姫の初――
なんだか悪さばかりしている姫ですが、
片想いしている乙女でもあるんです。
「やっと二人きりになれたな。
結婚して初めての正月なのに悪かったな。
兄弟揃って押しかけて来ちまって」
台所の片付けを終えたクロが傍に座る。
「構わぬ。賑やかなのは、いつもの事じゃ。
楽しゅうて、良い事じゃ」にこっ♪
「ありがとな、姫……」
「ワラワには兄弟が居らぬからの。
クロ達が羨ましぃぞ」
「そっか……。
もう、寂しい思いなんかさせねぇからな。
ずっと一緒だ」
クロが姫の背後に回り、すっぽり包み込むように、優しく抱きしめた。
耳元に、そっと触れるような吐息が、くすぐったくもあり、心地良くもある。
「ワラワは、幸せじゃ……」
身を委ね、呟いた。
「もっと幸せにしてやるよ」
「うむ……」
ぬくもりを分かち合う、静かな時が流れる――
「ずっと……こうしてたい……」「ワラワも……」
「好きだよ……姫……」「クロ……」
見詰め合い、ゆっくりと顔を寄せ合い――
クロの優しく慈しむような瞳に囚われていたが、ハッとし、頬が一気に熱くなり、顔を伏せた。
「結婚したってのに……可愛いヤツ」クスッ。
クロが姫をクルッと回し、向かい合った。
姫は、驚いて上げた顔を、また俯けた。
クロが覗き込む。
「イヤか?」「そのよぅな事……」「ん?」
「あるワケなかろぅ」「なら、逃げるなよ」
それでも、姫は顔を上げられない。
「姫……オレの奥さん……」
優しい囁きに身を震わせると、スッと顎を掬われ、唇が重なった。
口づけが深くなり、強張った体から力が抜けていく……。
頭を支えられ、ゆっくりと押し倒された。
帯に手が掛かり――
――――――
ガバッ!!
ドキドキドキバクバクバク――
「初夢……が……このよぅな……」
カーッと火照る頬を、両手で覆った姫だった。
ショートショートでした。
初詣と、アオとキンが事務所を訪れる間に
こんな事があったんです。
桜「どぉしてクロ兄は、姫に告白しないんだろ?
あんなじよ~な初夢みてたのにね~」
青「姫から言ってもいいと思うんだけどね」
桜「そぉだよね~」
青「似たもの夫婦になりそうだよね」
桜「クロ兄が敷かれるのも決定だよね~」
青「それは困るんだけど。
でも、決定だよね」
黒「なぁ、アオ。相談が――」手招き。
桜「なにナニなぁに~♪」
黒「サクラは来るなっ!」
桜「どぉしてぇ?」
黒「お子様には関係無ぇんだよっ!」
桜「俺にも彼女いるのにぃ~」ぶぅ。
黒「オレって……サクラにまで……」ガーン……。
青「とにかく向こうに行こうか。
サクラ、待っていてね」
桜「俺、ランとこ行く~♪
クロ兄、じゃ~ね~♪」曲空♪
黒「アオ……オレって……」
青「自信持てよ。大丈夫だから」
黒「オレ……夢で――」
青「知ってる。姫も同じだからね」
黒「なんで知って――それよりっ!
姫も同じって何だっ!?」
青「言ったままだよ。
クロの夢のままをしても姫は怒らないよ」
黒「うっ……」真っ赤になって逃げた。
青(ルリ、二人きりになったけど――)
瑠(アオ、それがどうしたのだ?)
青(その、つれない態度も可愛いよ)
瑠(う、うるさいっ!!)真っ赤!
(さっさと事務所に行けっ!)