第四十二話・嘘も方便
「う~む。そういった理由でこの町に...か。あなたのその意気込みは
大いに買いますが、しかし少々お歳を重ねたあなたでは、魔物関係の
仕事が多い冒険者は些かキツイと思いますよ?」
門番が渋い顔をしてレンヤをジィィーと見た後、懸念の言葉を述べて
レンヤが冒険者になる事をやんわりと止めてくる。
「ご心配ありがとうございます、門番さん。でもこう見えても私、故郷の
村では野生の魔物を毎日狩っては、それを生活の糧としておりましたので、
そこそこ腕には覚えがあるんですよっ!」
「おお!魔物を毎日!?それなら歳を重ねていたとしても、引く手あまた
かもしれませんね!」
「はは...そうだといいのですが♪」
俺はテンプレっぽい言葉を頭の中の引き出しから懸命に取り出しては、
それがバレない様、バレない様にと、冷静淡々な口調で語っていく。
「おっと、話が少々長くなってしまったですね。では、この水晶に手を
かざして下さい!」
門番がテーブル上に置いてある青色の水晶に目線を向ける。
「これにですか?こう......でいいのかな?」
俺は門番に言われるままに、水晶に自分の手をソッとかざすと水晶が
淡い光を放つ。
「はい。これで無事にあなたの仮入場の登録が終わりました」
「そっちのお嬢さんのギルドカードチェックも終わったぞ!」
俺が町に入る為の仮入場登録をし終わったと同時に、もうひとりの
門番がルコールの提示したギルドカードのチェックを終えて、
こちらへと戻ってきた。
「二人の申請は終わったから、いつでも門を通っていいですよ!」
門番がレンヤ達にそう伝えると、町に続く門がギィィ~ッと音を立てて
開いていく。
「それじゃ頑張ってこいよ、おっさん!俺、おっさんの事を応援してる
からな!」
「自分もあなたの事を応援していますね!是非、頑張って成功をおさめて
下さいっ!」
「はい。お二人とも...応援の弁、本当にありがとうございます!それでは
自分はここで失礼させていただきます。それじゃあ、行こうかルコール!」
「え!あ、うん......」
俺は応援してくる門番達に軽く会釈すると、ルコールと一緒に町の中へと
入って行った。
「.............」
「ん...?どうした、ルコール?そんな素っ頓狂な顔で俺を見て?」
「素っ頓狂って、失礼だな。いやねぇ...あんな嘘言をよくもまぁ咄嗟に
ポンポンと口から出してくるなぁと感心しちゃってさ......」
レンヤの口達者に対し、ルコールが少し表情を驚かせ感心してしまう。
そんなルコールを見て、
「ふ、だろ?俺も伊達に歳は取っていないって事だよ♪」
俺はしてやったりという顔で口角をニヤリと上げると、白い歯をキラリと
光らせるのだった。




