第七十九話・おっさん、今後の予定を決定する
「今、ふと思ったんだが、お前って俺を召喚した国の姫さん、つまりは
王族とも知り合いなんだよな?そしてその帝国の王とも知り合いって
言うし。お前ってもしかして、実は凄い奴なのか?」
「えへへ♪やっと、あたしの実力と偉大さを理解したようだね、レンヤ君♪」
レンヤが驚きの表情を見せていると、ルコールがドヤ顔をして手を腰に
バンッと当てると、思いっきりふんぞり反る。
「はは...そうだな。だからそんな凄い人物とは畏れ多くて、とても一緒に
旅なんて出来やしないよ!くぅ、し、仕方がない...残念だが、お前とは
ここでお別れを――」
「......ん?レンヤさん、今な~んか、とんでもない事を言おうとしなかった♪」
残念と言う割には表情が緩み、目元が綻んでいるレンヤにイラッときたのか、
ニコニコしている筈なのに、全く笑っていない表情でルコールが右手を
スッと前に突き出し、そして指を動かしながら、レンヤにジワリジワリと
近づいて行く。
「はう!?き、気のせいだって、ルコールさん!キ、キミの気のせいっ!」
「いいや、気のせいじゃないね!今完全に「厄介払いができたぜ!」って
顔をしてたわぁぁあああっ!!」
「ひえぇええっ!やめてぇぇぇえっ!?ゆ、指をワキワキしながら、
こっちに来な――――アギャァァアッッ!!?」
ルコールが怒りの叫声を荒らげると同時に、逃げようとする俺の顔を
思いっきりガシッと掴み、そして力いっぱいギュッと締め上げる。
―――数分後。
「......ったく、あたしは絶対、意地でも付いて行くんだからねぇっ!」
「いててて...そんなムキになるよ、ルコール。ちょっとした冗談なん
だからさ......」
「むむむぅぅぅうっ!」
レンヤは顔を擦りながら両手をパンッと合わせ、ルコールに申し訳
なかったと謝罪するが、しかしルコールはまだ許せないのか、
未だに頬を大きくプクッと膨らませて怒っている。
「ほら、ほら。むくれない、むくれない♪大体、俺の旅にお前は絶対に
かかす事のできない、必須な存在なんだぞ!そんな奴を置いていくわけが
ないだろう♪」
膨らませているルコールの頬を、レンヤがニカッと微笑んでツンツンつつくと、
如何にルコールが重要かを伝える。
「そ、そうかぁ...あたしは必須な存在かぁ~えへへ♪もうしょうがないなぁ~
今回だけぞ。特別に許してあげる♪」
「ハハァッ!マジ、ありがと、ございっ!」
顔を真っ赤に染めながら、ルコールがレンヤの暴言を許すと口にすると、
レンヤが深々と頭を大きく下げ、その言葉に感謝する。
そしてルコールのご機嫌取りに成功したレンヤは、ルコールに見えない
角度で「こいつ、チョロいな!」と呟き、ニヤリと口角を上げる。
「さて...話は戻るが、帝国のお偉いさんがルコールの知り合いなら、
まず不備は起こらないか......よし、決めた!資金稼ぎがある程度
済んだら、その隣の大陸にある、『帝国グランディーネ』って場所に
行ってみるとするかっ!」
レンヤが行き先を決めると、ルコールにそれでいいかと訊ねると、
「お。帝国グランディーネに行くって決めたんだね?了解した♪」
ルコールは元気よくレンヤに返事を返し、そして完璧な敬礼ポーズを
ビシッと取った。




