第六十七話・リコット王女の本音 その1
「はぁ、これは参りましたね......」
私は部屋で行っていた書類の申請や受理の整理の作業を一旦止めると、
頬杖 をつきながらため息を吐き、ある事を考えていた。
「うう...緊張のあまり、あの御方と殆ど会話ができなかったばかりに、
よもやこの様な展開へ陥ろうとは...」
そう...あれは今から数日前の事、
私は前日から告げられていたお父様からの命...魔王を倒せし勇者様の
召喚を実行するべく、ギガン城の地下に設置した【勇者召喚の儀】の
場へ移動し、召喚を執り行った。
そして神官達の魔力を糧に何とか、この地に勇者様を呼び寄せる事へと
成功する。
私の召喚によって呼ばれし勇者様は、二人の男性と二人の女性、合計四人の
勇者様だった。
ひとりは爽やかな笑顔が似合いそうな、いかにもモテるだろうオーラを放つ、
イケメンな少年。
そのイケメン少年の横に、ポニーテールをなびかせた少女と、大きい一本の
みつあみを編んだ少女。
見た感じ、ポニーテールの少女の方は明るそうな性格で、こっちのみつあみの
少女の方は、その逆な性格ですか?
私の観察眼をよそに、その少女二人が挙動不審な表情を浮かべて、周囲を
キョロキョロと見渡している。
はは...あの挙動不審も仕方がない事ですわね。
だって、いきなり見た事もないこんな地下な場所...しかもその周囲には
ゴツい兵士や見た目がヤバい神官達ですから...
私なら、速攻で気絶する自信がありますよ!
私は周りにいる筋肉な兵士やニヒルな神官を見渡し、思わずニガ笑いが
口からこぼれた。
まぁそんな事は横に置いておいて...
私が注目すべきは、最後のこの勇者様!
召喚した勇者様達の中で、数段飛び抜けたオーラを放っていらっしゃった
この御方ですっ!!
四人の勇者様を召喚した瞬間、私の目はこの御方に釘付けとなっていた。
そう、他の勇者様よりもひと回りくらい年のお離れになった、
このダンディーな勇者様にっ!
おや?髪を整えるのが面倒くさいのでしょうか、少しボサッとした
髪型をしていらっしゃいますね?
でもその髪型、モロ私の好みのストライクですわっ!
こちらも面倒くさいのでしょうか、無精髭ですね?
しかしこの無精髭がまたいい感じに、この御方の風貌にアクセントして
いますねぇ~っ!
そして!とどめはこの如何にも、やる気がなさそうでありそうで、
やっぱりなさそうなつぶらな黒い瞳っ!
嗚呼~もう素敵ですっ!
その瞳に吸い込まれたいですわぁっ!
そんな劇的な出会いをこのダンディーな御方と果たした私は、今まで
心に感じた事のなかった衝撃と喫驚と緊張で、身体が今にも崩れて
倒れてしまいそうになる。




