第九十三話・必死な抵抗...それでも
「くくく...これで準備が万端だぜ!さぁ覚悟しろよ、小娘っ!今度は
このあたいが、その可愛い面をボコボコに砕いてやるからなぁぁあっ!」
赤く燃え上がっている両手の拳を何度かバンバンと叩くと、ネージュが
思いっきり床を蹴りあげて、ルコールへと突撃して行く!
『あはは!砕けろぉぉお!豪炎鉄破・連打けぇぇえぇぇんっ!!』
そしてルコールの顔をロックすると、ネージュが赤く燃え上がっている
両の拳で連打攻撃を繰り出す!
「いやはや、これは中々凄い連打攻撃だねぇ。顔に掛かってくる熱風の
風圧であたしの身体がかっかしているよ♪」
「くそ...くそ...何でだ!何で当たらないんだよっ!?この連打攻撃には
索敵補正が付いているんだぞ!それなのに、何でえぇ...何でぇぇえっ!!」
命中力の高いはず連打攻撃だというのに、それをいとも簡単にひょい
ひょいと回避しているルコールに、ネージュが驚愕と悔しさの混じった
表情で動揺し、動揺と焦りを見せてくる。
「ふふ...ゴメンね。あたしにもその索敵補正みたく、自動補正のギフト技が
あってさ、ちなみに『観察眼』という補正なんだけどねぇ♪」
「か、観察眼!?観察眼って確か、相手の攻撃を眼で自動追尾できるという
補正ギフト!?」
ルコールが口にしたギフトの名に、ネージュが先程よりも更に動揺を見せる。
「で、でも、あれは人族には習得できないギフ――」
「ふふ。隙あり♪」
「―――ハッ!?」
ルコールはその隙を逃さず一気にネージュへ近づくと、身体をグッと捻って
半回転させる。
「し、しまった!また油断して気を抜――――グハァァアアッ!!」
隙をつかれネージュが慌てるも既に遅く、ルコールの放った回し蹴りが
ネージュの頬を捉えて炸裂すると、ネージュの身体は勢いよくグルグルと
回転しながら飛んでいき、先程ランス達の休憩していたテーブルへと
叩きつけられた!
「う...うぐぐ...クソ......あ、あたいの融合を以てしても...全く攻撃が通じない
なんて...。観察眼をギフトに持ち、そしてこの...尋常なき攻撃力!こ、小娘...
あんた...ぜ、絶対、人族じゃない...だろ...う......グガァ!!」
崩れたテーブルの中からネージュが意識朦朧としながら出てきて、ルコールに
対し、震える口で無念の言葉を綴っていく。
そして無念の言葉を全て吐き終えると、ネージュは再びその場にバタンと音を
立てて倒れ込んで気絶する。
「人族じゃない...か」
床に倒れ込んで気絶しているネージュの下に、ルコールがゆっくりと
近づいて行き、そして気絶しているネージュに向けて聞こえないくらいの
か細き声で「ふふ。それ正解♪」と呟いた。




