第五十二話・おっさん、歳劣った事を嘆く
「それにさ、冒険者ってやつは危険と隣り合わせの職業だって聞く。だからキミの噂の真相なんて所詮そんな偶然が重りあったうえの不幸が生んだ副産物に過ぎないと俺は思うんだよ......」
......多分ね。
うん、多分であって下さい!
お願いしますよ、神様ぁぁぁあっ!!
俺は心の中でそうであれと嘆願するように必死に祈る。
「あ、ありがとうございます、レンヤ様! その言葉、とても痛み入りますっ!」
レンヤに頭を撫でられている受付嬢が、頬を赤く染めて心からの感謝を口にする。
「コホンッ! 所でレンヤさんよ! いつまでその女性の頭をナデナデしているおつもりなのかな?」
「「はう!?」」
突如レンヤと受付嬢の近くに現れたルコールが、咳払いと共にジト目をして受付孃の頭をナデているレンヤを軽く窘めると、慌ててレンヤと受付孃がパッと距離を取って離れていく。
「ス、スイマセン! 女性の頭を軽々しく撫でてしまいまして! そ、その、つい親類の子を落ち着かせる時の癖が出てしまいました...あはは♪」
「い、いえいえ! 良いんですよ、レンヤ様! む、寧ろ、もっとナデて欲しかったくらいですし......えへへ」
俺の言い訳に対し、顔を真っ赤にしている受付孃がモジモジしながらか細い小さな声で何かを呟いている。
「......え? あ、あの受付嬢さん? 今の言葉...特に最後の方がうまく聞き取れませんでしたので、もう一度言ってもらっても良いでしょうか?」
「へ!? た、大した事は言っていませんから、気にしないで下さいませっ!」
受付孃の述べた言葉を聞き取れなかったレンヤは、申し訳ない表情をしながらもう一度言ってもらえないかと頼むが、しかし受付孃はテンパった表情でその頼みをやんわりと断ってくる。
「そ、そうなんですか? ならいいんですけど......」
う~ん、あの慌てよう、めっちゃ気になるんですけど!
―――ハッ!?
ひ、ひょっとして、「このセクハラ野郎め!」とか言われたんじゃ!?
もしそうだったら、死んじゃいそうなんですけど!?
.........。
...............。
....................よし。
これ以上の追及はもうやめておこうかな。
もしそんな事を言われていたら、絶望感でのたうち回ると、俺はこの話をここまでと止める。
「おっと、そうでした! レンヤ様! これがレンヤ様のギルドカードです! どうぞお受け取り下さいませっ!」
受付嬢が手に持ってきたギルドカードをレンヤに手渡す。
「おお! こ、これが冒険者の証明、ギルドカードか!」
俺は手に受け取ったギルドカードを見て、感動のあまり、裏から表、端と端と、隅々まで手渡されたギルドカードを見回す。
......フムフム。
表には俺の名前と職業。
そしてその横に、今の冒険者ランクが書いてあるな。
因みに職業は『無し』と記入した。
流石に『勇者』とは書けないしな。
「おや? レンヤったら真面目に本名を書いたんだ? あたしはてっきり、痛々しく尖った冒険者名をつけるものだと思ってたよ?」
レンヤのギルドカードを覗き見してきたルコールが、レンヤが偽名ではなく本名を書いている事に対し、失礼な言葉を吐きながら驚いている。
「......痛々しいって。ったく、失敬なやつだな、お前は! まぁでも確かにお前の言う様に最初は俺も偽名の方がいかにも冒険者ぽくっていいかな~っては思ったんだけどね......」
でもそれやると、名前を呼ばれた時に頭の思考が、その名前を自分だと認識しない可能性が大きい。
いや、確実に気づかないでスルーすると思う。
だって、おっさんだからっ!
「......ホント歳を取るって、悲しいよね!」
歳のせいでそういう事が絶対に起きうる可能性が安易と想像できる事に、俺は深い溜め息を吐いてしまう。




