第六十六話・屋台と暗躍
「あ?でもよ、その情報ってかなり昔の情報なんだろ?その屋台通りは
まだこのリタイに存在しているのか?」
俺はルコールと会話をしている途中で、それにふと気付く。
「ふふ。それは心配ご無用だよ!だってこの町に入ったと同時に、
食べ物の良い匂いが、その屋台通りのあった場所からプンプンと
漂ってきていたからさ♪」
良い匂い?
「はて?そんな匂い、俺は全く感じなかったぞ?」
「そりゃそうでしょ。ドラゴンの嗅覚力と人の嗅覚力とじゃ、LVが
全然違うしねぇ~!」
ルコールが自分の鼻筋を指でトントンと軽く叩き、したり顔を見せる。
へぇ~嗅覚も人一倍、いや数十倍か。
やっぱ、スゲェなドラゴンッ!
「だからさ。そういう事なんで、美味しい物を求めて屋台通りに
行ってみようよ♪」
「う~ん、そうだな......」
正直、こっちの世界の食い物が俺の口に合うかどうか、それが少し
気になっていたとこだし、
それに今日は色々とあり過ぎたせいで、お腹の方もかなり空いて
いるしな......。
「......うっしゃ!んじゃま、お前のその嗅覚力とやらを信じて、
その屋台通りに美味しい物を食いに行ってみるかっ!」
「おお、やったぁ♪それじゃ善は急げだよ、レンヤッ!ではでは、
屋台通りに向かって、レッツラゴ~~ッ♪」
「のわ!?ちょ、ルコール!嬉しいのは分かったから、そんな力強く
引っ張るなってぇ!お前のその馬鹿力でそんなに引っ張ったら、服が
思いっきり伸びてしまうだろうがぁぁあ~~っ!」
俺は嫌味の込もった叫声を上げてルコールにそう訴えるが、しかし
既に屋台の事しか頭にないのか、ルコールはそれを全く気にもせず、
俺を屋台通りのある場所へと強引に引きずって行くのだった。
レンヤとルコールが屋台に向かって歩いていたその頃。
「.........くそ、何なんだ、あのおっさんは!」
「黒い噂のおかげでここしばらく、あのメガネ女の所には誰も冒険者が
登録をしに行かなかったっていうのに......」
「しかもあのおっさん。あんなレアな素材を持ち込みやがってよ!
これじゃ、うちの受付嬢のランクを脅かしそうじゃないか!」
「こいつはまずいよな。あのレア度レベルを今後も持ち込まれたら...」
「いや、流石にあれと同クラスのレアもんはそうそうないって!」
「だがレア素材を持ち込んでいる以上、その可能性がないとも言えん...」
「どうするんだよ?今のうちに何か手を打っておいた方がよくねぇか?」
「それじゃ......また『例のあれ』をやるのか?」
「そうだな、噂が落ち着くまでと思っていたが...ウチの愛する受付嬢の為に、
ここはやるしかあるまいな!」
「よし...あいつら、どうやら魔物討伐のクエストを受けるみたいだし、
やるなら、そこで......」
「うむ。なら、Bパターンがいいか?」
「だな。それでいこうか!それでいいな、みんなっ!」
「「「「「おう!全ては我が愛するランカ様の為にぃぃぃっ!」」」」」
レンヤとルコールがギルドから出ていった後、ギルドの奥にいる数名の
何者かが、何やら不穏な動きを興す為の計画を企てていた。




