第九十七話・そして食堂へ
「はぁぁ...レンヤ。こんな程度の奴等に面倒をかけられないでよぉ。
そんなんじゃ、さっきも言ったけどさ、この世界で生きていく事は
難しいわよっ!」
ルコールがやれやれといったポーズを取って嘆息を吐くと、呆れ口調で
レンヤを見ながら軽い説教を垂れくる。
そんなルコールの説教を受け、
「はは...サーセン。今度からはマジ頑張ります......」
俺は頬をポリポリ掻きながらニガ笑いをこぼつつ、反省の色を見せる。
「......よし!反省を聞いた事だし、さぁ~レンヤ!今度こそ晩飯を
食べに食堂へ行くわよ!」
ルコールが説教モードから飯食いモードへと気持ちを切り替えると、
レンヤの袖をグイッと強く掴み、そして食堂の方へと身体を引っ張る。
「わ、分かったから、そんなに引っ張るなって!」
こいつらと戯れたせいで、お腹のやつが本格的に空いてきやがったしな。
「それじゃ、プレシア。イケメン君達の後始末、よろしく頼むなっ!」
ルコールから食堂へと引っ張られて行く中、俺はプレシアに顔を向け、
そう述べるとビシッと敬礼ポーズを取る。
「了解した、おじ様!こっちの方は任せておいて♪...って言いたいけど、
ここまでやっちゃうと、誤魔化すのが難しいそうだなぁ。さてはて、
一体どんな感じでギルドに報告したらよいのやら?......ヘタな言い訳でも
しようものなら、ランスさん達の親...特に母親が出ばって来て、色々と
厄介で面倒だろうしなぁ......う~~~んっ!」
レンヤに頼まれたランスの後始末の件を、プレシアが両腕を組んで
天を仰ぎながら、一体どうやってランス達の後始末を上手く処理
出来るか、あれだこれだと思考を巡らせて悩んでいると、
「......あ、そうそう。ここにいるみんなにこれだけは言っておくね♪」
ルコールがそう言うと、プレシアと冒険者のいる方向に向かって
静かに顔を振り返る。
そして、
「もしあたしやレンヤに道理や筋の通らない不条理な事がひとつでも
起きようものなら、あなた達...いいえ、このリタイの町に全責任を取って
もらうつもりだから......覚悟しておいてねぇっ♪」
ギフト技...『竜の威圧』を発動させながら、周囲一帯に殺気の込もった
ニコニコ笑顔を振り撒いて忠告をする。
「「「「「―――――――――はぎゃぁぁあああっ!!!??」」」」」
そんなルコールから発される『竜の威圧』による威圧感で、プレシアを
始め、アンナリッタや回りにいた冒険者達の全身から血の気がサァーッと
引いて身の毛が弥立つと、みんなの表情がドンドン青ざめていく。
「まぁ、あたし的には別に反してくれても、ちっとも構わないんだけどさぁ。
でももしそういった行動に出てきた場合...そこで滑稽なくらいに無様に転がって
いる連中みたく、優しい意趣返しでは済ませないつもりだから、
この言葉を努々忘れず、その頭と心にしっかりと刻んでおくように♪良い?
分かったかな♪」
ルコールは『竜の威圧』のLVを更に上げ、両の目に力を入れると、周囲一帯に
先程より更に殺気の込もった笑顔を振り撒く。
「「「「「―――――――ひぃぎゃぁぁぁああっっ!!!???」」」」」
すると、プレシアやアンナリッタ、そして回りの冒険者達に恐怖感や絶望感、
そんな負の感情すべてが襲ってくる衝動に押し潰され、
その身は獄寒の中にいるかの様に、ブルブルガタガタと震え出し、一切の
言葉を発せないくらいに、上下の歯をカチカチと打ち鳴らす。
...がしかし、
ルコールの言葉に返事を返さないとヤバいと、その場にいた全員の思考が
直感すると、
「「「「「りょ、りょ、了解でありますぅぅぅう―――っ!!!」」」」」
無理矢理喉から声を張り上げ、ルコールの言葉に対して返事を返す。
「うむうむ。分かればよろしい♪」
その場にいる全員から良い返事がもらえ、満足したルコールは、
放っていた竜の威圧をスッと解除した。
「さて...こいつらに釘は刺したし、改めて食堂へレッツゴーだよ、レンヤ!」
ルコールがそう述べると、レンヤの首根っこを掴んでグイッと持ち上げる。
「ちょっと待って、ルコールさん!?そ、そんな速さで引っ張られたら、
く、首が締まるからっ!首が締まっちゃうからぁぁぁぁあ――――っ!!?」
そしてレンヤの嘆願なる叫びをガン無視するルコールは、そのまま強引に
レンヤを引っ張って、食堂の中へと猛スピードで駆けて行くのだった。




