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第九十六話・待ちぼうけ


「さて......っと!」


ルコールが両手を軽くパンパンと叩き、両肩をコキコキと鳴らしながら

戦闘体勢を解いてひと呼吸すると、レンヤのいる方角に身体を向ける。


そして仁王立ちのポーズで人差し指をビシッと突きつけて、額に浮かんだ

青筋をピクピクとさせながら、


「ちょっと、レンヤッ!何でいつまで経っても食堂に来ないんだのさっ!

そのせいでお腹の音を聞きながら、何十分も御飯が食えずに待ちぼうけを

食らってしまったじゃないか!少しはあたしの腹さんの身にもなれって

いうのよっ!」


食堂でずっと待たされた事への愚痴と不満を、レンヤにこぼしまくる。


それを聞いたレンヤは、


「はああぁぁあっ!何を言ってんだ!それはお前が俺を置いてきぼりに

して、自分だけで先に食堂に行ったからだろうがっ!」


「そのせいで俺が今、どれだけ厄介で面倒な事に巻き込まれていると

思っているんだぁぁぁあっ!!」


...と、


叫声を荒らげ、ルコールに抗議をしたかったが、


それを言ってしまうと絶対に逆ギレされるのは目に見えているので、

レンヤはその言葉をグッと喉奥に飲み込んだ。


「......別に俺を待たなくても、お前だけ先に食べていたら良かったじゃ

ないか?」


「はあぁ?なに言ってんの!あたしだけ先に食える訳ないじゃんかっ!」


――え?


ひ、ひょっとして、こいつ。


自分だけ先に食べるのが悪いと思って、俺が来るのを律儀に待っていて

くれていたのか?


へぇ、意外に優しい所があるじゃ――


「―――だって、お金はあんたが持ってるじゃないかっ!」


俺がルコールの心意気に感動していたら、それを遮るような勢いで

ルコールが俺の腰ベルト辺りに人差し指を突き付け、そして眉をヒクヒク

させながら、苛立ちの表情を見せてくる。


「あ!そういえば、そうだった。資金は全部ここに入ってるんだっけか?」


ルコールに言われてその事に気づいた俺は、腰ベルトにぶら下げている硬貨の

入った皮袋に目線を向けた。


「でもお前、自分のお金は持っていなかったのか?お前って、確か何百年も

昔からこの世界で生きてるんだろ?」


「おいおい。あたしがどんだけぶりに外の町に出てきたと思ってんのよ!

どこへしまい込んだかなんて全く覚えていないわよ!それに仮にあったと

しても、そんな何百年も昔のお金なんて、値段の上昇変動で価値なんて

ある訳ないじゃんっ!」


「ああ...言われてみれば、確かにそうだな......」


ルコールの言う様に、百年以上も年月が経っていたら、お金の価値度も

違がってくるか。


俺の世界でもそんだけ昔のお金なんぞ、露程も価値はないしな。


まぁプレミア物は例外だけど。


さて...これ以上、あ~だこ~だとごねていたら、こいつからまた

アイアンクローを食らうな。


それは御免被る。


...と、言う訳で、


取り敢えず、待たせた事を素直にルコールに謝っておくか。


「あははは...わ、悪かったな、ルコール。お金の事に気づかなくてさ!

お、俺だってホントは早く食堂に行きたかったんだけどよ、ちょいと

ばかり、厄介で面倒事に巻き込まれてしまってさ!」


俺は頭をポリポリと掻きながらニガ笑いを浮かべ、ルコールに謝ると、

俺は、何で食堂に行くのが遅れたのか、その原因であるイケメン君と

その仲間達のいる方角に顔をスッと向ける。


「厄介で面倒な事に...巻き込まれた?」


レンヤの見ている目線の先に、ルコールが目線を移すと、


「ああ、なるほど。こいつらのせいか......」


レンヤが食堂に来れなかった理由(わけ)を即座に理解した。


「そっかそっか...なるほど、なるほどねぇ♪」


そしてルコールはニコッと笑い、アンナリッタを静かに見つめると、

その眼光からドス黒い殺気のオーラがあふれ出てくる。


「は、は、ははひぃぃぃいぃぃぃぃ――――――――――っっ!!?」

すす、すいませんでした!すいませんでしたっ!すいませんでしたっ!!

ほほほ、本当にぃぃぃ、すいませんでしたぁぁぁぁぁああ――――っ!!」


ルコールから「お前達のせいで、あたしは待ちぼうけを食らってしまった

のか......殺すぞっ!」と言わんばかりの眼光を向けられたアンナリッタは、

「こ、これはヤバい!?このままでは確実に殺されてしまうっ!?」と、

目を大きく見開き、絶望感でブルブルと身が震え上がるが否や、顔が床に

めり込む勢いでガバッとひれ伏すように土下座をした後、ルコールに対して、

何度も何度も謝罪とお詫びの言葉を口にするのだった。


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― 新着の感想 ―
 結局、おっさん何もしてないような気が……
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