第九十八話・おっさん、ギルドに向かう途中で絡まれる
ひと騒がせな昨日の出来事から、夜が明けた次の朝。
「ぷあぁぁ~~!ね、ねむい......」
俺は昨日の疲れからなのか、中々眠気が取れず、寝ぼけ眼で
ふらふらとしながら、ルコールと共にギルドへ歩いていた。
「もう、レンヤ!みっともなく口を大きく開けるんじゃない!それに
口元のヨダレをちゃんと拭きなさい!ったく...良い歳した大人なんだから、
シャキンとしてよねっ!」
「お前は俺のお袋か!それにどんだけ歳を食っていても、朝の活動はだらし
なくなるものなんだよ!」
ぶつぶつお袋モードで小言を言ってくるルコールに、ジト目と苦笑を
交えながら、俺は軽い抗議を口にする。
そんな他愛もない談笑をルコールとやり取りしながら、リタイの町中を
歩いていると、
「ぐふふ...ようよう、そこのおっさん!こんな朝っぱらから可愛い女を
連れてどこに行こうってんだ?」
「なぁ、なぁ、そこの可愛いお嬢さん。そんなおっさんは放っておいてよ、
俺達と一緒に遊ばねぇか、げへへへ...」
俺は酒場の外で飲んだくれていた厳つい顔をした二人組から、因縁を
つけられ絡まれていた。
「............」
しかし毎度思うんだが、どうしてこういう連中って、いっつも同じ様な
小馬鹿にした笑い方をするんだろうな?
正直、こんな間抜けな笑い方...怖いというより、逆にイラッとしかして
こないんだが。
「おい、ごらあ!おっさんっ!俺様の事を無視してんじゃねぇぞぉぉおっ!」
「そこの女!お前もだぁぁっ!」
レンヤとルコールが自分達に全く反応を示さない事に、厳つい顔の二人組が
苛立って、恫喝な叫声を荒らげる。
「............はぁ」
それにこいつら、自分らはイキって煽り捲ってくるくせに、自分達が
煽られ返されると、途端にめちゃくちゃキレて激昂してくるよな。
煽られ耐性が無さ過ぎだし、怒りの沸点も低過ぎだろう。
自分達がやられて不快に感じるなら、他人にもやるなよ。
ふう...やれやれ。
俺は憐憫なる表情で、顔を真っ赤にして怒りを露にしている厳つい顔の
男二人組を見ると、思わず深い嘆息が洩れてしまう。
「ぐごらぁぁあ!てめぇぇええっ!な、なんだ、その憐れみな全開の表
情はぁぁぁあっ!?おっさんの分際でクソ生意気だぞぉぉぉおおっ!」
「だあ!もういいっ!小娘、こんなおっさんは放っておいて、さっさと
こっちに来いやぁぁぁあ――――っ!!」
レンヤの憐れむ態度にもう我慢が出来んと、怒りが限界な厳つい顔をした
男二人組...その片方がルコールに近づき、その手を強引にバッと掴む。
...が、その瞬間、
「小汚い手であたしに触わんなっ!!」
腕を掴まれた事にイラッとしたルコールが、その手をパシッと振り払う。
「な!?て、てめぇ、よくもやりや――――――ぶろがぁぁああっ!?」
そして間を入れず、ルコールは『気合い』を発動させて下から上に
拳を振り上げ、厳つい顔の男のどてっ腹にボディブローを叩き込むと、
厳つい顔の男の身体がその衝撃で空高くへとぶっ飛んで行った。
そして数秒後、
「のべぇぇばっ!!?」
空高くぶっ飛ばされた厳つい顔の男が、空から落ちてきて地面に
叩きつけられると、身体をピクピクさせながら気絶して動かなくなる。
 




