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風くらい与えてやる!

 ロズオラとウォメロは無事でした。


♯♯ アオの屋敷 ♯♯


 庭での解呪が終わった。

ロサイトは微笑み、魔法円の中央へと進んだ。


【ロズオラ、解呪と浄化は終わったわ。

 もう普通に暮らせるわよ。

 あ♪ ウォメロも回復したようね】


 酒倉から、匠神達に支えられたウォメロが出て来た。


「ロズオラ……無事なんだね……良かった」

途中からは自力で歩き、ロズオラを抱きしめた。


「ウォメロ……私……」


「何も言わなくていいよ。

 ジャスパ様も、きっと見つかるよ」


「ありがとう……」


「皆様、ありがとうございました」

二人は深く頭を下げた。


【顔を上げて、後ろを向いてね】

二人を起こさせる。


「え?」「後ろ?」顔を見合せ――


「あっ! 後ろに最高神様が!」

「それは失礼致しましたっ!」

揃って後ろを向き、また頭を下げる。


【もうっ、顔を上げなさいな。

 カルサイ様、こちらに】


【え? あ、はい】

サクラと話し(に引き留められ)ていたカルサイが歩み寄った。

【ご無事で何よりです】


「「ありがとうございます!」」


【どうして気づかないのかしらねぇ?】


「「【えっ?】」」


【カルサイ様、ご両親よ】


【え……】


「あの卵が……」「最高神様に……」


【あら?

 ゴルチル様は……いらっしゃらないわね。

 ルバイル、こちらをお願いね。

 私は捜索に戻りますからね】

ロサイトは楽しげに酒倉に向かった。



【カルサイ様、静寂の祠に参りましょう】


【あ……そうですね】


二神はロズオラとウォメロを光で包み、移動した。



――静寂の祠。


【どうぞお座りください。

 はじめまして。

 私はユークレの子、ルバイルです】


「まぁ……あの子も結婚できたのね。

 立派な大神様……それで、ユークレは?」


【私の両親も行方不明なのです。

 ですが、生きていると信じています】


「ロズオラ、ユークレ様とは?」


「弟よ。修行ばかりしていたの。

 でも、ちゃんと結婚したようで良かったわ。

 きっと見つかるわ。あの子は強いもの」


【はい。近いうちに見つかると信じています。

 両親が修行に出て以降、私はゴルチル様とプラチナ様に育てて頂きました。

 そして、お二神様(ふたり)の御子、セレンテと結婚し、娘を得ました。

 娘はカルサイ様の妻となっております】


【ルバイル様、説明不足ではありませんか。

 私は幼い頃、妻ドルマイを妹と信じて育ったのです。

 つまり、私の育ての親は、ルバイル様とセレンテ様なのです】


「あ……ありがとうございます。

 こんな立派に育てて頂けて……」


【身内なのですから当然ですよ。

 緊張も解けたようですので、私も捜索の方に加わりますね。

 ごゆっくりなさってください】

各々に微笑みを向けて、去った。



――アオの屋敷の庭。


【風属性でない者! そこに並べ!】


【コバルト、どうしたのです? 声を荒らげて】


【あ……お祖父(ルバイル)様……】


「管楽器の匠神様が、吹き方 知りたいって大騒ぎなの~♪

 でねっ、風な皆様は大喜びで帰っちゃったけど、そぉでない匠神様が落ち込んじゃったから、始祖様が『風くらい与えてやる!』って言っちゃったの~♪」


【サクラも風を貰うのですか?】


「うんっ♪」一緒に並んでいる。


【一気に供与する! 覚悟しろっ!】


【では、お手伝いしましょう】


【ルバイル様、光で後押しですか?】


【バナジンも手伝ってくださいますか?】


【はい♪】


ルバイルとバナジンがコバルトの背に掌を当て、気を高める。


「せ~のっ♪」


バフッ!!!!!


光の塊が吹き抜け、弧を描いて戻り、背後からサクラと匠神達を包んだ。


響動(どよ)めきが、受けた者だけでなく、周囲からも湧いた。


「スッゲー……」


「あ♪ クロ兄、姫♪ 来てたんだ~♪

 見て見て~♪ 風~♪」ヒュゴッ!


「「わっ!」 イキナリ強過ぎだっ!」


 匠神達も掌や口から風を出して確かめている。

そして満面の笑みを交わし合った後、

【ありがとうございました!♪】

一斉に三神に礼をした。


【あとは己次第だ。

 元のように吹けるよう修行しろ】ニヤッ。


そう言って去ろうとしたコバルトが膝を突いた。


「クロ兄、笛!」

サクラが回復を奏で始めた。


クロも慌てて笛を出し、合わせる。


匠神達は奏でる練習を兼ねて、音を拾い始めた。


(クロ兄、修行は?)


(それがなぁ……姫が、それどころじゃなくてな)


(なんで?)


(アオは、どこ行ったんだ?)


(ゴルチル様に連れてかれた~)


(そっか……)


(俺じゃダメ?)


(つーか、ルリさんに聞きたいんだと)


(アンズじゃダメ?)


(ダメ……だろな……婚約者の誰かならいいんだろうけどな)


(ふぅん。姫と話していい?)


(頼む。どーすりゃいいのかサッパリなんだ)


(ん)(姫、どしたの?)


(サクラか……ルリ殿を知らぬか?)


(まだ帰ってないけど、帰るまで暇つぶしに、アオ兄ん家でアンズと話す?)


(そぅじゃな……お頼み申す)


(呼ぶから待っててねっ)



 少ししてアンズが現れた。

「サクラ様、どうしたの?

 あ、クロお兄様、静香お姉様。こんばんは♪」


(姫の話し相手お願い~)

アンズに、ではなくクロと姫に伝えた。


「はい♪ 静香お姉様、客間に参りましょ♪」


「うむ……忝ないのぅ」


「そんなこと――あ♪ お菓子を選びましょ♪」


「菓子とな?♪」


「参りましょ♪」


「うむっ♪」


アンズ(サクラ複製)は姫を連れて屋敷に入った。



(お前……扱いが上手いな……)


(王子としてのタシナミ~♪)


(そーいや、これからずっとオレやるのか?)


(やるよ。クロ兄が戦えるようになる迄ね)


(その口調……真剣ってコトなんだな?)


(クロ兄が先陣切ってくれないと、魔王の城には乗り込めないんだ。

 クロ兄が仕上がったら直ぐに行くよ)


(どうしてオレなんだ?)


(光が入れないから。

 光に対しての結界が何重にも在るんだよ。

 だから人神様と魔神様、光でない兄貴達が先に入って、その結界を破壊してくれないと倒せないんだよ)


(だったら、ハク兄とアカとフジで行けるんじゃねぇのか?)


(クロ兄の供与と神眼が、どうしても必要なんだよ。

 勿論、護りのアカ兄も、薬で無属性攻撃できるフジ兄も、何でも真似できるハク兄も必要だよ。

 誰ひとり欠けてもダメなんだ。

 七人揃って行かなきゃダメなんだよ)


(オレも……そっか。

 なら、輝竜はサクラに任せる。

 修行に集中するよ)


(うんっ♪ まっかせて~♪)


(え? おいっ! サクラ!?)


(ちゃ~んとクロ兄する~♪)きゃははっ♪




♯♯ アオの屋敷 客間 ♯♯


 爽蛇が用意した菓子を食べまくっていた姫が手を止めた。


「どうかなさいましたか?」


「アンズ殿は……(おのこ)を好きになった事は……恋をした事はあるのか?

 あ……アオが好きなのじゃったな。

 アオの事は如何じゃ?」


「アオお兄様に対する想いも……恋なのか、憧れなのか……よく分かりません。

 でも、『今』を壊したくないという思いは、とても強くて……この形で、ずっと一緒に居たいと思っていますよ」


「アオに……触れたいとは思わぬのか?」


「それは……」


「ワラワはクロと共に居りたいのじゃ。

 ずっと触れて居りたいのじゃ。

 抱き包まれると、真の幸せを感じるのじゃ。

 それを……知ってしもぅたのじゃ……」


「クロお兄様に想いが通じて良かったですね」


「そぅなのじゃが……クロは輝竜(アイドル)なのじゃ。

 大勢の(おなご)共が、クロを見つめるのが、許せぬよぅになってしもぅたのじゃ。

 ワラワは……浅ましき女になってしもぅたのじゃ」


「それは、普通の感情ですよ。

 誰しも好きな方とは触れ合っていたいし、独占したくなるものですよ」


「アンズ殿は、アオを独占したいのか?」


「もうっ、私の事は、いいですからっ」


「アンズ殿は可愛いのぅ」


「静香お姉様、修行が無理な程のお悩みではありませんでしたの?

 私の事なんて放っておいてくださいねっ」


「そぅじゃった……」


「静香お姉様の感情は普通の事ですし、クロお兄様と共に修行なさるのですから、もう問題はありませんよね?」


「もぅひとつ……輝竜の事なのじゃ。

 ワラワはクロを人界に留めとぅて、人界から離れられぬよぅ、輝竜を始めてしもぅたのじゃ。

 真の馬鹿者なのじゃ」


「人が竜を認知するキッカケになったのですから、竜は喜んでおりますよ。

 ですので、そのようにご自身を責めなくてもよいのですよ。

 王子様方も、お仕事として、こなしていらっしゃいますし大丈夫ですよ。

 それに、暫くはサクラ様がクロお兄様をなさるそうですから、輝竜衆(ファン)の皆様が見ているのは、クロお兄様ではありませんわ」


「其は、安堵しておる。嬉しぃのじゃ。

 しかし、始めたワラワだけが良い思いをするのは卑怯なのじゃ。

 婚約者の皆も苦しぃ思いをしておる筈なのじゃ!

 王子達が輝竜衆からの眼差しや声を浴びておるのを苦しぃ思いで耐えておる筈なのじゃ!

 触れ合う事も出来ず、婚約者だとも言えず、耐えさせておるのはワラワなのじゃっ!」


「静香お姉様、婚約者の皆様は今、妃修行で、とてもとてもお忙しいのですよ。

 将来、妃として共に過ごす為に頑張っていらっしゃるのです。

 ですので、今は輝竜をしていなくても我慢の時なのですよ。

 それに王子様方は、人界の任の真っ最中です。

 そもそも会う事が許されていないのですよ」


「じゃが……来ておるぞ?」


「はい。王子様方のご活躍が天界にも届きましたので、婚約者の皆様もステージを見に行く事が許されたのです。

 ですので喜んでおられますよ。

 輝竜をしていなければ会えなかったのですし、ステージでキラキラなさっている王子様方を見られるのですから」


「しかし、見ておるのは大勢の女共じゃぞ?」


「そんな事、慣れていらっしゃいますよぉ。

 注目を浴びるなんて、王子様方にとっては日常茶飯事なんですよ?

 今更ですよ」うふっ♪


「さ、然様か……」


「でも、私が申しても信じられませんよね?

 婚約者の皆様の所に参りましょ♪」




♯♯ 轟雷の祠 ♯♯


「こんな珍しい所に連れ込んでおいて、黙ったままなんて……いったい何のお話なんですか?

 俺はジャスパ様を探したいんですけど?」


【アオ……すまない。

 いや、それよりも……本当に見付け出してくれたのだな……ありがとう】


「ゴルチル様らしくない事を仰る暇がお有りなのでしたら、お手伝いくださいませんか?」


【よいのか? 私が行っても……】


「そんな弱々しいゴルチル様なんて見たくもありませんが、仲間外れにしようなどとは思っていませんよ。

 ただ、プラチナ様には、ジャスパ様を見つける迄は知られたくありませんので、一緒にいらっしゃるゴルチル様も避けざるを得なかっただけですよ」


【御前は、本当に大きな奴だな】


「過大評価も甚だしいですね。

 何度も申しておりますが、だからと言って、最高神にも青身神にも成りませんので。

 見てはいられないので、酒倉に戻ります」


【待てっ! ジャスパ様は……龍神帝王には、されていないのだな?】


「そうしようとして拐ったのは確かだと思いますよ。

 でも……されていない、と俺の勘が言っています。


 今日 探した場所には、いらっしゃらない……一度は異空間から出されたんだと思います。

 でも、龍神帝王にしようとしたけど失敗して、もう一度、異空間に封じられてしまったのではないかと思うんです。

 ロズオラ様とウォメロ様から感じた、俺の知らない気は、ジャスパ様のものな筈です。


 同じ気を他の場所で微かに感じたんですよ。

 だから大丈夫です。

 そこを探したいので行きますね」曲空。


【おいっ!】


(ゴルチル様も、いつでもどうぞ)





銀「まだ幼い、というのは、どうだ?」


常「とっくに使っている。

  それでも許嫁として、とシツコイんだよ」


銀「実は男だと――」


常「言ってもいいのか?」


銀「いや……冗談だ」


常「王族として、嘘をついていたなどとは

  言えないだろ」


銀「その通りだな……そうだ!

  呪で女にされてしまって――」


常「それでも、解呪の見込みが無いのなら

  女性のままだから嫁に欲しいと言われるぞ。

  あれだけ可愛くて聡明なら、物好きなんぞ

  いくらでもいる」


銀「トキワも可愛いと思っているのか?」


常「見た目も確かにだが、性格が可愛い」


銀「そうか♪ トキワも――あ、そこだ!

  息子達は皆同じ姿になるが、アンズの

  可愛さがズバ抜けているのは笑顔だからか。

  そういう事か……ふむ。

  虹紲補佐にしたのは我ながら良策だったな。

  毎日、顔を出してくれるからな。

  次は俺の秘書にでも――」


常「ギン……話を戻すぞ」


銀「あ……」


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