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第九十四話・偽善と躊躇


「.........これはヒドイ!」


い、いくら相手から襲いかかってきたとはいえ、女性の顔を躊躇もなく

何度も攻撃するなんて、


あ、あの魔法使いの娘、思いっきり顔が変形してるじゃんか。


相棒であるルコールによる、あまりにも迷いなき無慈悲な攻撃に対し、

レンヤは頬をヒクヒクさせながら、ドン引きをしてしまう。


「......なぁ、ルコールさん。相手はさ、ガキでしかも女性なんだから、

もうちょい手加減ってものを加えてやっても良かったんじゃないのか?」


俺は困惑した表情でルコールにそう聞くと、


「......ハァ、何を言うかと思えば、馬鹿なことを......」


ルコールがやれやれと言わんばかりの口調で、平和ボケなレンヤの言葉に

深い嘆息を吐いてくる。


「いい、レンヤ。よく聞きなさいよ!こいつらはね、あたしに対して敵意を

見せたの。その時点でこいつらはあたしの敵確定なんだよ。レンヤの言うような

中途半端な偽善と迷いある躊躇はね、死を招く結果に繋がるんだよ!」


そしてルコールは真面目な顔でレンヤを見ると、この世界の(ことわり)について

語っていく。


「あんたもさ、この先いつまでこの世界にいるのか、それはわからないけどさ。

それまではこの世界で生きていかなきゃいけないんだぞ。だからあんたの

その弛みきった心に、あたしのこの言葉をしっかりと刻んでおきなさい!

いいわねぇっ!」


そしてルコールが世界の(ことわり)をレンヤに忠告をし終えた後、レンヤの心臓

辺りに人差し指を持っていき、釘を刺す様にトントンと叩いた。


う、うぐ...た、確かにルコールの言っている事は正論で正しいと思う。


この世界って、命のやり取り展開(イベント)に巻き込まれる確率が凄く

高かったからな。


そう...


あの城の連中から理不尽な理由で、監禁殺人をされそうになったり、


ルコールのいたダンジョンを彷徨って死にかけたり、


盗賊との戦闘、


のち要らぬ疑いをかけられ、騎士軍団から拘束をされそうになったり、


んでもって、この町に着いたら、着いたで、


冒険者からの強盗行為に逢うわ、


俺様主義の理論を振り撒いたアホな連中から、厄介極まる攻撃を

受けてしまう。


もしこいつらへの対抗を躊躇しようものなら、ホント命を落としかねない

案件ばっかりだったからな。


そしてあの王家の女性達を襲っていた盗賊みたいな、人でなしで非道な事を

平気でやってのける連中を相手にする時には、そいつらの命を刈り取る覚悟を

決めなきゃいけない事も分かっている。


俺だって自分の命は惜しいし、そんな連中のせいで死にたくもない。


偽善や躊躇を見せて、一番守るべき自分の命を疎かにして散らすなんて、

本当に馬鹿馬鹿しい事だし、本末転倒も良いところだ。


「......ふ。ありがとうな、ルコール。お前のそのありがたくも重みのある

言葉、肝に銘じる如く、俺のここへとしっかり刻み込んでおくよ!」


ルコールの語る真面目な忠告に、俺はニコリと微笑むと、先程ルコールが

指を差した自分の胸当たりをドンッと強く叩き、感謝の言葉を口にする。


「うむ!わかれば、よろしい♪」


そんな俺の感謝に、ルコールはしたり顔で満足な笑顔を見せる。


しかし流石は、うん百歳のババアの説法だよな。


俺の心に違和感なく、ガンッと響いてきたよ!


俺がルコールからの説教と言う名の忠告に対し、少し失敬な態度で

感嘆していると、


「し、信じられません!?こ、こんなの嘘ですわよね......!?」


イケメン君のパーティ仲間のひとり、女神官の困惑している嘆きの声が

聞こえてきた。


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