第八十話・おっさん、お腹が空く
「帝国グランディーネか...それじゃ早速、明日朝一番に隣の大陸の
地図を購入しにいかないといけないねぇ!」
「ああ、そうだな。地図があるとないとでは、冒険の爽快さがまるで
雲泥の差だもんなっ!」
床に広げたこの大陸の地図を見て、俺はウンウンと頭を何度も縦に振る。
「あ。でも朝一番じゃなくてもいいぞ。どうせギルドに寄るんだから、
その途中で買っていけばいいんだからさ!」
グゥゥ~~。
あ。今後の予定が決まって気が抜けたら、何かお腹が空いてきたな。
「なぁ、ルコール。腹が空いてきたし、食堂が閉まる前に今から何か
美味しいもんでも食いに行かねぇか?」
「勿論、行くに決まってんじゃん♪」
「...よっしゃ。んじゃ、善は急げと言うし。早速、飯を食いに食堂へ
行こうぜ♪」
「おう♪」
俺はルコールから同意を得ると、床に広げていた地図をキレイに畳んで
アイテムボックスにしまい込み、そして食事を取る為にルコールと一緒に
食堂へと向かう。
「あら、あなた達は先程の?ふふ。やっぱりお腹が空いちゃいましたかぁ♪」
食堂に向かう為、二階から降りてきた俺達に宿屋の元気な娘さんが気付くと、
元気な声を上げて話しかけてくる。
「まぁね。それで食堂の方はまだ開いているかな?」
そんな元気な娘さんに、俺は食堂の営業時間を聞いてみると、
「はい。ギリな時間ではありますが、今から行っても十分間に合うと
思うますよ~♪」
元気な娘さんが時計のある方向に指をビシッと差して、大丈夫だと
俺達に伝える。
「そっか、ありがとう!えっと......」
そ、そういえば、この娘の元気力に押されて、まだ名前を聞いて
なかったっけ?
「...ねぇ、キミ。もし差し支えなかったら、キミのお名前を伺っても
いいかな?」
「あらら?ひょっとして、お客様。私の事...お口説きですかぁ~?
キャッ♪」
レンヤの質問の意味を勘違いした宿屋の元気な娘さんが、身体を左右に
クネクネとさせ、黄色い声を口からこぼれる。
「口説くって...なんでそうなる。俺は世話になるこの宿屋で、一番顔を
合わせるキミだから、名前を聞いただけだ。キミの名前を知らないと
用事を頼む時に、何かと不便だろう?」
「うわ...お客様って、ホントにつまらないお人ですねぇ......そこは
動揺して顔を真っ赤にする場面ですよ......ハァ、やれやれです」
ナンパを冷静に否定してくるレンヤに、宿屋の元気な娘さんが両の瞳を
キョトンとさせた後、レンヤのその態度に呆れてしまい、軽い嘆息を
吐いてしまう。
「ふふ。スマンな、娘さん。俺はあいにく、ボン!キュ!ボン!...にしか
興味がないんでな♪」
「―――はうっ!?」
元気な娘さんから二回もつまらないと言われたレンヤは、その意趣返しと
言わんばかりに、皮肉のこもった口調で意地悪を言い返した。




