に動こう)
(動いてくれるのか?♪)
(約束する。だから今は修行を頑張ろう)
(うむ♪)
♯♯ 竜ヶ峰 洞窟 ♯♯
「たっだいま~♪ あ♪ フジ兄♪」
「サクラ、救護室は、もうよいのですか?」
「ちょい休憩~。今日なんでか凄かったんだ」
「患者が多かったのですか?」
「うん。
朝から暑くて多かったのと、なんでか集まっちゃって、大騒ぎだったんだ。
ルリ姉 来てくれて散らしてくれたけど、その騒ぎで、すっごく増えちゃって~」
「集まって……あ……」
「なんか知ってるのぉ?
俺、忙し過ぎて、調べる余裕なんて無かったのぉ」
「午後の話ですよね?」
「うん。窓も廊下も人だらけ~」
「私も、潤い水を補充していて囲まれたのです。
アカ兄様が掌握で人垣から出してくださって、二人で逃げたのですよ」
「もぉアンズでも外歩けなぁい」
「そうですね……ですので補充は月衆の皆様にお願いしましたよ」
「そぉなんだぁ。どしたんだろねぇ」
『夜分に申し訳御座いません』
「あれ? 睦月さんの声だよね?」
出て行った。
「どしたの?」
「鎮めるのに時を要し、夜になってしまい申し訳御座いませんが、皆様、お揃いで御座いまするか?」
「キン兄バイト、ハク兄さっき天界行った~、アオ兄も天界、クロ兄は修行、アカ兄も天界で工房かなっ」
「然様で御座いますか……」
「誰がいい? 呼ぶよ?」
「では、キン様をお願い致します」
「中で待ってて~、フジ兄、お願いねっ♪」
睦月は、様子を見に来ていたフジと共に居間に向かった。
サクラは複製を2体出し、キンとサクラとして居間に向かわせた。
そして自身はアンズとして救護室に戻った。
(キン兄、今、洞窟に睦月さん来てるんだ。
複製に千里眼は持たせてるけど、状況は流すからね。
俺は救護室でアンズしてるからね)
(ふむ。ありがとう、サクラ)
♯♯♯
「睦月殿、どうかなさったのですか?」
「はい。輝竜衆が女性輝竜を見たいと騒いでいるのです」
「女性、の輝竜ですか?」
「はい。
サクラ様のイベントの際、救護したアオ様と共にいらっしゃった金髪の看護師。
青い髪のルリ先生、桜色の髪のアンズ先生。
それと、潤い水を補充していた藤色の髪の女性と、その女性を助け出した赤い髪の女性。
あとは銀髪と黒髪の女性が存在する筈、と探し回っているので御座います」
「それで救護室が大騒ぎだったんだ~」
「そうだったのか?」
「人いっぱいで~、熱中症いっぱいになっちゃったの~。
ルリ姉 来てくれたけど、とっても大変だったのぉ」
「如何なさいますか?
我々は如何に動けばよろしいのでしょう?」
「ひと晩、考えさせて頂けますか?」
「はい。では、宜しくお願い致します」
「対応と報告、感謝する。
直ぐに答えられず、すまない」
「いえ、大変な事と存じます故。
では、これにて」
睦月が去った後――
「では、私が囲まれたのが先なのですね……」
「そぉかもだけど、そぉでなくても騒ぎは起こったかも~」
「最初の金髪看護師はルリ姉様でしたよね?」
「俺、見てないけど、そぉだよ。
看護師したから、医師のルリ姉は青い髪にしたんだ。別人ってコトで」
(サクラ、アオは?)
(天界。も少しかかる~。
キン兄、早退?)
(そのつもりだ)
(複製と入れ替わる?)
(そうしてくれるか?)
(ん♪)
キンが棚に隠れたのを神眼で確かめ、サクラは金髪複製を曲空させた。
キンが洞窟に曲空すると、フジが深く頭を下げた。
「キン兄様! 迂闊に、すみません!」
「いや。仕方の無い事だと私も思う。
普通に出て行けば、もっと大騒ぎなのだからな」
「今度は何が起こったんですか?」
アオがルリと手を繋いで現れた。
「千里眼の聞いて~」
「サクラ、の複製だよね?」
「うんっ♪ 本体、アンズ先生~♪」
「あの騒ぎは未だ収まっていないのか?」
「お泊まりになっちゃったヒトけっこういるの~」
「そうか。では、そちらを手伝う」
「うん。そうして」
ルリは頷き、曲空した。
「治療が困難なのか?」
「いえ。ただ、手が光ると人が驚いてしまいますので、弱くしか治癒出来ないんですよ」
「ふむ。では、救護室は二人に任せよう。
サクラ複製、千里眼を」
「ん」
先程の睦月との会話が流れる。
「女性輝竜か……困ったな……」
「アオ、呼んだか?」
「うん。アカ、相談なんだけど――」
♯♯ スオウの家 ♯♯
「あなた……どうしたの? そんなに集中して」
「ああ、コモモ。
コモモこそ、どうしたんだ?
その綺麗な髪飾り」
「アンズ様から頂いたの。友達の証ですって。
私、嬉しくって♪」
「そうか。良かったな」ホッ。
「ですから私、アオ殿下から頂いたお守りをアンズ様に差し上げたの♪
とってもお喜びくださったわ♪」
「そうか」お守りって、壁耳かな?
「それで、何を書いてらっしゃるの?」
「次作だよ。
『双青輝伝説』の空白の140年を埋めるんだ。
コモモにばかり働かせるなんて、夫として許せないからな」
「そんなの気になさらないで。
怪我をなさったのだから、養生なさって」
「それがな、すっかり治してもらったんだ。
今日、班長と副長に会ったんだよ。
やっぱ副長は凄い医者なんだ。
で、初めて二人に頼られたんだ。
だから急いで書いてるんだよ」
「アオ殿下とルリ様から……どんなお話なの?」
「出来上がってのお楽しみだよ。
頑張るからな♪」
「そう……では、楽しみに待つわ♪
お夜食、作るわね♪」
金「アオとの話は、もうよいのか?」
赤「終わった。アオが解決する」
藤「そうですか。良かった……あ、キン兄様、
セトリは、いかがなさいますか?」
金「私は、ソロ曲とデュエット曲で纏める」
藤「踊りませんか?」
赤「踊らせたいのだな?」
藤「はい♪」
金「踊るのは――」
藤「ヘッドセットマイクはキン兄様の
持ち物でしたよね?」
金「……そうだ」
赤「ならば体力的な問題か?」
金「そんなものは無い!」
赤「全て踊るのは無理であろう」フフッ。
金「そんな事は無い!」
赤「では決まりだな」
藤「次のステージで、アオ兄様にアレンジを
お願いしましょう♪」
金「バラードをダンスナンバーになど――」
藤「アオ兄様なら何でも出来ますよ♪」
赤「ペアダンスも良いだろうな」
藤「相手は? 女性ですと騒ぎになりますよ?」
赤「サクラ」
藤「アンズですか?」
赤「いや。サクラだ。
外套を腰に着ける感じの衣装で女性役だ」
描いている。
藤「良いですね♪」
金「良くない! 勝手に進めるな!」
アカが不敵に笑い、フジが楽しそうに笑顔を
咲かせた。
金「……勝手にすればいい」
真っ赤になって外方向いた。
赤「『緋牡丹』は人界風舞踊にしよう」
金「アカ!?」