第四十四話・リコット王女の誤解?
「ん?どうした、ルコール?あの城の姫さんから俺が無下にされたのが、
そんなに驚く事なのか?」
「まあね。だってあたしの住んでいたあの洞窟って、元々はリコット
王女の親、つまりはギガン城の領土なんだけどさ。あの洞窟にあたしが
住む事になった際、周囲の人々に色々と気を配ったり、良い方向に
便宜をはかってくれたのが、他ならぬリコット王女だったんだよ!」
へぇ、俺をあそこまで無下に扱い蔑んでいたあの姫さんが、ルコールに
そこまでの献身をねぇ?
「それなのに、そんなリコット王女が遠路遥々やってきたレンヤを粗末に
扱うなんて、とても信じられないんだよ!」
「う~ん。言いたい事は分かった。けどさ、それってお前が恐怖の対象、
ドラゴンだったからじゃないのか?」
何せルコールってば、今はこんな可愛い姿をしてるが、その正体は泣く子も
黙る、脅威と畏怖の代表のドラゴンだからなぁ。
だから、あの姫さんが優しかったのは、恐らくそれが原因じゃなかろうかと
思うんだけど。
「それはないと思う...これだけは断言できるよ。だってリコット王女って
超が付くほどのお人好しで、どんな人にも優しく接する事ができる人だからさ!」
俺の述べた可能性を、ルコールが速攻で否定してくる。
じ、じゃあ、何か!
そんな曇りのない、誰にでもお優しいお姫さんから、俺は思いっきり
蔑まされたっていうのかっ!?
そりゃ、確かにおっさんというだけで嫌悪感が走ってしまい、意味も
なく嫌うって案件もあるちゃ、あるんだろうけどさ、
それでもそんなお優しい姫さんだったらさ、空気を読んで良い態度で
接してくれよ!
おっさんでもなぁ!泣く時はめっちゃ泣いちゃうんだぞぉ~っ!!
「そもそもリコット王女がレンヤを嫌う...そこが元々おかしな話なんだよ!」
「へ?」
姫さんの態度の事でめちゃくちゃへこんでいた俺の耳に、ルコールから
信じられない言葉が飛び込んできた。
「そ、それって一体どういう意味なんだ?な、何で姫さんが俺を嫌うのが
そんなにおかしいんだよ?」
「リコット王女ってさ、実はかなりの年上好きな人なんだよ。所謂『老け専』
ってやつさ!」
と、年上好きで老け専!?
あ、あの姫さんがかっ!?
「だからもしかしたらだけど、その時のリコット王女って、レンヤを蔑んで
いたんじゃなく、只単に緊張した結果、蔑みに見えてちゃっただけなんじゃ
ないのかなぁ?」
「イヤイヤイヤ!その考えは流石にちょいとばかり、飛躍が過ぎるんじゃ
ないのか?」
いくら姫さんが年上好きだったとしてもよ、俺と姫さんとじゃ、ひと回り
近くも歳が離れている訳だしな。
「さぁ、そんな確定もわからない様な話はそこまでにしておくとして、今は
取り敢えず、俺のギルドカードを作成するべく、冒険ギルドに移動するぞ!」
俺はリコット姫さんのもしも話を切り上げると、ギルドカードを手に入れる為、
冒険ギルドを目指して足を動かすのだった。




