第六話・ニセ勇者
「わかった...それじゃあ、この役立たずな偽物の勇者は、ここから出て
行かせてもらうとするよ」
思考した結果、ここを出ていく意を決した俺は、目の前にいる兵士達へ
城を出ていく皆を伝える。
「ぐふふふ...残念だが、おっさん。そういう訳にはいかないんだよっ!」
兵士のひとりが城を出ようする俺に向かって、武器を突きつけてくる。
「これは、何の真似だ?」
武器を突きつけてくる兵士に対し、俺はギロッと睨み付ける。
「それはこっちの台詞だ。貴様こそ、一体どこに行こうと言うのだ?」
「お前達がここに俺の居場所がないって言うのなら、お望み通りに城を出て
行って、俺が元の世界に帰る為の魔法量が貯まるまで、どこかでのんびりと
待たせてもらうだけさ!」
武器を突きつけてきた兵士の目をしっかり見ながら、俺は今後の自分の行動を
その兵士に教えて聞かせる。
「ふん、何を馬鹿な事を...そんな事させるわけないだろうが!」
「全くだ。お前みたいなニセ勇者を外に出して、粗相でもされてみろ!
我らがリコット王女様の評判が、ガタンッと落ちてしまうだろうが!」
「もしそうなったら!きっとその人々の蔑む声に、リコット王女様が堪えられず、
嘆いで悲しむだろうが、そんな事もわからないのか、クソなおっさんっ!」
兵士達の罵倒に続き、神官達も同じ様に蔑む目線で、俺の事を罵倒してくる。
「そうなって困るというのなら、もうちょっと俺に対して、慈悲のある態度を
見せてくれてもいいじゃないのか?」
嫌味や卑下する言葉を発してくる兵士や神官に、苛立ってくる俺だったが、
それを懸命に抑え、小さい嘆願を口にする。
「はぁあぁぁぁん?何で、貴様のようなニセ勇者のおっさんに、世辞を
しなければいけないんだ!」
「ったく...偽物風情が、何を生意気な事を考えているんだ、このボケがっ!」
「ニセ者は大人しく、城の隅っこで黙っていればいいんだよ!」
しかし、俺のその小さくも可愛い嘆願も空しく、兵士や神官が呆れと卑下する
態度は更に加速して、ドンドン汚い言葉を吐き捨ててくる。
「お...良い事を思い付いた!こう言うのはどうだ?こいつを俺達で地下牢に
監禁してよ、こいつは城を出ていったって事にするってのは!」
「おお!それ、ナイスな考えじゃないか!」
兵士のひとりが述べるアイデアに、横にいた兵士が指をパチンッと鳴らして
そのアイデアに賛同する。
「と言う事だ。貴様はお望み通り、城の外へ出て行ったって事にしてやるからよ、
貴様はその慈悲に感謝し、暗い地下牢の中で死ぬまで嬉し涙を流していなっ!
くくくく...」
「「「「アハハハハハハハハッ!!!!」」」」
兵士と神官達がニヤニヤしながら俺の顔に蔑視の視線を送ると、下卑た声を
上げて高笑いの合唱をするのだった。
そしてその瞬間、俺のギフトと呼ばれる技のひとつが発動した......。